カテゴリ:オーディオ、ちょっとビジュアル
前に少し触れたかもしれない。
娘JKには元ジャニ(現STARTO ENTERTAINMENT)の推しがいる。推しはアイドルなので、定期的にBD/DVD/CDを発売しており、この10月にも新作がリリースされた。特に今回のBDには、春に娘が出かけた東京ドームでのライブが収められているらしい。もちろん購入済みだ。 我が家でもすっかりディスクを買わなくなった。CDもDVDもBDも、音楽も映像も主に配信に頼っている。自分は例外として、配信されない山下達郎の作品は買う。あとは特典が強力なディスクくらい。アナログディスクも購入はするが、収納スペース重視で、基本的に1枚買ったら1枚売却する方針をとっているので増えていかない。 娘はお小遣いをためて推しのディスクを必ず買っている。STARTOも基本的には配信しないし、アイドルとしてモノとしての形が欲しい気持ちは理解できる。 そのBDを見るために、娘は私のオーディオルームにこもる。うちわやタオルを持ち込んで。音量を上げて聴いている。 好きこそものの上手なれ、というのか、操作が複雑なAVアンプもBDプレーヤーもすっかり使いこなせるようになった。 ここまではいい。 娘の、とにかく推しの楽曲に対する盛り上がりがすごい。まるでライブ会場にいるかのように部屋を暗くし、自分で環境を作り上げ、ハンズアップやクラップをし、わーキャー言いながら見聴きしている。スピーカーや画面に向かって、声を出して盛り上がるのだ。 オーディオマニアたちは、果たしてこんな音楽の聴き方、いや何よりも音楽との向き合い方ができるだろうか? もちろん、JKの高い感受性と擦れ切ったおじさんの感性を同一視してはいけない。しかし、それにしてもオーディオマニア化したここ30年で、何のディスクを聴いても、どんな好きなミュージシャンでもここまでの熱狂を感じたことはない。自分の家だけでなく、オーディオショップでも、オーディオショウでも、メーカーのデモでも、とにかく一度もないのだ。座って静かに聴いているだけ。 ("泣く"はある。歌詞が直結するからで、これはラジオでもイケる。) 「再生音をいかに良くするか、好みに添わせるか」、それにオーディオマニアは取り組んでいる。解像度、透明感、臨場感、立体感、奥行き、分解能、リアリティ、音場、空気感、余韻、躍動感、ダイナミクス、質感、滑らかさ、柔らかさ、深み、キレ、艶、濃密さ、中低域の再現性、エネルギー感、ノイズフロアが低い、etc.。 いやいやそういうことはまだしも、トランジェントレスポンス(過渡応答)、マイクロダイナミクス(微細な音変化)、ステレオイメージング(定位の明確さ)、サウンドステージデプス(音場の深さ)、センシティビティ(感度、微小信号の再現性)、スピード感(音の立ち上がりや反応の速さ)、タイムアライメント(時間軸での音の整合性)、ディストーション(歪み)、インパルスレスポンス(音の立ち上がり・立ち下がりの応答性)というオーディオ的アプローチではない、何かが。 強いて言えば、そんな単語すら忘れる「没入」が、オーディオマニアはできないのではないか。娘が盛り上がるのは音がいいからでも画がいいからでもない。リッピングしたNWウォークマンでも踊っているもの。
娘が自分のシステムを使ってくれるのはうれしい。ただ、自分は志しはハイエンドオーディオマニア。 なんかすごい敗北感がある。そしてうらやましい。 本末転倒だよな、自分は何のためにオーディオを始めたのかね。 かつては音楽を聴いて心が射抜かれる感覚があった。若いから、だけでもない。オーディオを始めて何年か経った20歳過ぎてもそれはあった。それはもちろん「音の良さ」に対してではなく、「音楽そのもの」に対するものだったはず。だ このオーディオの道、その先に待っているものは。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 30, 2024 12:00:20 AM
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