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2022年05月14日
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カテゴリ:読んだ本
極端に背が低く醜怪な容貌の竹職人の下に美しい女が嫁いでくる。女は父のなじみの芸妓であり、墓参りが縁となってのことであった。職人は女に幼い頃に死んだ母の面影を見ており、女に対する愛は純粋であったが、それは母に対するような思慕であり、女に触れることはなかった。職人は女に対する憧れをひたすら竹人形作りに昇華する。そこに女の過去のなじみ客が卸先の商家の番頭としてやってきて、一時の過ちで女は妊娠する。女は職人知られずに胎児をなんとか処理しようとするのだが…という物語である。
(以下ネタバレ)



論説や評論ではいいにくいことも、小説という形式をとれば、案外ストンと胸におちることがある。
胎児の処理に困った女は、最初胎児の父親である男を訪ね、つぎにおばを頼るつもりで宇治川を渡っている途中で渡し船の中で早産をする。女の様子から事情を察していたらしい船頭は手早く嬰児を宇治川に捨て、汚物の処理も行う。そして女には「あの赤子はこの世とは縁がなかったんだねえ」という。女は船頭に感謝するとともに、このことは一生夫には言うまいと決めて、夫の下に帰っていく。この時の宇治川の夕焼けの描写が素晴らしく、酷薄ななじみ客に対比して、名も知れぬ船頭は神のように見える。
一般論で言えば船頭の行為は殺人であろう。しかし、ぎりぎりの状況では道徳的に責めることができない嬰児殺もあるのではないか。ときどき嬰児殺人の記事が新聞に載り、無軌道な行為を責める論調は多いが、一方で未熟児医療の進歩で中絶可能期間はどんどん短縮され、犯罪被害などで望まない妊娠をした女性が駆け込み的に公費で中絶する機関(外国にはそうした例があるという)についての議論は遅々としてすすまない。想像力に欠けた建前論ではなにも解決しないのに。そういえば、終戦まもない頃、引揚者の施設に勤務していた看護婦の体験談で、生きて生まれた赤ん坊を処理したという話があるが、この看護婦の行為を非難する人はまずいないだろう。
女は赤ん坊を処理したことは夫には生涯秘密にすることを決めて夫の待つ家に帰っていく。これも原理主義的な考えでは、そんな重要なことを夫に言わないのは不誠実だということになる。しかし、それを言ったとして誰が幸せになるというのだろう。小説は百の論評も及ばないような人生や社会の断面を提示する。女は自分を母のように思慕してくれる夫との愛を全うするために秘密を守るのである。
物語はここで終わっても良いように思う。
その後、女は肺病で死に、夫も後を追うように亡くなるのだが、こうした薄幸な結末にせず、二人のその後は読者の想像に任せた方がよい。






最終更新日  2022年05月15日 07時31分46秒
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