私は、小説が書けない

2006/09/05(火)22:58

旅立ち

生徒君の話(7)

夏の終わりとは言え、残暑が未だ厳しい本日の午後。 関西国際空港から、一人の青年が旅立った。 彼を乗せた飛行機は、太平洋を越え、 日付変更線をまたぎ、アメリカという大陸を目指す。 日本からは毎年のように、大勢の若者が世界各国へ旅立って行く。 ショートステイだったり、ワーホリだったり。 本格的な留学が目的の者も少なくはない。 だから、たかが一人の青年がアメリカで一年を過ごすことなど、 別に特別なことでもなければ、驚くようなことでもない。 が、しかし。生徒君(カテゴリ参照)の場合は少し違う。 彼は、真面目過ぎて、人一倍の心配性。 これまでずっと、新しいことにチャレンジするよりは、現状維持を貫いてきた。 だからこそ、“留学”という二文字は、それこそ彼にとって 人生を左右するほど大きな決断ではなかったかと思う。 出発の3日前。 生徒君から、悲痛な声で連絡があった: 「持って行くものが多すぎて、スーツケースが閉まりません!」 「じゃあ、何か減らしたら?」 「だって、必要なものばかりだもの。」 「例えば?」 「歯ブラシとか・・・」 「なんで、歯ブラシ持って行くの?向こうで買えばいいやん!」 「サイズが合わなかったら、困るから。」 「一体、何本持って行くの?」 「毎月1本使う計算で、12本。」 「・・・(苦笑)・・・」 最後の最後まで、誰も想定しないことまで心配し続けていた彼。 しかも、レンジでチンできるご飯や麦茶パックを1年分持って行くと言い出す始末。 さすがに私は、これに待ったをかけた: 「いい加減にしなさい!北極に行くワケじゃないんだから。 現地ではまず、現地の食生活に親しみなさい! それに和食が恋しくなっても、あっちでは幾らでも日本食レストランがあるでしょ!」 さて、最終的にどうしたのだろうか?(笑) 出発の2日前。 生徒君は、「最後のアドバイスお願いします」と聞いてきた。 私には、何が言えるのだろうか? 言えることは、一つだけ。だから私は、心を込めて、こう告げた: 「何があっても、もう心配したらアカンよ。 心配な気持ちになったら、『大丈夫、大丈夫!』と自分に言い聞かせること。 とにかく、楽しんできて!いっぱい、いっぱい楽しんでね!」 出発日当日の今日。 一通のメールが彼から届いた: 「短い間でしたが、本当にありがとうございます。じゃあ、行ってきます!」 単文であったが、それはとても元気と期待に溢れたものだった。 日本時間の明日未明、生徒君は西海岸のワシントン州シアトルに到着する。 そして、彼の一年に渡る長期留学生活が始まるのだ・・・ ********************************************************* 今年の2月から、生徒君のお話を何度かこのブログで紹介してきました。 とりあえず、これで最後になります。 私は、彼からあまり連絡が来ないことを願っています。 なぜなら、連絡がないほうが、現地で楽しい生活を送っているという証拠だから。 生徒君は、私がブログに彼のことを綴っていたとは知りません。 今は見せようとは思いません。一年後、一回り大きくなって帰ってきた時に、 見せてあげようかな~ぁ。それか、もっと後に・・・(笑) 兎にも角にも、一年後が楽しみです!!

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