ドクターイワタの認知症ブログ~東海エリア最高の治療実績~

2023/06/18(日)17:07

ドクターイワタの認知症ブログ2015年11月15日

認知症専門外来と専門往診の二刀流(326)

​​長久手南クリニック 認知症/発達障害 新患予約サイト​ 認知症治療研究会会誌に論文掲載 症例報告~アリセプト(ドネペジル)5mg中止症例~ 親戚からの紹介である。精神科1.アリセプトト5mg2.ジェイゾロフト25mg3.リフレックス15mg4.ロヒプノール2mg5.マイスリー10mg。物忘れ、暴言、易興奮、徘徊、迷子、独語、甘い物好き、振戦、歯車様固縮を呈していた。頭部CT:1.頭頂葉萎縮軽度、2.前頭葉萎縮軽度、3.側頭葉萎縮中等度、4.海馬萎縮なし、5.両側基底核および深部白質ラクナ脳梗塞数カ所。以上から、レビースコア:4、ピックスコア:4、レビー・ピック複合(LPC)として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト:5.5/9、改訂長谷川式:25/30、近時記憶6/6と中等度低下していた。易興奮にアリセプト5mgを中止、認知機能低下にフェルガード100M2包を勧めた。多発性脳梗塞にプラビックス25mgを開始した。1か月後、中核症状は改訂長谷川式:19/30(-6)、近時記憶5/6(-1)と中等度悪化、上記周辺症状は継続した。前頭葉症状にコントミン朝12.5mg昼6.25mg夕12.5mgを開始、フェルガード100M2包から3包への増量を勧めた。甲状腺機能低下にチラーヂンS25μgを開始した。8か月後、中核症状は改訂長谷川式:改訂長谷川式: 24/30(+5)、近時記憶6/6(+1) と中等度改善、、上記周辺症状すべて消失した。14か月後、改訂長谷川式: 28/30(+4)、近時記憶6/6(+-) と更に中等度改善した。4年後、改訂長谷川式: 27/30(-1)、近時記憶6/6(+-)、周辺症状はすべて消失、治癒状態が続いている。 施設からの紹介である。内科1.アリセプト5mg 2.メマリー20mgなど。物忘れ、暴言、易興奮、金銭浪費、帰宅願望、介護抵抗、昼間傾眠、病識欠如、甘い物好き、収集癖、腕組みを呈していた。頭部CT:1.頭頂葉萎縮なし、2.前頭葉萎縮軽度、2.左>右側頭葉萎縮中等度、4.海馬萎縮軽度、5.両側基底核ラクナ脳梗塞数カ所。以上から、レビースコア:2、ピックスコア:9、前頭側頭型認知症(ピック病)として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト:8.5/9、改訂長谷川式:14/30、近時記憶0/6と中等度低下していた。易興奮にアリセプト5mg/メマリー20mgを中止した。前頭葉症状にウインタミン朝4mg夕6mgを開始、フェルガード100M2包を勧めた。多発性脳梗塞にプレタール50mgを開始した。1か月後、中核症状は改訂長谷川式:12/30(-2)、近時記憶2/6(+2)と軽度改善、上記周辺症状は継続していた。易興奮にウインタミン朝6mg夕12mgへ増量した。 6か月後、中核症状は改訂長谷川式:13/30(+1)、近時記憶2/6(+-)と更に軽度改善、いらいら偶に、介護拒否以外上記周辺症状は消失した。易興奮にウインタミン朝8mg夕16mgへ増量した。18か月後、中核症状は改訂長谷川式:13/30(+-)、近時記憶2/6(+-) と不変、デイサービス拒否以外上記周辺症状はすべて消失した。 認定調査員からの紹介である。内科1.ドネペジル3-5mg2.バイアスピリンなど。物忘れ、夢の続き、被害妄想、アパシー、鬱状態、昼間傾眠、真面目、収集癖、腕組み、使用行動、語義失語を呈していた。頭部CT:1.頭頂葉萎縮なし、2.前頭葉萎縮軽度、3.側頭葉萎縮なし、4.海馬萎縮なし、5.両側基底核ラクナ脳梗塞、境界領域梗塞、6.その他:左淡蒼球石灰化。以上から、レビースコア:4、ピックスコア:4、レビー・ピック複合(LPC)を呈する石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病(DTNC)類似疾患として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト:8/9、改訂長谷川式:14/30、近時記憶1/6 と中等度低下していた。夢の続き、被害妄想、前頭葉のためドネペジル中止、認知機能低下に8日目からレミニール4mg/ナウゼリン10mgを開始、NewフェルガードLA粒4錠を勧めた。脳血管性認知症(VD)に他院からバイアスピリン、当院からサアミオン10mgを開始、プロルベインDR4Capを勧めた。1か月後、中核症状は16/30(+2)、近時記憶1/6(+-)と軽度改善、語義失語以外上記周辺症状はすべて消失した。 施設からの紹介である。内科1.アリセプト5mg2.ドルナー3.ニューレプチル10mg→3日間意識低下中止4.セルシン朝2mg昼2mgなど。物忘れ、暴言、易興奮、介護抵抗、語義失語、収集癖、甘い物好き、薬物過敏、真面目を呈していた。頭部CT:1.頭頂葉萎縮なし、2.前頭葉萎縮軽度、3.側頭葉萎縮中等度、4.右海馬萎縮軽度、5.両側基底核ラクナ脳梗塞多数、境界領域梗塞、6.その他:右ピック切痕。以上から、レビースコア:7.5、ピックスコア:6、レビー・ピック複合(LPC)として治療を開始した。暴言、易興奮、介護抵抗のためドネペジル5mg中止/セルシン朝2mg昼2mg継承、認知機能低下にリバスタッチパッチ4.5mgを開始、フェルガード100M粒4錠を勧めた。脳血管性認知症(VD)にプロルベインDR4Capを勧めた。1か月後、中核症状は18/30(+2)、近時記憶1/6(-1)と軽度改善、語義失語以外上記周辺症状はすべて消失した。 インターネット検索で来院された。内科1.アリセプト5mgなど。物忘れ、アパシー、夜間不眠、病識欠如、寝言を呈していた。頭部CT:1.頭頂葉萎縮なし、2.前頭葉萎縮軽度、3.側頭葉萎縮軽度、4.海馬萎縮軽度、5.両側基底核ラクナ梗塞多数、Binswanger型脳梗塞。以上から、レビースコア:2、ピックスコア:0、混合型認知症(MIX)として治療を開始した。中核症状は時計描写テスト:8/9、改訂長谷川式:20/30、近時記憶2/6 と軽低下していた。73歳と比較的若く頭部CT所見から前頭側頭葉変性症の可能性があり、アリセプトで臨床的改善はないためアリセプト5mg中止、認知機能低下にレミニール4mg/ナウゼリン10mgを開始、NewフェルガードLA粒4錠を勧めた。脳血管性認知症(VD)にプレタール100mgとサアミオン10mgを開始、プロルベインDR4Capを勧めた。1か月後、中核症状は改訂長谷川式:21/30(+1)、近時記憶4/6(+2)と軽度改善、アパシー以外上記周辺症状はすべて消失した。 ドネペジル(アリセプト)過量投与による医療過誤~ドネペジルは穏やかなATDにのみ合う~ 一番の認知症医療の問題点は、認知症治療薬の増量規定であり、薬品会社に踊らされて、必要以上の認知症治療薬を投与してしまうことにあります。以前から認知症治療薬ドネペジルの増量規定を守らないことが患者の治療に大切であることを繰り返して話してきました。ドネペジルには3mgで投与開始して、2週間後に5mgに増量して維持するという増量規定があります。しかし、筆者らの経験からドネペジルは臨床病型では穏やかなATDに対してのみ適応、ATDの至適用量は2.5-5mg、リバスタッチパッチ発売開始前はDLB系(DLBおよびLPC)に対してドネペジル1-1.67mgが至適用量であることが分かりました。現在ではDLB系にはリバスタッチパッチが至適であると分かっています。超興奮系のドネペジルはFTLDには効果がないだけでなく副作用の面から禁忌(絶対に投与してはならない)であり、現在ではレミニールが至適であることが分かっています。 ドーパミンが低下してパーキンソン病様症状があるDLB患者にドネペジル5mgが投与されるとドネペジルには抗ドーパミン作用があるため四肢硬直状態となり、挙げ句の果てに嚥下も出来なくなり、胃瘻まで作られ寝たきりにされてしまいます。実際に筆者の往診患者の中に精神科医から5年間ドネペジル5mgを投与され、四肢硬直状態にされてしまった認知症患者さんがおられました。ドネペジルを中止して、抗パーキンソン病薬を投与しても5年間という失われた時を取り返すことが出来ず、胃瘻を希望されなかったため2年間往診した後に誤嚥性肺炎のため亡くなられました。知らないところでこんな悲劇が繰り返されているのです。DLBにアリセプト10mgが適応になったと言うことはどれだけ恐ろしいことかおわかり頂けたでしょう。 3年前に認知症治療薬としてリバスタッチパッチ、レミニール、メマリーの3種類が発売され、それぞれの増量規定が添付文書に規定されました。発売当初、筆者らはそれぞれの認知症治療薬の増量規定に従い投与していました。その際にドネペジルと同じような悲劇が繰り返されてしまったのです。発売後半年程度経て、認知症治療薬3種類すべて増量規定に従わず少量投与することが認知症患者を正しく治療出来る方法だったことがわかったのです。

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