AD/Marketing-BIZな日々 by T.Suzuki

2010/05/07(金)00:22

radikoの健闘とFM COCOLOの再挑戦と。

世の中の話題から(311)

5月4日付のYahoo!ニュースに、ORICON BIZからの、東阪の民放ラジオをネットで同時配信するIPサイマルラジオ、radikoのアクセス状況と、大阪第三のFM局、FM COCOLOの再編成に関する記事が載っていました。 それによると、3月15日より始まったこのradiko、配信開始から1週間で523万ストリーム、Webページへのアクセス数は約4710万PVと当初の予想をはるかに上回る結果が出たということで、ラジオ視聴習慣回帰の兆しと言えるのでは、ということでした。 確かに1週間で4710万PV、ということは一日150万PV強ですから、大したもんです。 Twitterとかをやっていても、radikoを聴きながらのつぶやきも見かけられます。 ここで感じたのは、ネットとラジオの親和性の高さです。 いわゆる「ながら」ができる、という意味では、ネットとテレビよりもはるかにやりやすい。 もちろん、Twitterなどではいま見ているテレビに関してライブでつぶやく、というのも見かけますが、これは意図的にそうしているわけで、ラジオのようにネットのBGMとして存在しているわけではない。 そういう意味では、「ラジオの聴取(「視聴」ではないですね)習慣の回帰」ではなく、その価値を再発見した人が出てきた、ということかと思います。 * * * またこの記事でその後に書かれていたのは、大阪第3のFM局、『FM COCOLO』のリニューアルに関して。 ラジオはマス4媒体の中で最も広告費の減少が厳しく、経営も難しくなってきており、現に神戸のFM局『KISS FM』も経営破たん、民事再生法の適用を申請した、という毎日新聞の5月1日付の記事も出ています。 『FM COCOLO』も、開局当初はマルチリンガルをウリにしていたのですがその経営は厳しかったようで、この4月に『新生FM COCOLO』として全面的に生まれ変わりました。 よく、テレビ局などもリニューアルの話を出しますが、キャッチフレーズといくつかの番組を変えただけというよくあるものではなく、「45歳以上をターゲットとした局」と宣言したのです。 冒頭の記事の中の代表取締役の高田氏のコメントによると(一部抜粋): 「音楽やトークを通してエコロジカルなメッセージや、ライフスタイルにふさわしい情報も発信していきたいという局のコンセプトを、海外や音楽に関心が強く、ラジオ世代である45歳以上のリスナーに伝えることができれば、やがて若い世代にも広がっていくだろう」 ということで、ゆくゆくはもっと若い層にも、という野心はあるようですが、まずは橋頭堡としてのラジオ世代の再攻略、そのためのエコ・海外をテーマにした局編成、ということのようです。 で、そこでヒントとしてあげたのが『Whole Earth Catalog』。アメリカでヒッピーカルチャーが隆盛だった60年代後半に出版されたカタログで、ポラロイド写真とタイプライターでの字と切り張りで全世界を切り取っていった、という60年代版Google Earthのようなものらしいんですが。 面白いのはこの『Whole Earth Catalog』、今から4年半ほど前にアップルのスティーブ・ジョブズ氏がスタンフォード大学の卒業式に招かれて行ったスピーチの最後で触れているものなんです。 最終号に書かれていた言葉、「Stay hungry, stay foolish(ハングリーであれ、愚かであれ)」を卒業生に贈る言葉としているんですが、それだけこの世代の人たちには影響力を持ったものだったんだと。 …話が横にそれました。 いずれにしろ、それをヒントとしている、ということは、45歳以上というよりも、ヒッピーなどの団塊の世代をメインのターゲットにしているのかも知れません。 でもって、もう一つ面白いのが、関西No.1のFM局、FM 802とのコラボ。 冒頭の記事によると、それはFM 802で活躍していた番組やDJが復活し、現在活躍中のDJも加わって、20年前にFM 802を聴いていた人には懐かしく感じるプログラムを放送する、というもの。 通常であれば、ライバル局に対してこのようなことをするのはあり得ないんですが、FM802代表取締役専務の栗花氏によると、 「10~30代がターゲットであるFM 802は、開局から20年が経ちました。当時リアルタイムで聴いていたリスナーも、今はミドル層になっていますので、かつてFM 802世代だった方々が大人になってから聴けるFMステーション、それが『新生FM COCOLO』だと考えています。もちろん番組DJやスタッフも同じだけ年齢を重ねているわけですから、リスナーを含む全員がそろって次のステージに行けるステーション、というのが最大のテーマです。そこで、FM 802の開局時から制作に携わってくださった方々の協力を得て、『FM 802メディアワークス』という制作会社を立ち上げ、FM COCOLOの番組編成と制作を請け負います。すなわち、ミドル/シニア層のリスナーと同じ目線で、DJや制作スタッフたちが編成・制作に関わっていきますので、非常に意義を感じています」 ということだそうで、これはある意味FM 802にとってのスピンオフではないか、と。 確かに若い層をメインターゲットにすれば、ミドル層を犠牲にせざるを得ない部分が多くなるものの、彼らに対しての影響力を考えれば、ビジネスとしてそこにもアプローチはしたい。その窓として新生FM COCOLOを捉えれば、彼らの戦略が見えてきます。 一方FM COCOLO側としても、厳しい経営状況の中、差別化をしなければならないが単純にすべて新しい素材だけで番組編成をしたとしてもその世代がついてくるというような単純な話ではないため、FM 802の持つ過去の資産はのどから手が出るほど欲しいはず。 このコラボ、とても面白いです。 文頭で記したradikoにより、関西だけでなく関東のリスナーも聴くことができ、なおかつネットとの親和性を考えると、結構可能性があるかも、と。しばらくはその動性が注目されます。(とはいっても現在国外なのでradikoを聴くことができないんですが…)

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