いつか維新の政治家が「ふわっとした民意」という言葉を使ったことがある。ふわっと…という日本語の語感の便利さでなんとなくわかった気になるのだが、よく考えるとなかなか深い言葉のように思う。「ふわっと」というけどなにがふわふわしているのだろうか。ふわふわの反対はがちがちで、前者は柔らかく後者は固い。後者が強固な信念や価値観に裏付けられているのに対して、前者は時々の気分やムードで変わる。支持政党や政策について強固な信念のあるがちがちの人というのは、いつの時代でも人口比でいえば少数で、大多数は日々の生活や他の関心事で忙しく、選挙の時だけ散歩もかねて投票に行くという人々である。そんな「ふわっと」した有権者に支えられた民意がふわっとした民意であり、農協や労組、企業などの大きな組織の集票力が減った今日、こうした民意が選挙結果を左右するのであろう。
この間の衆議院選挙でいえば、その民意をつかむのに成功したのが自民であり、維新であり、失敗したのか立憲民主や共産だったといえる。維新や自民は選挙の顔を変えることによって「新しさ」を演出したが立憲民主ではそれができなかった。維新は公務員などのわかりやすい敵を設定し、ふわっとした民意をつかむのに長けていたが、立憲民主には無理であった。夫婦別姓やLGBT差別反対もそうなのだが、憲法9条護持、改憲反対、反原発もコアな支持層には響いても、ふわっとした民意には響かないのではないか。理念をひっこめろとはいわないが、それは冷厳な事実として認識する必要がある。
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