孤立支援法~
【障害者自立支援・法の趣旨が泣いている】
琉球新報 ~社説~
障害者自立支援・法の趣旨が泣いている
4月に施行された障害者自立支援法の悪影響が各方面で出始めていることが、県福祉保健部の調べで分かった。居宅サービスの利用をやめたり時間や日数を減らすなど、同法施行前から指摘されてきたマイナス面が顕在化している。
これまで障害種別ごとに異なる法律に基づいて提供されてきた福祉サービスが一元化され、共通のサービスを受けられるようにしたのが制度の特徴だ。半面、福祉サービスの利用料が原則1割負担となり、入所施設の食費、光熱水費が自己負担になった。
それぞれの負担能力に応じた応能負担から、介護保険と同じく受けたサービスの1割を負担する応益負担への転換である。
居宅サービスを実施している208事業所に調査を依頼した県のまとめによると、132人がサービスの利用をやめたり、利用時間を制限したりしていた。
利用をやめた人は64人に上った。そのうち50人は、施行前には自己負担せずに済んだが、施行後は最大約1万3000円を負担しなければならないと試算されたケースがあった。
居宅サービスの利用をやめた64人の内訳をみると、「ホームヘルプ」が32人と半数を占めている。
影響は施設入所者にも及んでいる。施設利用者の負担が月平均1万4000円増え、6月末までに35人が退所していることも分かった。
負担の増加を嫌い、利用を控えている障害者の様子が読み取れる。利用したくても経済事情が許さない。控えざるを得なかった。そのような事例が少なからず含まれているのではないか。
種々のサービスを利用し、地域で自立した生活が送れることを目指した法の趣旨は生かされているのだろうか。
このような実態をみれば、自立支援どころか、障害者を孤立に追いやる「孤立支援法」と皮肉られても仕方ない。
各市町村は、10月1日から地域生活支援事業を実施しなければならないが、準備状況ははかばかしくない。介護給付費の支給額を判断するための障害程度の区分認定でも作業の遅れが目立つ。
障害者自立支援法に伴う負担増加は全国的な問題だが、独自の負担軽減策に乗り出した自治体もある。大分県などは、通所授産施設の利用者に対して奨励金を交付し、施行前と同じ負担水準となるような支援策を決定した。
負担増がサービス利用を敬遠させる制度の欠陥の一つは明白になった。国や県、市町村は、利用者の声を拾い上げ、緻密(ちみつ)で適切な支援策をどうつくりだしていくか問われている。
(2006/8/27 10:27)