以前、「マインドコントロール」(ハッサン)という本を読んだことがある。著者は統一教会に入信してその後脱会した元信者で、自身の入信から布教活動のためにキャリアをなげうつまでの経緯を心理学的に分析してまとめた本である。記述されているマインドコントロールの手法自体は、商品の売込みや恋愛などあらゆる人間関係で使用されているもので、決して目新しいものではないという印象をうけた。例えば、権威の法則などは、自分が有名人の知己であることを利用することであり、これは麻原がダライラマとのツーショットを布教宣伝に使うのも、恋人に自分が著名人の友人であると吹聴するのも同じであろう。要はマインドコントロールといっても魔法でも催眠術でもなく、あちこちで普通に行われているものであろう。
それに、いわゆるマインドコントロールでなくとも、自分で考える力を奪うものはいくらでもある。分かりやすい例が自己規定である。自分は社会主義者だからこう考える、自分はサヨクだからこう考える、あるいは逆に自分は愛国者だからこう考える、右翼だからこう考える…という自己規定である。ネット上にもこうした化石思考が時折みられるのが興味深い。
著者ハッサンはマインドコントロールの予防法として「とにかくそうしたものがあることを知ることである」と書いている。これもカルト宗教だけではなく、人生すべてにいえることであろう。その意味で子供、特に娘を無菌状態で育てるのは間違っていると思う。「妻とうまくいっていない」と近づいてくる男も「私は救世主だ」と言って信者を集める教祖も危険因子という意味では同じである。閑話休題。カルトに関しては、危険を知らせるという意味だけでも、マスコミの果たす役割は大きい。従って、合同結婚式や霊感商法で有名になった統一教会の名称変更を認めた省庁も、その名称変更を碌に報道しなかったマスコミも罪が重い。新しい名称でも布教活動は行われており、街角でチラシをうけとったこともある。家庭とか平和とかあれば普通の団体だと思う人もいるかもしれない。
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