加害者プログラムは有効?
今日は第六回日本男性学会議を無事開催する事ができました。例年二日間のイベントとして行っていましたが、今年は規模縮小し一日開催としました。ゲスト講師も少なくし、メンズ関連の支援者、当事者にスピーカーとして登壇して頂きました。テーマは「加害者プログラムは有効?」というもの。午前のシンポではファシリテーターである、中村正さん、大谷泰広さん、私に、『男』悩みのホットラインから臨床心理士の濱田智祟さんをシンポジストととし、はじめに濱田さんからこの半年のプログラムのアンケートからみる、プログラムの有効性に関する分析結果の報告をしてもらい、プログラムがそもそもどういう論理構成をともなうのか、参加者の反応はどうなのかなど、主催する側の考えを述べあいました。午後からは、三人の(加害)当事者と、被害者支援にも関わる女性カウンセラー、に私をコーディネートとして、トークを行いました。延々三時間と言う長丁場ですが、当事者のプログラム参加の背景や、その後の意識変化、対人関係の変化などに付いて、語って頂きました。どの方も脱暴力したとか、自分はひどい男でした、とか、白黒はっきりさせるような語りはせず、たんたんと、自身の体験や思いを語ってくださいました。プログラムの有効性の評価についての結果を期待していた参加者には少しもどかしい語りかも知れません。けれど、暴力が相互の関係の中で発生する事や、社会学的な背景を持ち、単にパーソナルな問題でも、善悪で割り切れる単純なものでもないと言う事から見れば、歯切れの悪い語りこそ、真実の語りに思えるし、回復の可能性を感じさせる表現のように感じた私です。むしろ、私が悪うございました、被害者の方は何も悪くありません、とか、私には何も語る資格はありません、ただ謝罪し続けるしかありません、などという一見、反省に徹しているような語りこそ、自分を抑圧し、力に従属するという、パワーコントロールの逆転状況にしか過ぎない、未解決の表明のように思えてなりません。私は何度も語りましたが、単に暴力を振るわなければいいと言うものではなく、家族や会社、地域などのすべての人間関係の中で、パワーコントロールする事を極力避けながら、自由で対等な関係を維持しうる対人関係能力を獲得する事が求められます。そのためにも、プログラムが矯正や更生、教育や指導というような、権力構造を内包するものであってはならない、というのが私たちの当事者性に基づいたプログラムの基本的な理念です。ファシリテーターも一当事者として関わり自己開示し、当事者の語りから学びあいます。こういった、当事者性に基づいたメンズスタンスのプログラムはなかなか理解されにくいものですし、今まで有効性に付いて語る事も調査研究対象にする事もせずに来たから、世間に伝える手段さえありませんでした。もちろん、男性学会議では、毎年、このテーマで語り続けてきましたが、参加者数にしても、啓発力に関しても微々たるもので、社会的影響力は皆無と言っていい程でした。たぶん、これからこの半年の調査分析結果が出ると思いますが、それをもとに有効性について、あるいは有効なプログラムについて世に問い、メンズスタンスの支援の輪を広げていきたいと思います。暴力のない世界を作るために・・・・なんちゃって(笑)参加してくださった皆様、登壇してくださった方、会議を行うために準備、裏方の作業を引き受けて下さった方、皆様ひとりひとりのおかげで、無事終了する事ができました。ありがとうございます。ちなみに今回の参加者は、全体で六十名ほどでした。会場の規模にはちようどよい参加でした。