As’s HOLE ~ぼくのプレミアライフ~

2007/06/01(金)01:23

がけっぷち

National Team(51)

イングランド代表を率いるマクラーレン監督は現在、崖っぷちに立っている。 ここから抜け出すために必要なものは勝利のみであり、それを運んでくれる女神はすぐ近くにいた。 1日に親善試合ブラジル戦、6日にEURO予選エストニア戦を控えるイングランド代表が召集メンバーを発表した。サプライズは何と言ってもベッカムの代表復帰であり、昨年のワールドカップ以来となる1年ぶりの代表復帰となった。 ここ数ヶ月のベッカムの活躍は所属のレアルのチーム成績が物語っており、一時は優勝は絶望と思われたチームが、ライバルの躓きもあり、残り2試合の段階で首位に立っている。勝利という唯一の目標にチーム全員が向いている統一感、全試合が決勝戦という意気込みで臨む集中力など好調の要因は様々だが、得点につながるポイントでは必ずといっていいほどベッカムが絡んでいるのも見逃せない好調の要因である。それは一時は戦力外と判断したカペッロ監督のコメントを見ても分かるとおりであり、なぜここまでの活躍を見せながらも代表に招集されないのか不思議であった。 ワールドカップまでは代表のキャプテンとしてチームを支え続けてきたベッカムだが、意外にもクラブに比べてそれほどの活躍を代表では見せることができていない。おそらくベッカムの代表に対する思い入れが強すぎるがゆえに気合が空回りしたり、キャプテンという重責が前へ出ることを躊躇させバランスを取るようなプレーに終始させているのだ。 ワールドカップ終了後、エリクソン前監督のアシスタントだったマクラーレンが昇格し監督に就任した。エリクソンの辞任が大会前にすでに決まっていたこと、そして大会での不甲斐無い成績によって後任の噂も多岐に亘ったのだが、結局のところマクラーレンに落ち着いた。これによりメディアを含む周囲はこの抜擢を、それほど人気のあるほうではなかったエリクソンからの路線継承と判断した。 マクラーレンからすれば良い意味でエリクソンとの差別化を図る必要があり、自身をアピールする必要があった。もちろんそれには勝利が一番だったのだが、選手の名前に変化が少なくインパクトに欠けていた。これでは仮に勝利が続いてもエリクソンの遺産による勝利だと捉えられる可能性もあり、分かりやすい形でのエリクソンとの違いを作る必要がマクラーレンにはあった。 それがベッカムの代表外しだった。代表での目立った活躍はそれほど残せてはいないものの、ロッカーにおける重要性はチーム1であり、テクニックやフィジカル面での衰えが見られたわけでもない。逆にテクニックは未だにチーム上位であり、経験の面でも同様である。だがだからこそのベッカムだった。チームの中心でありキャプテンでもあったベッカムを外す決断は、エリクソンとの違いを生む最大のインパクトであり、かつワールドカップの惨敗を払拭させる世代交代をも生み出す可能性も秘めた、一石二鳥の効果も期待できるものだった。 ベッカムを外した結果は、今回の再召集が物語っている。 マクラーレンにとってベッカムを再び召集するということは、自身の考えを否定することだった。それは見方によっては代表の後退をも意味するものだ。だが崖っぷちに立たされたマクラーレンはなりふり構っていられなくなった。 カペッロさえも振り向かせたベッカムという女神に、マクラーレンもすがり付こうとしている。勝利の女神は彼に微笑むのだろうか。 ほな、また。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る