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カテゴリ:読んだ本
現在進行形のウクライナ情勢に関する本である。
マスコミの大方の見方とは違う点もあるのだが、それも一つの見方というのが興味深い。 もちろんこれは現状をどうみるかということで、イデオロギーや政治的立場は別である。 まず、筆者は第三次世界大戦はすでに始まっていると見る。ロシアのウクライナ侵攻により、ウクライナ軍が意外に強いことが明らかになったが、これは米英がすでにウクライナの軍事強化に関与している結果とみられ、その意味で既に第三次大戦は始まっているとする。次にその性格は第一次大戦と第二次大戦のどちらに近いかであるが、イデオロギーと関係なく始まり消耗戦が続いた第一次大戦に近いものとする。 第二に、筆者は既にロシアが勝利しているとみる。ロシアはかなりの地域を占領し、しかも、経済制裁は高価をあげていない。貿易がとだえることで痛手を被るのは西側の国であって、ロシアはそうではないからである。しかも世界的に見ればロシアを非難も制裁もしない国は多い。 第三にウクライナはロシア侵攻以前に既に国家として崩壊過程にあり、多くの若者や優秀層が国を離れていた。今後は西部、中部、東部で分割され、西部はポーランドに編入されるという可能性もある。 こうした見立ては「べき」論ではなく、「である」論なので、よいとか悪いとかの問題ではない。 ただ筆者の専門は家族社会学で、家族の在り方と政治体制とは密接なつながりがあるということを主張しているのであるが、その根拠がよくわからない。家族の在り方は不変ではなく、わずか2世代3世代でも変わっていくものであり、それは多くの人が実感している。家族構造における父権制の強度を%で表したグラフも提示されているが、数値の根拠が全く記載されておらず、単に数字を出せば説得力があるとするトリックのようにも見える。 また、なぜヨーロッパにおいて中国よりもロシアが憎悪の対象になるかについても考察している。これは非ヨーロッパ人からは謎の部分なのだが、中国はそもそも我々と同じではないが、ロシアは我々と同じような風貌なのに同じように考えていないからだという。たしかに冷戦時代にはこういう面もあったかもしれないが、今はあまり説明にならない。さらっと読める割には本当かなあと思う部分も多く、「こういう見方もある」という意味で興味深い本だと思う。 最後の方で国の実力はGDPではなく、エンジニア指数で図られるという指摘があり、これは同意できる。GDPには弁護士費用などの虚構の費用(米国は大変な訴訟社会なのでこれを入れればうGDPは増える)も含まれているので、真の実力は労働人口の教育水準、また、高等教育学位取得者の中でのエンジニアの占める割合で図られるという。数だけで質はとわないのかというツッコミはあるにしても、その国でどのくらいの新技術や新製品が開発されるかというのが国力の指標だとしたらそのとおりであろう。最近10年以上も使っていた卓上電気スタンドを買い替えたのだが、安価の製品だが光の色を五種類、明るさを三段階に調節できる優れもので驚いた。この分野もこんなに進歩したのかと思って見たら中国製だった。中国製は今や安いというだけではなく、こういうところにも国も勢いはでているように思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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