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相川彰一の Keep Walking ~歩き続けよう~

相川彰一の Keep Walking ~歩き続けよう~

本; 恋愛小説

 クリックありがとうございます。

 ここでは、心に残った恋愛小説をご紹介します。
 
 それは、大崎善生さんの『アジアンタムブルー』です。 大崎さんは、『パイロットフィッシュ』の作者でもあります。 両方とも読みましたが、『アジアンタムブルー』の方が好きです。

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 万引きを犯し、衆人の前で手酷く痛めつけられた中学の時の心の傷をもつ主人公・山崎。 高校の先輩女性との官能的な体験、不倫による心中で夫を亡くした女性との不思議な縁、ファンの心を癒すSMの女王…。 山崎が巡りあった心優しき人々と、南仏ニースでの葉子との最後の日々。

 恋人の死をテーマにした小説で、小説全体に大切な人を失った主人公の虚無感が流れています。 しかし、それは村上春樹さんの名作『ノルウェイの森(上)』にはなかった、明日への明るさが感じれました。

 最後の一節です。

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 「憂鬱の中から立ち上がったアジアンタムだけが、生き残っていく」という葉子の声が心の片隅に貼り付いている。 まるで、ちぢれた葉に懸命に霧吹きをかけるように、僕はこの三ヶ月、ここに座って色々なことを思い出し、そして忘れてきた。色々なことにチャレンジし、そして逃げ回ってきた。
 ばらばらになった自分というジグソーパズルを組み立て直し、沢井やミシェルがおそらくはそうしてきたように僕も葉子というピースをもう一度はめ込む場所を探していた。
 しかし、それも限界である。
 普通の生活に戻らなくてはいけない、と僕は思った。 普通の自分の、普通の生活に。
 僕が優しい人間でいてくれれば、死ぬことは少しも怖くないと葉子は言った。それならば、少しでもそういられるように努力しなければならない。だから、普通の生活に戻ろう。 葉子が僕に望んだ優しさは、きっと普通の生活の中に連続の中にこそあるものなのだから。
 椅子から立ち上がり、もう一度空を見上げ、通い続けたこの屋上を眺めた。
 僕は煙草をもみ消し、それからゆっくりと階段に向かって歩き出した。

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 大切なものを失ったときにでも、「それでも前へ」と優しく背中を押してくれる、切なさと優しさいっぱいの恋愛小説です◎

アジアンタムブルー パイロットフィッシュ ノルウェイの森(上)

 ここまで読んで下さりありがとうございました。 楽天は、値段にかかわらず送料無料なのでお薦めです◎


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