プリズムのむこう
上を見上げるときらきらと輝く太陽は はるか彼方でわたしのことを見下ろして その暖かさはとうていわたしには届きそうもないようだった。 水のプリズムの間から 目を細めるようにしてわたしは遠くの光を眺めていた。 苦しいくないかい? むこうの声がわたしにそうたずねた。 水面に輝く太陽の光さえ屈折して感じられる湖の底で、 わたしは苦しいとは感じなかった。 わたしは苦しくなんかありません。 ただ・・・鏡のような湖面の向こうは どんなに暖かいところかと 知りたいだけなのです。 わたしの知らない世界は どんなに素晴らしいところなのかと 知りたいだけなのです。 わたしはプリズムの太陽を見上げてそう言った。 わたしには冷たく清らかな水中を自由に泳ぎまわる尾ひれがある。 そしてここには何にも換えがたい静寂がある。 それでもわたしはそちらにゆきたいという夢をすてきれないでいるのです。