大学生の就職難はマスコミのミスリード?
1月16日のYahooニュースに、SAPIOの大学生の就職に関する記事が載りました。それには最近しきりにメディアが取り上げている「大学生の就職難:氷河期よりもひどい」ということが明らかにミスリードである、とあります。*****上記記事の一部抜粋*****(注:人事コンサルタントの海老原嗣生氏によるもの)実は氷河期どころか、この20年で大学新卒の正社員就職数は2割以上増えている。その一方で何が起きているのかというと、大学の激増と大学進学率の上昇である。20年前の進学率は約2割ほどだったが、今は5割を超えた。大学生数は1985年に185万人だったが、2009年には285万人と100万人も増えたのだ。つまり、新卒採用のパイは微増しているが、それを奪い合う学生が激増したため内定率が下がり、就職氷河期のように見えるだけ。女子の進学率の上昇や就職志望が増えたことも拍車をかけている。しかし、現実には上位校の卒業生の内定率は90%以上で昔と変わっていない。一方で、EランクやFランク(偏差値35以下)に属する大学卒の内定率は4割以下の学校も多く、全体を押し下げている。2007年のような好景気でも、卒業生に占める就職者の割合は70%ほどで頭打ちしたのである。*****抜粋終わり*****「この20年間に大学生が1.5倍、100万人も増えた」というのがちょっと信じられなくて、政府統計のサイトを検索たら、文部科学省が毎年実施している学校基本調査の年次統計、というのがあって、そこの総括表、「9.大学の学校数、在籍者数、教職員数」というのを見ると、確かに 年 / 大学数 / 在籍者数1985 / 460 / 1,848,6981986 / 465 / 1,879,5321987 / 474 / 1,934,4831988 / 490 / 1,994,6161989 / 499 / 2,066,9621990 / 507 / 2,133,3621991 / 514 / 2,205,5161992 / 523 / 2,293,2691993 / 534 / 2,389,6481994 / 552 / 2,481,8051995 / 565 / 2,546,6491996 / 576 / 2,596,6671997 / 586 / 2,633,7901998 / 604 / 2,668,0861999 / 622 / 2,701,1042000 / 649 / 2,740,0232001 / 669 / 2,765,7052002 / 686 / 2,786,0322003 / 702 / 2,803,9802004 / 709 / 2,809,2952005 / 726 / 2,865,0512006 / 744 / 2,859,2122007 / 756 / 2,828,7082008 / 765 / 2,836,1272009 / 773 / 2,845,9082010 / 778 / 2,887,414と、少子化なんてどこ吹く風、みたいな急増状態。大学自体の数も300以上、1.7倍に増えていて、これが大学生の数を増やした背景にあるのがわかります。で、卒業者と就職者数の推移も、昨年8月文部科学省のサイトに「平成22年度学校基本調査の速報」というものの7ページ目に載っていました。ちょっと見にくいですが、確かに昭和60(1985)年頃の就職者数に比べると、前年よりかなり落ち込んだとはいえ平成22(2010)年の就職者数のほうが多い。ちなみにこの期間付近の15-19歳の人口の推移は(人数単位:千人)1985 / 8,9801990 /10,0071995 / 8,5582000 / 7,4882005 / 6,5682007 / 6,2822008 / 6,1552009 / 6,079と4割近く落ち込んでいるのを考えると、その年齢層の人口全体に対する大学卒の就職者数の割合は、就職者数がたとえ同じであったとしても4割上がるわけで、なおかつ現実には就職者数が増えている、と考えると、これは確かにマスコミの伝え方が偏っているとしか思えません。たぶん上記の問題はマスコミの中でもわかっている人がほとんどなんじゃないかと思って老いるのですが、でも「視聴率につながらない」「話題にならない」から就職率だけを取り上げろ、という責任者の「方針」があったのでは、と思えてなりません。確かに現在マスコミは広告収入や新聞・雑誌の購読数が減って大変なのはわかるのですが、ぜひこのあたりのバランス感覚も持っていただきたい、と願うばかりです。