歓喜のビールはドイツ戦後までおあずけ
“1得点につき、ビール一生分プレゼント”酒好きの人間にはたまらないプレゼントである。はたまた80年代のイングランドなら金よりも重宝される見返りかもしれない。スイスと共にユーロを開催しているオーストリアのビール会社が、初戦となったクロアチア戦の後に、上のような大盤振る舞いを発表した。最初の1年間はビールサーバーごと配達する特典もつけるそうで、会社幹部によると「これがやる気につながって、チームの成功につながれば」と話している。このニンジン作戦が影響したのか定かではないが、発表後の予選第2戦ポーランド戦では、前半30分に先制を許しながらも、後半ロスタイムにPKを獲得。これを38歳の大ベテラン、バスティッチが決めて何とか引き分けに持ち込んだ。かつては名古屋にも所属していたバスティッチ。彼がビール好きかどうかは定かではないが、個人としては死ぬまで酒に困ることはないだろう。そして疑惑の判定ではあったものの、38歳257日というユーロにおける最年長ゴール、さらにオーストリアとしてユーロ初の勝点獲得となり、わずかながら決勝トーナメント進出に望みをつないだ。過去のW杯・ユーロの開催国で決勝トーナメントに進出できなかったのは、2000年のベルギーただ1カ国だけ。そのときもオランダとの共催であり、オランダは決勝トーナメントに進出している。今回は既に共催相手のスイスの予選敗退が決定しており、オーストリアの結果が大会の成否を占う大きな比重を占めることになっている。その意味で言うと、バスティッチのゴールはビール一生分以上の価値があり、決めた選手や時間帯、最終戦への勢いを考えると、単なる1得点以上の重みのあるものであった。オーストリアの最終戦の相手は隣国ドイツ。ポーランドの結果如何だが、勝てば決勝トーナメント進出が決定する大一番である。ナチスによって併合された過去を持つ両国だけに、外からは否が応にも歴史的背景による興奮と熱狂の声援が90分間続くことであろう。対戦成績は分が悪いが、声援を後ろ盾に過去のような屈辱は2度と繰り返せない。ビールでの祝杯を挙げるのは、その後だ。ほな、また。