遅ればせながら「インセプション」を観た。延べ間を置いて3回観た。観れば観るほど内容の濃い映画である事を確認しながら見入った。小生が観た昨年の映画の中で、最も印象が残る作品となった。
「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン監督が自ら書き下ろしたオリジナル脚本ということだが、この人とんでもないほど頭が良い。他人の夢の中に潜入してカタチになる前のアイデアを盗み出す。こんな発想、誰がしただろう。実際企業スパイが活躍する時代だが、この点だけなら産業スパイそれだけで終わる。問題はその盗み方にある。相手の夢の中に入り込み潜在意識の中の価値あるアイデアを盗み出すという観点だ。こういう観点で展開する映画はたぶんに今までに無いと思う。
レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙はじめ豪華キャストを起用し、壮大なスケールで映画化したSFクライム・アクション超大作に仕上げ、彼等スペシャリスト集団が夢の中で繰り広げる最後にして最も危険なミッションの行方を、複雑かつ巧みなストーリー展開と驚異の映像で描き出している。
他人の夢の中に潜入してカタチになる前のアイデアを盗み出す特殊能力を持つコブ(ディカプリオ)は、国際指名手配犯、そして妻モルの殺害容疑者として逃亡の身となっている。そこに、サイトーと名乗る男からある依頼が舞い込む。成功すれば、再び家族いの元に戻し、彼の人生を取り戻す報酬を約束をする。しかしその依頼は、盗み出すのではなく、ターゲットの潜在意識にあるアイデアを植え付ける“インセプション”というものだった。
最高のスペシャリストを召集し、相棒のアーサー、設計士のアリアドネ、偽造士のイームス、調合師のユスフ、そしてサイトーを加えたメンバー6人でターゲット、ロバートの夢の中に潜入していく展開だ。しかしよく出来ている。深い。フロイトではないが、まるで夢判断を見ているかのようなところもあり、前後の時間の間隔が1層、2層、3層と夢の段階でのタイムラグなど、大変面白く、スゴイ。より深層に行けば行くほど信頼の信憑性は高まり深まる。それに全員が夢を共有しながら進行していく様もスゴイ発想だ。目覚めた飛行機内での無言の共有感は、遥か高次元の何ともいえない充実感が全員に漂い、熱い思いが寄せてくる。小生3回観たが、この作品は観れば見るほど味わいが深まり新たな発見もある。
またそれぞれの役者の個性が実にいい味わいを出している。妻モル役のマリオン・コティアールは綺麗だが、ものすごく恐ろしい気配が始終とりまいていた。
最後のコマのシーン、その前の空港で迎えるマイケル・ケインの”お帰り”という表現、子供たちの靴の色が違うなど、重要なポイントがたくさんあり、含みを持つ。
小生に限らず、クリストファー・ノーラン監督作品の中で最高作品だと思う人は数多いだろう。先の「ダーク・ナイト」よりも格段に優れているのは事実、2010年の最高傑作の1本だと思う。