味くんの家族再生支援日記

以前男性のための電話相談に関わっていた事がありました。男性相談としては日本ではじめての先駆的な相談電話ですが、基本的には一般の相談電話とその性質を同じくしています。

非指示的傾聴、一期一会、匿名性、無料、などの一般的相談電話の性質に、男性問題の視点を加えて、利用者も相談員も男性のみ、という相談電話にしました。

この電話であれば、情報提供はある程度するけれど、ケースワーク的な聴き方はしませんし、相談はあくまで、気持ちに共感して、利用者の不安や悩みを利用者自身が乗り越えていく事のお手伝いをする、という事にとどまります。

ですから、困難の渦中にあり、その状況に対するコンサルが必要な場合は対応できません。状況は本人だけでなく、本人に関わるすべての状況が流動的にリアルタイムに変化していきます。限られた時間、限られた枠の中でしか聴けない相談電話では対応はできません。

また、状況は安定していても、本人の認知やら生育の問題に絡んで来る場合、単に気持ちに寄り添うだけでは不充分です。
ですから、電話相談では逸脱する事のリスクを回避するために、非指示的傾聴に徹するよう指導する所が多いようです。わからないでもありません。・・・・が。

電話でなくて、面談の相談でも似たような対応をする所も少なくないし、カウンセリングと称してても、何も応えてくれなかったカウンセラー、という話しはクライアントにしばしば聴く所です。

私はそう言う意味で、当初電話でのカウンセリングは行ってませんでした。が、遠隔地の方で他ではどこも相手にしてくれなかったから、どうしてもサポートしてほしいと言われる方も少なくないので、センター設立四年目くらいから電話でのカウンセリングも行うようにしました。

が、実際やってみると、電話での限界を感じる事は少なくありません。まず、聞き取れないという事。携帯電話や子機から話される方も多く、電波状況によっては、半分も聞き取れないということもあります。

よく聴けても七割から八割くらいの言葉しか聞き取れないのがほんとの所です。また、電話では表情が見えないので、メッセージを聴き誤る可能性もあるでしょう。

またこちらの声の質感とかテンポとか、相手の声にあわせるしか無いのだけれど、相手が納得してくれてるかどうかはわかりません。表情があれば、気持ちも伝わりやすいのですが、声だけだと気持ちのやり取りまではなかなか簡単ではありません。

という訳で、電話でのカウンセリングを受ける場合でも一度は面談のカウンセリングを受けてみないか、とのお薦めをするようにしています。

また利用する側にしてみれば、こちらがどういう状況にいるかわかりません。一般の相談電話であれば、時間の枠がありますから、相談員もその枠の中でだけ聴けばいいという安心感があります。けれど、枠をもうけず対応するとなると、こちらの生活時間や多の業務との関わりがあって、電話に出る事もできないという事もあり得ます。

大企業のコールセンターでは何人もスタッフがいて、次々かかる電話に対応しています。私がカウンセリングとして聴かせて頂く場合、面談と同じく予約して頂いて私はそのための時間を確保して電話に向かいます。

また私の援助という事で、匿名性ではありませんし、利用者さんにも名乗って頂きます。それはそれぞれの言葉に責任を負うと言う前提にするという事です。そのぶん、利用料として面談のカウンセリングと同じ料金の請求をさせて頂きます。

このあたり行政の窓口電話、あるいは相談電話と随分性質が異なります。けれど、利用者にしてみれば、その違いはよくわからずかけてこられる方も少なくありません。ですから、その違いを説明するために窓口の電話では、相談内容には踏み込まず、さらっと情報提供だけで終わらせるようにしています。

実際のカウンセリングあるいは相談となると、それなりの対応が必要なので、それは別回線で時間を確保して対応させて頂く事になります。

以前、窓口の電話でしつこく質問してきて話しをえんえんのばそうとする方がおられましたが、窓口を塞ぐと、本来の業務に差し支えるし、詳しくは相談用の有料相談で話してほしいと言ってもそちらは利用する気配もありません。なんども繰り返されるので、やむを得ず、電話を切るしか無いと判断させて頂きましたが・・

いずれにしても、電話でのカウンセリングは簡単ではありません。いわゆる枠の中で匿名で行う電話相談ははるかに簡単と言えば簡単なのですが・・・電話で聴く、といっても、ほんといろいろありますよね・・・