2024/08/19(月)09:54
^-^◆ 回顧録 37才の迷いと悩み [1]
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^-^◆ 回顧録 37才の迷いと悩み [1]
【 Renewal 】
<……とある年の師走のこと……>
「部長……、一昨日ある人から万年筆が贈られてきましてね。
誕生祝いってんで……」
「へぇー、そりゃー良いなぁ、祝ってもらって……。
君、今月だったっけ……。
気がつかんですまんなぁ……」
「16日だったんですが……いえ、それは良いんですけど……、
その万年筆……、送り主の名前が書いてないんですよ………」
「書いてない……?
しかしそーんなもんすぐ分かるだろう……。
君の誕生日を知っていてだよ……、
かつ、プレゼントまでしてくれる人って、
そんなに沢山は居ないんじゃないか……」
「ええ、それは……確かにそうなんですけど………」
「えっ? なんだ?……未だに分からないのか……?」
「……いえ、今日、電話が掛かってきたんですけど………」
「なんだ、それなら一件落着じゃないか。
ははははっ……(^。^)
何を浮かぬ顔してるんだ……?」
「それがですねぇ……誰だか分からないんですよ……」
「何だ? それ……。
えっ? 相手と話したんだろう」
「ええ、でも相手が名前を言われないんですよ」
「ふーん……、…………名乗らない……。
変な話だな。
……で、何て?」
「私に以前、大変お世話になったって言われるんですよ」
「だったら分かるだろう? それに声とか何とかでも……」
「それが……全く聞き覚えの無い声でして………。
電話の周りの音からすると、
どうも、工場現場に近いような雰囲気だったんですが……」
「ははーん、じゃー、君……。
以前の会社の関係だな……」
「はあー、多分…………。そうだと思います」
「……で、どうしたの……?」
「見知らぬ人から、訳も分からずに頂く訳にはいかないって
言いましたら…………」
「うんうん……そしたら?」
「『貴方は私の事は覚えていないだろう。
でも、自分にとっては職場での一生を左右するような
お世話になった。それがきっかけで、
今月初めに花が咲いたので……』」
「……花……?……昇進か何かだろうな……」
「『是非、お礼をと思った。快く受け取って使ってください。
どうも、有り難うございました』って、
今にも電話を切りそうなんですよ」
「へえ~~~、それで……?」
「ちょっと待って……電話を切らないようにって言いましてね、
やっぱり、顔も名前も知らない人から
自分が何をしたかも分からず、物を頂くわけにはいきません。
訳だけでも詳しく話して下さい。
でないと、頂いてもこの万年筆を使う訳にはいきません、
って、言ったんですよ。
だって、悪いけど……気味が悪いですものねぇ……」
「そりゃーそうだなぁ…………」
「……そしたら、しばらく相手の人が黙ってたんで、
電話が切れたのかと思って焦りました……。
……その時、何となく感じたのは、
以前、現場の合理化の問題で、
ある作業長さんと一緒に仕事をした事があるんですけど、
その職場の部下の方ではないかと思いました……。
……あくまでも推測ですがね……」
「その辺りなら、思い当たる出来事があるわけだ……」
「いえ、それが具体的には全然無いんですよ。
むしろ、調査やら何やらで、お世話になったのは
こっちの方ですからね……」
「……?」
「……で、………暫く黙っていた相手の人が、
こんな事を言い出したんです。
『貴方は、ただ散歩をされていて、道端にあった石を、
ポンと足で蹴られただけの事かもしれません。
だから、覚えておられないのは当然です。
でも、私は、その石の下敷きになって、
死にそうになっていた蟻なんです。
……だから、私にとっては、貴方は命の恩人になるんです。
本当に有り難うございました』
……で、プツンです……(ー_ー)」
「……切れたのか?……電話」
「ええ、どうしようもありません。
どうしたら良いでしょう。
……部長」
「うーん、考え様によっては有り難迷惑な話だな……。
もう少し時間を掛けて調べたらどうかな……。
そのまま、貰うってのも複雑な心境だろう?」
「ええ、そうですねぇ……。
すごく高級な万年筆ですし………。
部長……そうしてみます。
……変な話で済みません……」
「いやいや、悪い話じゃないよ。
良い話だ………ウン」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しかし、その頃の私にとって、
この話は正直なところ迷惑な話でした。
全然自覚の無い話だから尚の事です。
それでなくても、
仕事の事で色々と悩んでいた時期だったんです………。
当時、悩んでいた仕事というのは営業の仕事なんです……。
会社を変わって初めて本格的な営業という仕事に就いて……、
一年位経過した時期でした……。
自分では懸命にやっているつもりなんですが……、
結果が全く出ない……という状況が、ずっと続いてました。
…………兎にも角にも実績が上がりません。
以前居た会社とは、
あらゆる面で仕事の対象物の規模感が違っていまして……、
それも一万分の一という極端に違った会社に、
飛び込んでしまってたんです。
この『規模の決定的な違い』が、私にとっては課題でした。
違いの意識は、ちゃんと頭にあるんですが、
実感として湧いてこないので……、
それが失敗の連続につながっていたように思います。
以前は何万人もの社員が居る会社に居ましたから…………。
ひとつの工場だって何百人も人が居ます。
一度の合理化人員削減の規模にしたって、
何十人というものも珍しくありませんでした。
中小企業なら、10年位かけて採用するような数です……。
金額の感覚にしたって、上申書や稟議書の金額の欄の
単位は『百万円』で、35とかけば35,000,000円の
事だった訳です。
新しい会社では、精々、35,000円か、場合によっては、
35円の事なんですよ……。
職場が変わって一年もやっているのに、
なかなか結果が出ず、
何が何だか分からなくなっていた時期だったんです…………。
<続く>
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