ドラムマニア

2004/07/17(土)20:48

ファンク・ブラザーズに想う。

“永遠のモータウン”という映画を皆さんは見ましたか。見逃した方には、是非DVDででも見てもらいたいと思います。音楽ファンなら、必見の映画です。 話はつまり、モータウンの黄金期の演奏とアレンジを支えていたミュージシャン達、ファンク・ブラザーズと呼ばれた彼らが一同に会し、当時を振り返りながら、当時クレジットに載せられていなかったばかりについに存在を広く知られることのなかった彼らの名誉回復と、その存在の偉大さへの感謝で物語が進められていきます。 マーヴィン・ゲイ、ジャクソン・ファイヴ、スティーヴィー・ワンダー、スモーキー・ロビンソン、ダイアナ・ロス、フォートップス、テンプテーションズ…、音楽好きでなくとも彼らの音、演奏は必ず一度は耳にしているはずです。 パンフレットの資料によれば、彼らファンク・ブラザーズが送り出した全米No1ヒットの数は、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ローリング・ストーンズ、エルヴィス・プレスリーのNo1すべてを足した数より多いのだそうです。 そんな彼らが、この映画が作られるまで陽の目を見ない存在だった(ボク自身も、この映画で初めて彼らの存在を知りました。)というのは、あってはならなかったことだと思います。 自分に置き換えて、ちょっと身につまされる思いがしたのは、今でこそ めったになくなりましたが、ボクも昔「クレジット、よろしくお願いします。」とレコード会社のディレクターに言うと「はぁ?」というリアクションをされることが時々あったのです。 ドラム・チューニングの仕事は、日本ではまだ確固たる地位やポジションが与えられているものではありません。目に見える形としては、ドラムをいじっているだけのように見えますが、時にはエンジニアさんの領域に足を踏み込む瞬間もありますし、あるべき音を求めてドラムのプレイにアドバイスをすることも少なくありません。その楽曲に必要な音は何かを探る中で、アレンジにも首を突っ込んでいたということもありましたし、また現状では、本当に確かな仕事が出来る人もまだ少ないということもあります。 だからなのか、ディレクターによっては、どうクレジットしたらいいのか解らなかったのかもしれませんが、実際、ボクも今までの仕事の中には、クレジットに名前を載せてもらえなかったものがあります。 CDのジャケットの後ろの方にあるクレジットというものを、それこそ一般の人がどれくらいチェックするものか、というのも疑問かもしれませんが、でも、そのクレジットのたった一行すら載せてもらえないままでは、本当に存在が抹殺されてしまうという怖さをこの映画であらためて思い知った気分でした。 しばらく前に買った、ピーター・ガブリエルのライヴDVDの中ジャケを見ると、そのときのツアー・スタッフが機材車の運転手にいたるまで載せられていました。これはまさに、DVDに収録されたライヴを支えている裏方一人ひとり、すべての仕事と存在を認める意識のあらわれでしょう。もはや欧米では、ファンク・ブラザーズのような思いをする人はいなくなっているのかもしれません。 日本も、日本人も早く、その意識に追いついてもらいたいと思っています。

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