2249860 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

愛 こ と ば・心 の 散 歩 路

全7件 (7件中 1-7件目)

1

じいちゃんの思い出

2008/11/18
XML
^-^◆ じいちゃんの思い出(6.遺言)[下]




  <requestによりrevival連載>



      爺さん.jpg




自転車を預けている家は、たいてい最終列車迄は、

待っていてくれるのだが、もう電気が消えている。

帰るべき人は皆帰ったのだろう……。

まさか、今日行ったのが戻ってくるという予測は

無いだろうからな……。



仕方なく徒歩…………。

じいちゃんの家には、1時過ぎにやっと着いた。


奥の部屋の電気は点いているが…………鍵は閉まっている。

ドンドンと戸を叩くと、中から「ハーイ」と、叔母ちゃんの声。

ガラガラッと、重たい木の引き戸が開いて………………、

顔を見て……叔母ちゃん、声が出ない。


                   ボケ花



「ええっーーー」という顔して、凝視している叔母ちゃんの横を

すり抜けて、上がって…………座敷へと…………。


叔母ちゃんの意に反して帰ってきたから、

ちょっとバツが悪かった…………。


じいちゃんが眠っている布団の横に、ばあちゃんが座っている。

ばあちゃんは特に驚いた顔をしなかった。

じいちゃんを手で指して、ほほえんだ。すぐ、線香上げて……。


…………心からほっとした。


叔母ちゃんがお茶を持ってきた。…………何も聞かない。

ばあちゃんもニコニコ笑って何も言わない。

「みんなは…………?」

「明日が大変やから、皆、先に寝てもろうた……」


……! ……意外だった。


通夜というのは始めての経験だが、みんな、朝まで起きている

ものと思い込んでいた。
                    乙女像

何か、ガッカリしたような……、

……でも、戻って来て良かったとも思った。


気持ちが凄く落ち着いた。


故人のじいちゃんの嫁、つまり、ばあちゃんと、

その娘、つまり、叔母ちゃんと、

孫、つまり、自分の三人でお茶を飲みながら、

じいちゃんの昔話をアレコレと話し、また、聞いた。


たいてい知っていると思っていたが、知らない話が多かった。

…………不思議に思っていた謎も解けた。


じいちゃんは『正作』という名前だが、

目上の人からも、常に『正作さん』と、さん付けで

呼ばれていた。

それが、とても不思議だった。

田舎の農村では、同級生や上の人からは、たいてい、

呼び捨てで呼ばれるのが常だったから…………。


じいちゃんの若い頃からの生き方を聞いて……納得できた。

…………でも、それって、凄い事だと思った。


           まっ黄色.jpg


自分で相手に頼む事でも、指示する事でもないからだ。

周りの人々が、自然にそうなるのだから…………凄い。

そういえば、じいちゃんも、家族以外の人を、

誰も呼び捨てにしなかった…………なぁ。


ずっと、年下の人でも、『……さん』付けで呼んでいた。


「見た事なかろう……?」と言って、叔母ちゃんが、

古いアルバムを持ってきた。


「明日、お棺に入れてやろうと思ってね……」

初めて見るじいちゃんの古いアルバム。

分厚くて荘厳な表紙だ。

明治の中ごろの生まれだから、幼い頃の写真は少ない。

…………と、えっ、私の写真が混じっている。

じいちゃん……、私の小さい頃の写真を持っていてくれたんだ。

と、一瞬、思ったが…………。

違う……。

古すぎる。

…………茶色っぽくなっている。

「叔母ちゃん、これは……?」

「ふふふふっ、……似とるやろう……お前に……」

ばあちゃんも、笑っている。



                    どんぐり実.jpg



似ているどころの騒ぎじゃない。そっくり…………。

愕然とする位、そっくりの顔と、その表情だ。


10歳位の写真だが……、自分で間違えたくらいだから……、

うーーーーん…………ホント、そっくり……。

ゾッとする位、似ているのだ。


大きくなってからは、似ていると言われた事は一度もないし、

自分でも「じいちゃん似」とは思っていなかった。


「じいちゃんが、言ってたよ。お前が小さい頃。

 あれは、俺の生まれ変わりやって……。可笑しいね。

 まだ、自分が生きてるのにね……ふふふふっ」


「うんうん、ようー、言いよったねぇ……じいさん」

と、ばあちゃん。

この時ほど、血のつながりを深く感じた事はない。


横たわっているじいちゃんを見た。

顔に白い布がかけてあるが、

……まるで、眠っているようにしか見えない。

ツーンと突き上げるものがあって、すすり上げたら、

叔母ちゃんが背中をさすってくれた。


                   山水.jpg



「お前は、さすがに長男やねぇ…………。よう、戻って来て

 くれたね。……みんなを寝かせてから、淋しかったとよ……」


「あたしゃーー、帰ってくるような気がしとったよ」……と、

 ばあちゃん。…………笑っている。


朝方まで、三人の話は続いた。

線香を絶やさないように点けながら…………。


朝方、うたた寝をしている所に、親父が起きてきて、

「通夜してくれたんだってな……アリガト……」と、言った。


親父から、ちゃんとした言葉でお礼を言われたのも、

初めての経験だった。



そのばあちゃんも、叔母ちゃんも、親父も、叔父ちゃんも、

今は亡い。………遠い昔の話だが昨日の事のように思い出す。




じいちゃんは、亡くなる時も、たくさんの貴重な経験を

させてくれた。

……いつまでも、忘れえぬ…………思い出である。



  <じいちゃんの思い出シリーズ完>






           8976.jpg

===========================================================================
◆◆ホームページランキング(暮らし・生活⇒ライフスタイル)に参加しています。
  他にもステキなブログがありますよ。
  一票お願いします。ランキング表を見に来て下さ~い
◆◆クリックして~~ ( ^-^)
  順位






Last updated  2008/11/22 09:22:15 AM
コメント(40) | コメントを書く


2008/11/17

^-^◆ じいちゃんの思い出(6.遺言)[上]



  <requestによりrevival連載>



      爺さん.jpg

 伊藤作業長が言った。

「帰った方が良いよ……。 やっぱり……」

「遺言って言われて……」

「うーん…遺言ねぇ……」

「難しいんですよ……」

「遺言でも……ねぇ。……おかしいなぁ」

仕事の前準備をしているが、どうも気になって手が進まない。


 実は今日、じいちゃんが亡くなった。

……外出していて臨終に間に合わなかった…………。

どこか具合が悪い訳でも無く、元気だったのに……、

全く……突然の事…………だ。


朝、あんまり起きて来ないので、10時頃起しに行ったら、

眠ったまま亡くなっていた……と……聞いた……。

医者は老衰と診断………。
             壁掛け花壁掛け花

 80歳過ぎだから年に不足はないと…………叔父さん達が

泣きながら言うが…………堪らない。

指し物大工一筋……つい最近まで細工場に入っていた。



…………今夜は通夜だ……。



 会社が夜勤の私は、今、会社に居る……。

なんで……?……。

祖父の通夜の夜に…………。


当然、通夜を務めるつもりだった。


………当然だ。
             竹竹

…………夕刻、「今夜は会社を休む」と言う私に、

じいちゃんの面倒をみていた叔母が言う……、

「頼むから……会社を休まないでくれ……」

「……?」

じいちゃんの遺言だそうだ……………。

遺言……?

ピンと来なかった……。


本当にじいちゃんがそう言って亡くなったのだろうか……?


「じいちゃんはね、職人の鑑でね。どんなに体調が悪くても

 約束した仕事を休んだことは一度も無い」…………と、

叔母ちゃん。


             2005-08-17 11:45:33


「何があっても、例え俺が死んでも仕事の約束は、

 守らなきゃいかんって……いっつも言ってたからね……」


……叔母ちゃんが続けて言う。


横でバァちゃんも頷いている…………。




しかし…………。




しかし、何か割り切れない…………。

血のつながった孫だし…………。


 …………叔父さん達は何も言わない。

……って事は叔母ちゃんと一緒という事だ。

父母に……どうしょうか……?……と言ったら、

「遺言だから……」……と……皆と一緒。

……で、今………会社にいる。

                  竹林


 先輩は「明日葬儀だろう。少し仮眠しとけよ」と優しい言葉。

「明日の夜は休めよ」……とも……念を押された。

伊藤作業長だけが……さっきからうるさい。


「……じいちゃんの通夜に、仕事するバカが、おるもんか……。

 じいちゃん、悲しんどるよ…………」

自分の本音に近い言葉だけに…………胸に堪える。

胸に……痛い。

息が苦しくなる。


「あんた、総領やろう!!」

伊藤作業長の、この言葉が最後の引き金だった。

俺は嫡男に違いない。

内孫の嫡男だ。

---跡継ぎだ。

祖父の通夜の場に居なくて本当に良いのか……?

『遺言』という言葉では済まされない。

通夜をしなくちゃ……一生悔やむかも…………。


                黄色い実垣


…………腹が決まった。


「すみません。帰らして頂きます!!」

「そうか、そうしろ!そうしろ!」

驚いたことに、伊藤作業長だけじゃなく皆が口を揃えて言った。

皆…………気にしてくれていたんだ。


しかし…………、

「最終列車まで15分しかないぞ!!」ということだ。

作業着のままで飛び出したとしても、どんなに急いでも、

駅迄20分はかかる。


しまった……!!

……決断が遅かった。

「いいか、通用門まで全力で走れ。門から駅まで車を

 出して貰う様に、ワシが守衛さんに頼んでやる」


 と……、伊藤作業長。


「守衛が、そんな融通利かせるもんか……」と、先輩達……。

「いいから走れ!!」の伊藤作業長の言葉に、

はじかれたように、カバンを小脇に、出口へ……。


「守衛に親しい人が居るから俺が頼む」という、怒ったような、

伊藤作業長の言葉を背中に走った。


            臼杵.jpg


走った。


走った。


頭の中が、ボーーーッとなる。

汗が吹き飛ぶ。

……とにかく、走った。



………………………………ややあって、南門。


向こうに、人影が2人見える。

横で車がエンジンを吹かしている。


「伊藤さんから聞いた。早く早く……」

いつもは、怖い守衛さんが、せかしてくれる……。

乗車……、発車。……あまり時間がない。


「電話しとけ……」と、残した守衛さんに叫んで、

グーーーーンと、スピードアップ。


「ご迷惑かけます。スミマセン……」

「大変やナ……。出て来る時、具合悪かったの?」


……?……?…そういう事にしてくれている様だ。

……伊藤作業長…………。


「いえ…………、まさか……亡くなるとは……」

ウソだが…………ご好意に……言葉を合わせた。


「駅にも、電話させたから絶対大丈夫だからな」

「…………!!」

「2~3分なら、待ってくれる…………」

「…………!……スミマセン。そこまで……」


しかし、一企業の守衛さんに、

国鉄の列車を待たせる力があるんだろうか……?

一瞬、よぎったが……、感謝の気持ちの方が強く、

ジーーーンときた…………。


心を読んだかのように「人は皆、人情に生きとる……」と、

守衛さんが呟いた。


……この時、決断が遅れたことを、心の底から悔やんだ………。



駅に着いた。

駅員さんが改札のこっちまで出て来て待っている。

「急いで下さい。……今、入りました」

お礼も、そこそこに、ホームに走り込む。


乗った途端に、ピーーと笛がなって、ガタンと動き出した。

まだ、蒸気機関車の時代だ。

ゴットン、ゴットンと、ゆったり動き出す。

腰掛けて、ほっとした………………。

  SLSL
…………間に合った。

ああ~~……。


伊藤作業長、先輩達、守衛さん、駅員さんの、真剣な顔が

浮かんできて、思わず……涙が出た。


伊藤さんは、直属の上司でもないのに真剣に心配してくれた。

…………涙が……止まらない…………。


0時近い最終列車、着くまで一時間近くかかる。

22時に出勤したから、一時間以上迷ってた事になる。

列車が……、いつもより遅いように……感じる。



そして………やっと………駅に着いた…………。


          <続>





          9031.jpg

============================================================================
◆◆ホームページランキング(暮らし・生活⇒ライフスタイル)に参加しています。
  他にもステキなブログがありますよ。
  一票お願いします。ランキング表を見に来て下さ~い
◆◆クリックして~~ ( ^-^)
  順位






Last updated  2008/11/22 09:21:42 AM
コメント(39) | コメントを書く
2008/11/14


^-^◆ じいちゃんの思い出(5.唄)




  <requestによりrevival連載>


      爺さん.jpg



 じいちゃんは、大工仕事をしながら鼻唄を歌っている事が

あった…。時々だが……、

たいてい仕上がった作品に磨きをかけているような時だった

……と覚えている。ニスが乾いた後の磨きだ……。


高い音色の……、良い声だった記憶がある……。

共同風呂の帰りには、歩きながら大きな声で、民謡みたいな

唄を歌っていた。


 ちょっと一杯入った時………じいちゃんが、口癖のように

言っていた言葉がある。

(お酒はあまり強いほうではなかった様だが、

 少し飲んだ……ほろ酔い機嫌を愛していた様に思う)




               8988.jpg




「…………あのな……、お前、唄……好きか?

 そうか、そうか……好きか……。

 大きくなってな……酒の席で歌うような事があったらな……、

 ぐずぐずせんで、真っ先に歌え。

 真っ先が……いい。

 ……遠慮はいかんぞ。


 歌えと言われたら、ハイッって言って……、

 さっさと歌え……いいな。


 …………でな、唄だが……、

 上手いとか、下手とか言われるようなつまらん唄は

 絶対に歌うな…………。


 いいか、凄いと言われる唄を歌えよ…………」

         まっ黄色.jpg

 今でも、思い出す懐かしい話だ…………。

この「凄い唄」の意味で、何十年も悩んだものだ。


今も、きちんとした答えがあるわけではない…………。


 言われている意味も、ずっと長いこと真には、

理解できなかった。だって、唄って、上手い下手が歴然と

あるからだ。


             ポニー花小.jpg



 40歳も半ばを過ぎた頃、何となく意味を感じるように

なってきたかな……。カラオケ時代になって……。

…………深い言葉だと……思っている。



「凄い」って言うのは「感動」であり

「心に響く」という事だろう。


素人には難しいと思っていたが……、そうではなかった。

「心を込めて唄う」ことは、誰にでもできる。

「心から唄わないと、相手の心に響かない」……ようだ。

耳の辺りで止まってしまう…………。


 じいちゃん他界後、30~40年の歳月を経て、

しみじみと……キャッチした「言い残し」である…………。


        <続>






          8959.jpg

============================================================================
◆◆ホームページランキング(暮らし・生活⇒ライフスタイル)に参加しています。
  他にもステキなブログがありますよ。
  一票お願いします。ランキング表を見に来て下さ~い
◆◆クリックして~~ ( ^-^) 
順位







Last updated  2008/11/18 12:58:24 PM
コメント(34) | コメントを書く
2008/11/13

^-^◆ じいちゃんの思い出(4.銘)





  <requestによりrevival連載>


      爺さん.jpg




 プーンと匂ってくる墨の匂いで、

僕にはその日がわかります。

滅多に無い匂いだから……。

そんな日は、きっと沢山あった筈なんだけど……、

小学三年生の時の夏休みの思い出が今でも鮮明です……。


              鹿影.jpg

 朝の10時頃……匂いは座敷からしてきます。

フスマを少し空けてそっと覗くと、じいちゃんが、

しずかに墨を磨っています。

ピンと張った麻の「甚平」を着ています。

じいちゃんは、この日しか、この「甚平」を着ることは

ありません。

正座して……目をつむって……。右ひざの横に置いた、

硯の上を、手がゆっくり行き来しています。


               お堂4.jpg


 前には、飯台が置いてありました。

じいちゃんが何日もかけて作っていた飯台で……、

郵便局長の奥様から頼まれたというものです。

あんまり大きなものじゃなくて、一人か二人で、

ご飯を食べる時の、ちゃぶ台です。


 昨日まで、ニスの匂いをプンプンさせながら、

細工場の端っこで、乾かしてあったものです。

じっと見ていると、じいちゃんが飯台を裏に向けて、

左の膝の上に、端を乗せて……それから、筆をとりました。

たっぷりと墨を含んだ筆です。

左手で飯台の脚をしっかり持って、

じっと裏面を睨むようにしていた、じいちゃんが、

さらさらさらと書き始めました。


         大黒様.jpg


 きっと、いつもと同じように、今日の日付と「銘」を、

入れているのです。


 「銘」は「正作」で、じいちゃんの名前。

どんな小さな小物でも、じいちゃんは、自分で作った物には、

必ずこの儀式をします。……カメの蓋でも……。


 いつもとは違う、キリッとした顔で……。

じいちゃんは、この、キリッとした顔を時々します。

作品が出来上がってニスを塗る直前に、

何度も何度もあっちこっちから、作品を眺めながら……

……その時、こんな目をします……。

……真剣な目。


              電柱と道.jpg



 江戸時代の名工左甚五郎みたいで……かっこ良いです。

銘を入れたら、傍らにおいて墨が乾くのを待ちますが、

その時、必ずキセルに火をつけて、おいしそうに、

煙をゆったりと吐き出します。

この日も……そうです。


 じいちゃんが、凄く偉く見える瞬間です。

この時は、ぜったい部屋に入って行けません。

厳しく止められているからだけでなくて、

いつもと違うじいちゃんがそこにいるからです。

じいちゃんは、亡くなるまで、職人の鑑って、

近所のおじさん達に言われていました。

じいちゃんみたいになりたいなって……当時思ってました。






            8989.jpg

============================================================================
◆◆ホームページランキング(暮らし・生活⇒ライフスタイル)に参加しています。
  他にもステキなブログがありますよ。
  一票お願いします。ランキング表を見に来て下さ~い
◆◆クリックして~~ ( ^-^) 
順位






Last updated  2008/11/15 09:39:57 AM
コメント(31) | コメントを書く
2008/11/12

^-^◆ じいちゃんの思い出(3.英語)



  <requestによりrevival連載>


      爺さん.jpg




中学に入った頃……(……だったと思う)

夏の朝……休みの日。だいぶ早く……起きた。

じいちゃんが丁度、井戸端に向かう所……。

いつものように洗面器を持って……手拭いを肩に掛けて、

……セッタで……スタスタスタ……。
                  竹

釣る瓶で水を汲み上げて……ザヴァーンと洗面器に溢れさせる。

ブリキの大きな洗面器が水で満杯になる……。

それから、手拭いを腰の辺りに挟んで……、

足を開いて中腰になって……、

ブルブルッと……顔から頭まで……。

何度も何度も……ブルブルッ……。


じいちゃんは、ほとんど丸坊主頭。

完全に…ではなく、少し残したカット。

その頃、一般に大工刈と呼ばれていたように記憶している。

大工さんのほとんどがしていた髪型だ。

じいちゃんは大工で……、

それも、建築大工ではなく、指物大工。

いわゆる、内装関係をやる指物師だ。

                 トトロ
したがって、自宅に

細工場(サイクバ)があった。

その細工場から、建具や、その部品、簡単な家具類が、

次々に生み出されていった。


じいちゃんが、僕を見つけて、手拭いで頭と顔を拭きながら、

近づいて来た。


「中学に行って、英語習っとるか?」

「……うん」

「じいちゃんも少しは知っとるぞ……」

「えっ……?」
                 竹林

正直、信じられなかった……。

じいちゃんは、明治の西南戦争の頃の

生まれだし、……生粋の大工職人。


カタカナ言葉など聞いたことも無かった。

「ヒネルトージャーは、水道じゃ」

「……」

「フミャンガデールは、饅頭…………なっ」

「……」

「……そうか……、まだ習ってないか?」


違う……。

それは無い。

『英語』じゃなく『落語』…………。

                     どんぐり裏
落語の洒落の世界の話だって事には、すぐ

気付いた。大人達が良く言ってたから………。


つまり『水道は、捻るとジャーっと水が出る。

饅頭は、踏めばアンがでる。』っていう冗談の世界だ。


「じいちゃん、誰に習ったの……?」

「……ん、ああ、郵便局長さんよ。

 局長さんは年だが物知りだ……」


そういえば、ここのところ、じいちゃんは台所周りの

仕事ってことで、局長さんの家に通っていた。

きっと、局長さんが、冗談で言われたのを、

じいちゃん、信用してしまったに違いない。

当時、郵便局長、警察署長、校長先生、お坊さんと言えば、

地域の皆から、尊敬の念を集めていた人達だ。


                   尾瀬


「じいちゃん……、あのね……今度、

 局長さんに確かめた方が良いよ……」


「なに!!間違っとるか?おかしいか?」


「……うーん」


「局長さんがウソを言うわけないがなぁ……」


「うーん…、じいちゃん、ドイツ語かもしれん」


「……ドイツ語……なぁ。よしよし、今度聞いてみよう……」



局長さんを、全く信じきっているじいちゃんは、

ニコニコ笑って、母屋の方に悠々と肩を振って戻っていった。


はっきり、駄洒落だって……言えなかったよ。







          620.JPG

============================================================================
◆◆ホームページランキング(暮らし・生活⇒ライフスタイル)に参加しています。
  他にもステキなブログがありますよ。
  一票お願いします。ランキング表を見に来て下さ~い
◆◆クリックして~~ ( ^-^) 
順位






Last updated  2015/05/20 04:19:58 PM
コメント(20) | コメントを書く
2008/11/11
^-^◆ じいちゃんの思い出(2.太陽)



  <requestによりrevival連載>


      爺さん.jpg


ある日の早朝…………。

じいちゃんが……お日様を拝んでいました。

正確に言うと「拝む」って意味を知らない年頃でしたから……、


「???…………ん?」


何をしているか分からなくって…………、

フシギナ……ふしぎな光景だったんです。

                   上高地.jpg  

じいちゃんは、職人でした。

指物大工で家の内装物を作っていました。

お日様が昇る頃……細工部屋から出てきて、

……それから、

やおら首に巻いた手拭いを取って、

積んだマキの上に、ポーンと投げて………、

昇ってきたばっかりのお日様を見上げます……。



それから……パン、パーンと手を打ちます。

ゴツゴツの手から、とても大きな音が出ます。



それから……、

両手を合わせたままで、何かブツブツと言ってから、

……また、……ブツブツブツブツ言って、

そして……又、パン、パーンと手を叩きます。


それから……今度は深々と頭を下げます。

……なかなか、頭を上げません……。


しばらくして…………顔を上げたじいちゃんの顔は、

さっきより、もっと、やさしい顔です。  (^。^)


              竹林.jpg


…………何歳くらいの時でしたかねぇ……。

……ずいぶん幼い頃の思い出です。


じいちゃんの、この儀式(?)は、

早い時刻だから何回も見たわけじゃないと思いますが……、

不思議に思う光景って子供にとっては、神秘的でもあるのです。

雨の日も曇りの日も、東の方向を拝んでいました。


たしか一度……、

終わりの「パン!パーン!」の後に……、

一緒に、横に行ってチョンチョンとしたら、

じいちゃんが頭を下げたまま、

背中をさすってくれました。


温かい、手の感触でした。


                 朱里3.jpg


今まさに、地球環境問題が取りざたされている昨今ですが、

我々人類が今日のように在る事が出来る根幹は太陽になります。

温度と光が得られなかったら、人類は発生したかどうか……。

「太陽の恵み」などという言葉を聞く事がありますが、

太陽は、人でも神でも無いので、ただ、物理的に存在し、

その機能構造の故に、化学反応を繰り返し、結果として、

地球に、光と温度が届いているにすぎないのですが…………、

太陽があってこその…………地球。

このことを、じいちゃん達は暗黙のうちに思い、

感謝の気持ちを持っていたのでしょうか?

……じいちゃんが、お日様(この表現も敬いですが……)を

拝んでいたという事は、多分、そのお父さんも、

また、そのお父さんも……拝んでいたんだと思います。

この素朴な、

ほんとうに素朴な行為に思いを馳せる時、

地球環境の問題を起こしてしまった、近代の人種の、

人間としての未熟さを感じて……なりません。



じいちゃんの、行為の原点からもっと学ぶべきでした……。








          8992.jpg

============================================================================
◆◆ホームページランキング(暮らし・生活⇒ライフスタイル)に参加しています。
  他にもステキなブログがありますよ。
  一票お願いします。ランキング表を見に来て下さ~い
◆◆クリックして~~ ( ^-^)
  順位






Last updated  2008/11/15 09:38:39 AM
コメント(50) | コメントを書く
2008/11/10

^-^◆ じいちゃんの思い出(1.祭り)



  <requestによりrevival連載>

      爺さん.jpg


小学2年生の頃(…だったと思う)

宗像大社の秋の大祭に一緒に行こうとじいちゃんに言われた。

「わぁ~~い」と喜んだのが運のつきで……断りにくくなった。


……なんで、断るかといえば……。


なんと!!

家を出るのが朝5時という話……。

ローカルバスが通っていない時代だから、

当然歩いてお宮まで行くのだが、一時間以上は確実にかかる。


学校は祭りで休みだった(地元の神社のお祭りで

学校が休みなんて……良い時代だった(^。^))

                  
     なつみチャン

いやだなぁ。……朝起きるの辛い……。


なんで、そんなに早朝に行くかというと……、

じいちゃんの目的が「流鏑馬」だからだ。

子供にしてみれば、ソレが何なのか……、

面白いのかどうか……何で、朝早いのか……、

…………何も分からない。


……でも……、結局、行く事になって……。

眠い目をこすりながらじいちゃんに、

ついて歩いた。
         竹


だいぶ歩いた所の川べりの三つ角に大きな木があって、

その根っこの所に腰掛けて……朝ごはん。

ばあちゃんが作ったにぎり飯とタクアン。

……と、水筒のお茶。

……おいしかった。


……そんな思い出……。


              恵比寿


お宮に着いてお参りして、

流鏑馬の会場の方に歩いて行って、びっくり。

ものすごい人だかりだ……。

……?なんで…?

人垣の途切れているところまで歩いて、

じいちゃんと前の方に陣取った。


馬が走ると聞いていたから、

運動場のような場所を想像していたら直線の道だ。

50mくらいかな……?

砂利を敷き詰めた通路みたいな道。

道の反対側は、ずっと池の端で見物人は、

みんなこっち側から……。


……しばらく待った。

……だいぶ待った。

ものすごく待った……そんな記憶……。


…………と。


                 中津宮1


パカパン、パカパンというか、

ダダダン、ダダダンっていうか、

すごい地響きと共に馬が駆けてきた。


……かっこいいーー。

いっぱい飾りを着けた馬に、

鎌倉時代のような衣装を着た人が乗って駆けてくる。

二つ折りにしたような帽子をかぶって、

赤いアゴ紐がとても目立つ。


……すごい。


両手を離して弓を持っていっぱいに引いて、

駆けてくる。


……すごい。

……落ちそう。

揺れてる……。


目の前に迫ってきたとき、

その足音とスピードに圧倒されて、とても、とても怖かった。


バチッというような音がして、

斜め前の池の方側に立ててあった

竹の先に着けた板が割れた。


黒い二重丸を書いた四角い板が、

こんな形(◇)で立っていたが見事に二つに割れて飛んだ。


馬に乗った人の矢が当たったのだ。

……すごい。

……めちゃくちゃすごい!!

何がなんだか分からないうちに通り過ぎた。

観衆の拍手の中を……。


             広田弘毅


じいちゃんが、身を乗り出して馬のうしろ姿を、

追っているので一緒に見たら、

馬に乗った侍みたいな人(確かに刀さしてた)は、

背中から新しい矢を引き抜いて、また、弓を引き絞っている。


向こうにも、また、的があるんだ。

音は、歓声で聞こえなかったが、

おそらく、バチッといって第二の的も飛んだ。


……スゲー!!!


眼が点になって、ぼーーとしたのを思い出す。

振り向いたじいちゃんと目が合った。


握っていた手をじいちゃんがブンブンと振った。


ぼくも振った。なんか……ジーンとした思い出。



この時の、お宮参りはこの事しか覚えていない。

他にも、色々と見たり、何やかやと、

買って貰ったりしたと思うが…………。

何も、覚えていない。


月日が流れて…………。

現在、この神事は行なわれているんだろうか?

とにかく、ヤブサメ……スゴカッタ……思い出。




  馬  中津宮2

===========================================================================
◆◆ホームページランキング(暮らし・生活⇒ライフスタイル)に参加しています。
  他にもステキなブログがありますよ。
  一票お願いします。ランキング表を見に来て下さ~い
◆◆クリックして~~ ( ^-^)
順位グラフ1位






Last updated  2008/11/15 09:38:00 AM
コメント(38) | コメントを書く

全7件 (7件中 1-7件目)

1

PR

X

© Rakuten Group, Inc.