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テーマ:ピロリ菌の除菌(21)
カテゴリ:プレスリリース
ピロリ菌の除菌は胃癌の発生率を抑えることからピロリ菌が発見されると除菌療法が行われます。
これは以下のClincal Questionに対して明確な答えがあるからです。 Q:胃癌のリスク因子には何がありますか? ピロリ菌感染、男性、喫煙、胃部分切除、高塩分食、野菜・果物の摂取が少ないなど Q:ピロリ菌感染のリスクはどれぐらいですか? 症例対照研究を集めて構造的に解析したところ、感染者は非感染者の発がん率は3~6倍高いとの報告がある。 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腸上皮化生。ディスペプシアと診断された1,526人の日本人を平均7.8年のフォローを行ったところ、ピロリ菌感染が人の10年非胃癌率は100%であったが、ピロリ菌感染者では95%であった。 前向き試験ではピロリ感染無症状の健康成人をプラセボもしくは胃癌発症率をみた無作為比較試験が6本行われた。いずれも胃癌発症リスク比の95%信頼区間は1をまたいでおり、2本の試験ではリスク比が1.42、3.04と治療群のリスクが高くなったが、メタ解析を行うとリスク比は0.66、95%信頼区間は0.45~0.95と1をまたがなかった。 Q:ピロリ菌の胃癌の予防効果はありますか? 胃癌患者を1人減らすには2008年の世界規模のピロリ除菌数と胃癌の発生率を用いると124人除菌しなくてはならないことが計算上でている。 国別で見ると日本では男性で15人、女性では23人、アメリカでは男性は163人、女性では245人であった。日本では胃癌の発症率が高いことからこの数字が出ている可能性がある。95%信頼区間も日本の上限とアメリカの加減がかぶっているという問題はあるが、絶対値から見て日本では予防効果が期待されている。 ということで、ピロリ菌の除菌は胃癌の発症の抑制のため、健康保険で償還されます。(胃癌の予防と考えると問題があるので、胃の中での炎症を抑えるために除菌が行われます。) 私がこの説明をされると予防効果は95%信頼区間がかぶっているので、日本とアメリカのNNT(Number Needed to Treat)に差は本当にあるのとケチをつけそうですが、それはまたの機会と言うことで 前置きが思いっきり長くなってしまいましたが、ピロリ菌の炎症のプレスリリースの紹介 ピロリ菌は宿主の免疫系を過剰に活性化する事によって胃炎を引き起こすと考えられてきたが、この仮説にはピロリ菌の菌体表面は自然免疫受容体が認識できない構造をしているので、これを解決しないとこの仮説は証明されたことになりません。つまり、ピロリ菌と胃炎の関係が揺らいでしまいます。 大阪大学ではピロリ菌の抽出物から宿主の炎症性サイトカインを誘導する物質があり、その物質がMincleとよばれる宿主の自然免疫受容体に認識されることを明らかにしました。 さらにその物質はα-コレステリルグルコシド(αCAG)であることがわかり、この物質の合成は宿主のコレステロールを用いてコレステリルグルコシルトランスフェラーゼ(Hp0421)によって合成することを確認しました。 Hp0421はピロリ菌特有の酵素であることもわかり、この酵素の特異的な阻害物質を用いる事によってピロリ菌による炎症は抑えることができるという仮説を立てることができます。 ピロリ菌が炎症と関与する仮説を補強することはもちろんですが、除菌以外に炎症を抑える方法がありそうだということは魅力的です。 実はピロリ菌はどのような過程で感染しているのかは実は明らかにはなっていません。またピロリ菌の感染量が同じでも東アジアとそれ以外では胃癌の発症率は異なります。 でが分からない場合にはもしかするとピロリ菌はある種の腸内細菌のように宿主に利益を与えている可能性は否定できません。また除菌療法は成功率があまり高くないことと、確実に腸内細菌叢に影響を与えることから、除菌療法は胃癌を減らすかもしれませんが、大腸癌を増やしている可能性も否定できません。 との仮説もこの阻害剤が実際に医薬品として用いられて初めて分かることです。 そこにいたる道のりはかなり厳しいものです。 第1は今回の実験がマウスで行われていることです。 これは人間を用いた試験では難しいですが、我々にはiPS細胞があります。胃と免疫をもった胃組織体ができれば目に見える形でこのハードルは越すことができます。 第2は特異的な阻害剤を見いだすことです。α-コレステリルグルコシドの構造とMincleの結合の立体構造が分かればH2受容体阻害剤のように計算から阻害剤を作れるかもしれません。 HMG-COA阻害剤のように基質と同じような構造を持っている場合には基質がコレステロールの可能性があるので、特異性を持たせるのに苦労するのが目に見えます。 この両方が解決されて、化合物の最適化が行われれば後は他の薬剤と同じように前臨床試験と臨床試験で有用性が証明できれば我々は新しいピロリ菌による炎症予防剤を手に入れることができます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年12月18日 15時41分55秒
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