隠者の遠近見聞回想録

2010/12/26(日)18:12

太古の陽射し。

    小学校低学年の頃から、朝となく昼となく夜となく、海浜に身を置くのが好きだった。 いちばん好きだったのは、11月から4月にかけてのよく晴れた昼ごろの海だった。 浜辺を歩き渚に遊び海岸に座って陽射しを浴びた。                        photo by yasunari  gen  遙かな海洋から寄せる波は、島を囲む環礁(リーフ)にあたってくだけ、白い波頭をたてながらサバニの浮かぶ礁湖に流入し、やがてさざ波となって渚をうつ。 耳鳴りがするほどの静寂さのなかで、自分が生きてあるものであるのを確認する術は、太古の陽射しを浴びてつくる己が影の動きだけだった。 万物万象は、皆、太古の陽射しを浴びて、欠伸をかみこらえながらまどろんでいた。 与論の島の、生き物も生きて動かないような深い静寂のなかで、自意識の芽生え始めた私もいつか一人秘密をもつような少年になった。 あの日から四十有余年が過ぎたが、ほんの一歩の気軽さで、またふたたび、そこに還ろうとしている自分がある。 帰巣・・・・、存在の原質へ。  

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