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高校1年のころ、ぼくらは修学旅行で、東京、関西とおよそ1週間あちこち巡った。
熊本県の郡部の中学生は3年間丸坊主だ。 坊主にされた方は解かると思うが、いざ伸ばし始めると、言うことを聞かないわがままな硬い毛が生えてくる。 やっと、スポーツ刈りに気の利いたくらいの髪の毛が生えそろったころ、僕らは修学旅行を迎えた。そんな異様な高校生の集団がディズニ-ランドとかに繰り出すのだ。かなり今考えると笑える。 だが、僕の目的は二つ。ソフィーマルソーに爆弾をなげつけたような顔をした、ムチムチで色白のクラスメートのIさんと写真を撮ること。 もう一つはCCRとSTONESのLPを買うこと(田舎には、BEATLESは売ってあってもストーンズはない)それが全てだった。 Iさんは、いつものスポーツ用の白い可愛い靴下ではなく、私たちの高校の正装である黒いストッキングをはいて(Iさんに限ったことではないのだが)参加した。 それが、妙に色っぽく、私はマジマジと見てしまった。 前置きが長くなってしまったが、そんな興奮状態の修学旅行、関西にむかうフェリーの中で、僕は衝撃の音楽に出会った。 ほかでもない九州出身のバンド「SON HOUSE」の1983年の日比谷野音のライブを聞いてしまったのだ。クラスメートの、後に一緒にバンドを組むB君がウォ-クマンで聞かせてくれたのだ。後にその曲をバンドでやったことを考えると一種の洗脳だったと思う。そのすさまじいことおびただしかった。 しかもMCは完全に九州弁だ。 後で知ったことだが、これは再結成ライブだった。 キャロルとかと同時期にレコードデヴューを果たしているのだが、当時受け入れられなかった。しかしその後、鮎川 誠が冒頭の曲をシーナ&ロケット名義で、スネークマンショ-に挿入したことによりこの曲は有名になった。 しかしこれは(有名な話だが)、YARDBIRDSの「TRAIN KEPT ROLLING」のパクリなのだ。 日本のしかも偏狭の九州のライブハウスで演奏されていたのだから、ジェフベックもジミーペイジも知る由もない。 だが、SUN HOUSEのバージョンはなんちゃってロックではない エッジのきいた、堂々たるロックである。 鮎川は、ミックテイラーがストーンズに入ったことを悔しく思ったらしい(自分が入りたかった)が、この九州大学出身の北原白秋を愛する朴訥なギタリストのリズム感はミックテイラーと遜色ない。エンヤットットではない、きちんと無意識的に裏のリズムの入った、ブルースの匂いのするギターだ。 そして、ボーカルの菊(柴山)も日本語をきちんと、リズムに乗せているではないか、サザンの桑田のような政治的な乗せ方ではなく、これもごく自然に乗せている。昔日本語でロックはできるか否か、議論が巻き起こったらしいが、 このバンドは軽々とその上を飛んでいった。 九州弁は漫才にも向かないし、恋のささやきにもあんまり向かない 村上龍が指摘したように政治的説得にも向かない 「あんね・おれはね・Iさんのことば(Iさんのことを)ほんとから好きとたい ね。あっうそじゃなかけんね」 どうもおよそロマンティックではない。 しかし、ロックには向いている。 柴山は標準語で作詞しているが、歌うような九州弁の良いリズムを体内に躍らせている。 しかしGENUINEゆえ彼らは少数の人達に愛されながらついぞメジャーになれなかった。 ・・・ 私は国会議事堂前で、念願のIさんとツーショットの記念撮影を果たした。しかし現像してみてワナワナと震えた。写真の後方で、Iさんの友達5人ほどがわれわれの方を指さし、ニヤニヤと笑っている姿も映っていた。許せない。たったの1回の機会だったのに。わたしは泣きながらその部分を切り取りしばらく持ち歩いていた。 冬だったが、モヤモヤと熱い修学旅行であった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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