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カテゴリ:『CRONOUS』 ~黙示録~
『CRONOUS』 ~黙示録~
第8話 『-仮面の男-』 「ねぇ…大尉…今日の予定は?」 マニキュアを塗りながらカラーが黙って新聞を読む仮面男にそう聞いた 「そうだなぁ…今日は特に考えてないが」 男は新聞を閉じてそう答えた 「大尉…コーヒーをどうぞ♪」 そう言いながら八咫が仮面男の前にコーヒーを置く 「お!いつもスマンねぇ」 仮面男はそう言うと明らかに体格とサイズが合ってないコーヒーカップをつまむと仮面をずらして口に運んだ 「大尉…申し訳ないがこの日とこの日の夜の警戒任務出れないかなぁ?」 今度はトゥイージーが仮面男の前にカレンダーを置くと指で示しながら尋ねた 「この日とこの日か…人が足りんのか?」 「なんとかしたいんだが…うちもメンバーがギリギリでね…」 トゥイージーは申し訳なさそうに手を合わした 「ふむ…いつも世話になってるからな…なんとかしよう」 「よかった…助かるよ」 トゥイージーはカレンダーに『大尉OK』と書き込んだ アイナはそんなやり取りをずっと黙って見ていた そしておもむろに 「ねぇ…あの人は何で大尉って呼ばれてるの?」 と僕に小声で聞いてきた… 僕が所属しているギルド「黙示録」 ここには様々な人達が様々な理由で在籍している 今までにも数人紹介してきたが…謎の多い人物が多数居る まぁ…中には謎というよりも理解不能という方もいるが その話はまた後日… さて、その中で今日の話題にあげるのは 仮面で素顔を隠している戦士…ウコンさんである メンバーはみんな彼の事を「大尉」と呼んでいる ギルドという組織は軍隊ではないのでそこに「大尉」という階級はない ではなぜ大尉なのか… 『黙示録アジト ~1年前~』 メンバーがリビングのテーブルでくつろいでいた… というよりもおそらくその状態は他人が見れば「怠らけてる…」そう言われてもおかしくないような姿だった 「1、6の半…悪いねまた俺の勝ちって事でw」 バーンはそう言うと床に置かれた白魔童のお金をごっそりと自分の元に引き寄せる 「だぁぁぁ!なんでだぁぁ!」 白魔童は頭を掻きむしりながらそう叫んで床に倒れこむ 「どうする?今日の負け分取り返すか?なんなら今から賭け金倍にしてやるけどw」 「マヂで?やってやろうじゃないか!!」 白魔童はムクリと起き上がると目を輝かせた 「ほほほほほほ…あれはドツボだね」 そう笑いながら孫が盤上の駒を動かす 「まったく…あれで何度身ぐるみをはがされた事か…」 孫の動かした駒を見つめながら腕組みをして考え込むトゥイージーがつぶやく 「まぁまぁ…命まで取らないのだから好きにさせておけば…それにお金が無くなればしばらくは禁酒で静かになるし」 孫はそう言って白魔童を見る 「確かにそういった意味では助かるか…」 トゥイージーはそう言いながら駒を動かした 「!!!!…そ、そこはよろしくないですよ…」 「孫様…待ったはなしですよw」 トゥイージーはうろたえる孫を見てニヤッと笑った… 「頼もう!」 その時…入り口でそんな声と共にドアが叩かれた 退屈な時間が続いたせいか全員がその声に反応する そしていち早く腹筋をしていたうほほいが飛び起きると玄関に走った 「な゛!!」 玄関でそんなうほほいの声が聞こえ全員が顔を見合わせる しばらくの後…うほほいが後ずさりでリビングに戻って来るのを見て尋常ではない事が起こった事を全員が察知した そしてそんなうほほいを押しのけて今度は白魔童が玄関に飛び出していく 「え゛?!」 飛び出していった白魔童がそんな声をあげて後ずさりで戻って来る 何が起こったのかわからず…リビングに緊張が走る 残ったメンバーが意を決してうなずくと恐る恐る玄関を覗き込んだ そしてうほほいと白魔童の反応を理解した そこには仮面をつけたいかにも怪しい人物が立っていたからだ 人物と言っても間違いなく男である いや…これが女であったのならばまさに悪夢である その仮面は目の部分が抜けてそこから鋭い目がのぞき それ以外に全体的に無数の丸い穴が空いていて 額と頬の部分に赤い模様が入っっている白い仮面… 面妖というよりも…恐ろしさを醸し出している そしてそれがその男の体型に妙に似合っているから一層怖さが引き立っている 「黙示録ギルドのアジトはこちらでしょうか?」 と謎の仮面男は質問してきた その風体からは想像できない丁寧な言葉であったが 一度焼きついた恐怖感はぬぐえずいったん全員がリビングに引っ込む 「な、何よアレ!」 いつも冷静なカラーが珍しくうろたえながらそう叫ぶ 「ま、まぁ…ただ者ではないだろうな…」 「そりゃそうだろ!どう見たって…あれはヤバいって殺人鬼かモンスター…百歩譲って借金の取立てか…何か…」 白魔童がそう言いかけた所で視線がバーンの元に集まる 「ち、ちょっと待てよ!…なんでそこで俺を見る!」 バーンはそう言いながら2、3歩後退する 「お前…賭場で何かやらかしただろ!」 「な、何もやってないって!」 白魔童の言葉にバーンは慌てて反論する 「ほら…ボロを出したな!」 「どこがだ!つうか何でだよ!」 「フフフフフ…バーン君…何かをやった奴は絶対にそう言うと相場が決まってるんだよ!」 「誰だってこの状況はそう言うって!…つうか無理やりすぎだろ!…なぁ?」 バーンがそう言って同意を求めると全員が首を横に振る 白魔童の口にした根拠が無茶苦茶なのは全員が解っていた しかしこの場は自分以外ならば誰が犯人でも構わない…おそらく誰もがそう思ったのだろう そして全員でバーンを取り押さえて縛り上げると玄関に連れて行く 「ち、ちょっと待てぇ!…マジ勘弁してくれよ!…このヒトデナシ!」 バーンの無情な叫びもこの状況では誰の耳にも届かず玄関へと運ばれる そして玄関に立つ怪しげな仮面男の前に生贄でも差し出すかのようにバーンを放り出すと全員が一気に後退する 白魔童が仮面男に向かって「どうぞお持ち帰りください」と言わんばかりのジェスチャーを送る 縛り上げられて身動きの取れないバーンは声すら出す事なくただ涙を流す 全く状況が理解できない仮面男はただ腕組みをして目の前に転がるバーンと離れたところに固まるメンバーとを交互に見る 「私はウコンと申します…ギルドに入れてもらいたいのですが…ダメですか?」 しばらくの後…仮面男はそう言葉を出した 「え?」 予想外の言葉に全員がそんな声をもらした これがウコンと名乗った仮面の男が黙示録に入った時の話である 話してみればとてもいい人なのだが… とにかく怪しいという事と何より仮面が怖すぎる事もありみんなが慣れるまでにはかなりの時間を要した 特に…夜中トイレでばったり行き会おうものなら寿命が数年縮む思いである 想像してもらえばその恐怖がどれほどの物かわかってもらえるだろう そしてウコンが加入後しばらくたったある日… リビングで新聞を読むウコンを見つめるカラーが居た 「どうした?」 そんなカラーに白魔童が声をかける 「いや…ずっと気になってたんだけど…どこかで会った気がするんだよね…」 「え?あんな仮面…会ったなら忘れんでしょw」 「当たり前でしょ!仮面じゃなくて…中の人にだよ!」 カラーは白魔童の胸ぐらをつかみながら小声でそう叫んだ 「なるほど…カラーさんがそう思ったって事は気のせいじゃないみたいだね…」 隣で聞いていたトゥイージーがそうつぶやいた 「でしょ?…でも…思い出せないんだよね…」 カラーはそう言いながら口元に手を当てて新聞を読み続けるウコンを見つめた 「ふん!…ふん!…ふん!…王国の…ふん!…騎士団…ふん!…団長…ふん!…でしょ?…ふん!」 するとすぐ近くでバーベルを担いでスクワットをしているうほほいがそうつぶやくように言った 「!!!!」 それを聞いたトゥイージーとカラーが顔を見合わせる 「いや…確かに雰囲気は似てるけど…そんな人が何でうちに…なぁw」 「そうよ…そんなわけが…ねぇw」 トゥイージーとカラーはそう言って笑う 「息…ふん!…抜き…ふん!…でしょ?…ふん!…なん…ふん!…だったら…ふん!…大尉…ふん!…って…ふん!…呼んで…ふん!…みたら?…ふん!」 うほほいはさも当たり前と言わんばかりにそう答える 「息抜きって…そんな馬鹿な事がw」 「ねぇ…w」 トゥイージーとカラーはそう言ったもののあまりにも自信ありげに答えるうほほいに思案を巡らす そしてしばらく間をおいてから 「ね、ねぇ…大尉…」 恐る恐るカラーがウコンにそう声をかけた 「うん?」 ウコンは平然と新聞越しに返事を返してきた 「え?」 「うん?」 言葉無く唖然とするカラーにウコンは首をかしげる 「ね…ふん!…言ったでしょ…ふん!…俺は…ふん!…戦場で…ふん!…何回か…ふん!…会ってるからねw…ふん!」 うほほいは笑いながらそう言ってスクワットを続ける これ以来…みんなが彼の事をウコンではなく「大尉」と呼ぶようになったのだが 素性がバレた今でもかれはあの怪しい仮面をつけてここに現れる それがなぜなのか…今を持って謎である 『ファン城・王国騎士団団長室』 ここは王国騎士団の団長室… しかし団長室というわりに小さな机と木で出来た椅子本がほとんど入っていない本棚… 単に詰所といった感の質素な部屋であった その部屋で木の椅子に座り顔をしかめながら煙草を咥え大きな戦斧を磨く男がいた この人こそ王国騎士団を取りまとめ幾多の戦場を単騎で駆け抜け戦ってきたユーコン大尉その人である 「失礼します!」 団長室にドアをノックする音が響き1人の男が入ってきた 「どうした?何か問題か?」 ユーコンがそう尋ねると男はユーコンの元に近づいて耳元で何かを囁いた するとユーコンの表情が見る見る曇りついには大きなため息を吐いた ユーコンはうなだれたまま入ってきた男に「了解!」と手で合図を送った しばらくうなだれたまま動かなかったユーコンであったが 「しかたない…行くか…」 とつぶやいて立ち上がると大戦斧を壁に立てかけそのすぐ上に掛けられた白い仮面を手に取った 「まったく…うちの王子の放浪癖は困ったもんだ…」 ユーコンはため息混じりにそうつぶやいてしばらく仮面を見つめる 「しかし…いつギルドのメンバーに俺の正体を話そう…いい奴等ばかりだからな…騙し続けるのも気が引ける」 そう言って手に取った仮面を着けて団長室を出て行った …『To Be Continued♪』 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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