ドクターイワタの認知症ブログ2014年3月14日
これから認知機能が低下していく患者を見つける10種類の代謝産物を用いた血液プロフィールを利用すれば、認知機能の正常な高齢者が2-3年以内に認知症を発症するかどうかを、90%の確率で予測できるという報告がNature Medicine最新号に掲載された。アルツハイマー病治療の難しい課題は、発症前にタイミングよく予防治療を行うこと、すなわち、今のところ認知機能は正常だが実は認知症を発症する恐れが高い高齢者を如何に見つけ出すかである。Howard Federoff等は、細胞膜の構成成分やその誘導体である10種類の代謝産物が、バイオマーカーとなることを発見した。このバイオマーカー群には、認知症の発症よりも前に脳内ニューロンの初期の退行性変化が現れるという。アルツハイマー病患者に対する治療は、早い段階で始めるほど効果が上がると考えられているので、今回の知見は、認知症の臨床試験の際に患者の選択に役立つ可能性がある。Mapstone M,Cheema AK,Fiandaca MS, et al.: Plasma phospholipids identify antecedent memory impairment in older adults. Nature Medicine: doi:10.1038/nm.3466,published online 9 March 2014.症例報告NK病院神経内科からの紹介である。2年前から物忘れがあり、1年間に前医でアルツハイマー型認知症と診断され、ドネペジル3-5mgを投与されていた。ドネペジルで眠気(薬物過敏)があったものの、なんとか継続していたが、物忘れは変わらなかったという。薬物過敏、悪夢、夜間大声、昼間傾眠などでレビースコア4.5。易興奮、甘い物好き 腕組みなどでピックコア4。プチレビー・ピック複合(LPC)と診断した。ドネペジルはメリットがなく、来院1週間前から自己中止しており、丁度良いタイミングで来院されたと言える。すぐにリバスタッチパッチ4.5mgを開始し、フェルガード100M2包を勧めた。頭部CT上、右>左半球萎縮(前頭葉および側頭葉)、右片側性海馬萎縮、右片側性ピック切痕が見られ、前頭側頭葉変性症の所見と合致した。両側基底核にラクナ梗塞が多数見られ、プラビックス25mg開始した(プレタールの論文が出る前)。24日後には、中核症状および周辺症状が著明改善した。一発改善である。知り合いからの紹介である。1年前から幻聴や被害妄想があり、メンタルクリニックからジプレキサとエビリファイが処方されていたが、無効でありエビリファイは自己中止していた。幻聴、妄想、夢の続き、夜間不眠、薬物過敏などでレビースコア4.5。抑肝散5gでは幻聴は不変であり、「名前をずっっと呼ばれている」という。抑肝散5gから7.5gに増量すると同時に妄想に対するセレネース0.4mgを追加投与した。ピックスコア4であり、これでも改善しなければウインタミンを併用する予定である。ケアマネからの紹介である。以前に紹介した方である。初診時には独居のため幻視が分からず、レビースコア:2 ピックコア:7とした。「膝組み」「立ち去り行為」が見られ、語義失語も加わりピック感を強く感じ、ピック病と診断していた。リバスタッチパッチ4.5mgおよびフェルガード100M1包にウインタミン4mgを加えておいた。26日後、改訂長谷川式:19/30(+6)、近時記憶3/6(+1)と中核症状は改善、膝組みや立ち去り行為などの周辺症状はなくなっていたが、被害妄想から来る介護拒否や興奮は相変わらず続いていた。同伴したヘルパーに聞いて見えるとフェルガード100Mが本人の拒否のため飲めていなかった。熱湯に溶かして飲み物と一緒に摂取するように御願いした。加えて、被害妄想にセレネースを開始、興奮にはウインタミン4mgから6mgに微増した。84日後、ヘルパーからの指摘で幻視があることがわかり、レビースコア4となり、レビー・ピック複合と診断変更し、抑肝散加陳皮半夏3.75gを追加した。これで周辺症状が治まるだろう。お泊まりサービス付きデイサービスからの紹介である。独居でデイサービスおよびお泊まりサービス週5回、木金土日月を利用していた。最近、このパターンが多い。開業医からの紹介状によれば、2年前から幻視と妄想があり開業医からM市民病院神経内科へ紹介したという。アルツハイマー型認知症と診断され、パニック処方を奨励する診療情報提供書を受けていた。アルツハイマー型認知症と誤診した上に、アリセプト5mgとリスパダール1mgというパニック処方で廃人化されていた。直ちにアリセプト5mgおよびリスパダール1mg/セパソン2mgを中止、フェルガード100M2包を勧めた。幻視/幻聴には抑肝散7.5gを継続、妄想にはセレネース0.2mg、鬱状態にはパキシル20mgからパキシル10mg/ジェイゾロフト25mgへ危険分散した。パーキンソニズムにはネオドパストンを開始した。28日後、周辺症状は著明改善していたが、暴言が偶にあるということでウインタミン10mgから16mgに微増した。中核症状も改善が見られた。パーキンソニズムは改善して、歩行は安定していた。デイサービスからの紹介である。前医からドネペジル5mgが処方されており、パーキンソニズムが著明であったレビー小体型認知症の患者さんである。直ちにドネペジルを中止、リバスタッチパッチ4.5mgを開始、フェルガード100M2包を勧めた。パーキンソニズムにはネオドパストン100mgを開始した。同日、グルタチオン600mgを開始したが、歩行は不変であった。28日後、パーキンソニズムが続いており、ネオドパストン100mgから300mgに増量、せん妄にサアミオン15mg開始した。同日、グルタチオン1000mgに増量して施行したところ、歩幅がかなり大きくなり、小刻み歩行の改善が見られた。やはり、グルタチオンは用量依存である。春の訪れある小春日和の午後、香流川沿いの散歩コースを春の気配を探して歩いてみた。春の気配を求めて歩いていると、散歩道のすぐ横でカモ(マガモとカルガモの交雑個体)が日向ぼっこをしていた。近づいてもしばらくそのままポーズをとってくれた。川にはカルガモの夫婦が悠々と泳いでいた。カルガモは黒っぽいのが雄、白っぽいのが雌である。スイセンも開花しており、オオイヌノフグリが可愛い紫の花を付けていた。しばらく、歩いていると散歩している犬が「わんわん」吠えていた。においを嗅ぎつけて吠えていたのである。ふと川の中央を見るとカワウソのような動物が居るのである。ネット検索してみると南アメリカ原産「ヌートリア」という外来種であることがわかった。毛皮を取るために移入したものが野生化し、現在、北アメリカ、ヨーロッパ、日本を含むアジアに帰化して分布するそうである。主食はマコモやホテアオイなどの水性植物の葉や地下茎であり、明け方と夕方に活発な採餌のための徘徊行動が見られ、日中は巣穴で休息していることが多い。中国では飼育されたものが食用にされている。イノシシに似た味らしい。イギリスでは10年がかりで100万頭を駆除して根絶させたという。日本でも特定外来生物に指定されており、50を超える地方自治体が駆除計画を立てている。しばらく、川面に出てきたが、巣穴に戻っていった。在来種の生態系への影響を考えなければならないのだろうが、駆除してしまうのは可哀想な気もする。