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2024/05/01(水)12:10

「鬼太郎誕生~ゲゲゲの謎」を観て

映画(70)

昔、鬼太郎の漫画の中で鬼太郎誕生のくだりを見たことがある。鬼太郎というのは、幽霊族最後の生き残りで、墓場で生まれたところを、会社員の水木という男に発見され、その時、父親の死体から目玉だけが飛び出したという。週刊誌による漫画が全盛となる以前は貸本漫画というのが流行っていて鬼太郎は最初は貸本漫画に登場したという。貸本漫画はあまり記憶にないが、床屋などに置いてあることもあり、週刊誌漫画に比べると、おどろおどろしいタッチのものが多かったように思う。鬼太郎誕生のエピソードも絵柄が不気味で赤ん坊の鬼太郎もあまり可愛くなく、貸本屋時代の面影を残したものだったのかもしれない。 貸本版はわからないが、週刊誌漫画では、鬼太郎誕生についてこれ以上詳しくは書いていない。そもそも幽霊族はどういうもので、死体になる前の鬼太郎の父はどういう姿で、そもそも会社員の水木と鬼太郎の親はどんな関係にあったかなど、不明である。 この映画では、そのあたりを描いたもので、会社員水木が犬神家の一族を思わせる田舎の旧家に行き、鬼太郎の父に出あうという物語になっている。設定は昭和30年で水木には戦争体験がある。この時代の大人は普通に戦争体験があったのだが、多くは体験を語りたがらず、だから子供達は戦争というのははるか昔のことのように思っていた。当時は路といえば土道が普通で、田舎から東京ははるかに遠く、東京と聞くと、男の子は川上の試合を見たかと聞き、女の子は銀座のフルーツパーラーに行って見たいという。そんな時代の風景がアニメならではの技術で描かれ、鬼太郎父も、風呂好きであるところや後の時代を目でみてみたいというあたり、後の目玉だけで茶碗風呂に入っているのを彷彿とさせて面白い。 まあ、後半は子供向けのアニメになっているのだが、結局のところ怖いのは妖怪よりも人間なんだなあ…と思う。部下に死を命じながら自分は生き延びようとする上官や、薬品を使って社員を猛烈に働かせようとする会社幹部の姿に、戦前の軍国主義や強欲資本主義批判をみるのは深読みなのかもしれないけど。

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