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カテゴリ:読書
うーん、これは失敗作ではなかろうか。 アマゾンから引用の内容紹介。 「ある老人が語りはじめた、一人の少女の運命――ハムラシオリという、歌を愛してやまなかった女の子をめぐる、痛いほど切なく、あまりにも無慈悲な新世代のピュア・ストーリー。なぜ彼女だけが、苛酷な人生を歩まなければならなかったのか? この未知なる感動の物語は、21世紀版「マッチ売りの少女」として広く語り継がれるだろう。芥川賞受賞後に初めて書かれた、極限の純真小説。全く新しい阿部和重!」 これが芥川賞受賞後第一作なのだとしたらちょっと哀しいような。 全く新しい阿部和重! かもしれないけど、それなら前の方が良かったかも。 小さなウソを積み重ねていって、最後にドカンと大きな虚構を持ってくる、 というのが彼のスタイルだった気がする(って、よく覚えていないのだ)。 でも、『インディヴィジュアル・プロジェクション』も 『ニッポニアニッポン』も面白く読んだ記憶があるし、 『シンセミア』も読もうと思っているくらいだ。 結構、ワシの波長に合う作家なのである。 それだけに、これはちょっとウーム…。 特に不満なのは前半と後半が全く別物になってしまったこと。 前半に出てくるハムラシオリの妹でノゾミという強烈なシニカルキャラがいて、 これがことあるたびにシオリの人生に口出しをして支配しようとするのだが、 舞台が東京に移る後半になると、全く出番がなくなってしまうのは、 どう考えても不自然だし、 そもそも東京に一人でシオリを出す、とは思えない。 それくらい強烈な支配・被支配の関係なのだ。 前半は、シオリの成長過程(学校生活など)に対して いかにノゾミが口出しをしてくるか、が話の大きな軸になっており、 だから、後半になっていきなり、スーツケース型核爆弾 (これがミステリアスセッティングという名前) が出てこようと、自称ポルトガル人のマヌエルが某国のスパイだろうと そういった展開に関しては呆気に取られつつも、許せるのだが、 ノゾミが、後半どうシオリと絡んでくるのかと期待しながら 読んでいったら、全く干渉がないまま終わってしまったので その点について大いに不満が残ってしまったのだった。 どれだけストーリーがハチャメチャでも、作者の意図した虚構世界に すんなり入っていければ、とても面白く作品に感情移入できるのだ。 昔の筒井康隆の作品のように。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.06.20 20:19:58
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