今週は久々に食指が動く映画を観た。「ミッション:8ミニッツ」
死者の死ぬ直前8分間の意識に入り込むことができる“ソースコード”というプログラムを利用して、電車爆発テロの犯人を暴くという設定なんだが、主人公となる軍人の奮闘を描いたタイムリミット・サスペンスだ。
死んだ人の意識に何度もアクセスし、同じ状況を繰り返しながら徐々に犯人を暴いていく軍人を、『ブロークバック・マウンテン』のジェイク・ギレンホールが演じている。モニター越しにコルターとやりとりする軍人を演じるのは『マイレージ、マイライフ』のヴェラ・ファーミガ。非常なミッションを遂行しつつも、どこか人間味を感じさせる彼女の演技が、物語に深みを与えている。斬新なアイデアを見事にまとめ上げたのは、『月に囚われた男』の鬼才ダンカン・ジョーンズ監督。
あらすじの一部を書いてみると、ある朝、コルター・スティーヴンス(ジェイク・ギレンホール)は列車の座席で目覚める。目の前の女性(ミシェル・モナハン)が、親しげに話しかけてくる。だが、コルターには自分がなぜここにいて、彼女が誰なのか分からない。
陸軍大尉のコルターは、アフガニスタンで戦闘ヘリを操縦していたはずなのだ。鏡を覗きこんだ彼の眼に映ったのは、見知らぬ別人の顔。所持していた身分証明書には、“ショーン・フェントレス:教師”と記されていた。そのとき突然、車内で大爆発が発生。なす術もなく炎に飲み込まれていく。コルターが意識を取り戻したのは薄暗い密室で、モニターに軍服姿の女性、グッドウィン大尉(ヴェラ・ファーミガ)が映し出される。列車の爆発事故について質問されるが、この状況が飲み込めず、回答できない。“包囲された城”と呼ばれるこの空間は、何かの研究室らしかったのだが、朝7時48分に列車爆破事件が発生したことは事実で、コルターの任務は、乗客であるショーンとなって車内を捜査し、爆弾魔を特定することだという。
なぜか再び列車に戻されたコルターは、次第に状況を理解してゆく。目の前の女性の名はクリスティーナ。コルターが繰り返し列車に戻るのは、“ソースコード”というラトレッジ博士(ジェフリー・ライト)が開発中の極秘実験によるものだということを。
これによってコルターの意識はショーンの身体とリンクし、死亡するまでの8分間を繰り返し体験することになる。5回目のスリップで彼は、アフガニスタンに向かったコルターについて調べてくれるよう、クリスティーナに依頼する。そして明かされる衝撃的な真実。“ソースコード”には、まだ知らない秘密が隠されていた。さまざまな疑問が浮かぶ一方で、コルターはクリスティーナに特別な思いを寄せるようになる。彼女を救うためにも、爆弾犯を探し出そうと8分間のミッションを繰り返すが、その先に待ち受けていたのは想像を絶する運命だった。
既に死んでしまっている人間の意識にアクセスし、「ソースコード」を通して対話が有り、ましてや爆発事故から救いたいと願う気持ち、その意思、本来なら未来は既に無いものなのに、映画を観ると、まるでタイムマシンのような錯綜した今と過去と未来がある。8分の間に起こりえる様々な歴史をいうのか、時間的別空間とでもいうのか、不思議でサスペンスでありながらも、ロマンと未来を見入るような最終部に、この映画の醍醐味が隠されていると思えた。
そこには意識アクセス時間的空間を利用したソースコードによって、完全な時間的別世界が生まれているということが、スゴイ。まったくの別空間にそれぞれの人たちが存在しているという観点が斬新だった。印象深く克明に記憶を焼付けられた感じである。