国境なき　うずら団

　すごいぞ！！　あのマイペースでおっとりなうずら一家のお嬢様、シフォンがお母さんのマロンを追い払った。


　巣箱の掃除にシフォンを外に出して、下敷きのトレイを皆と交換していた時だった。マロンがするりと抜け出してしまった。シフォンはマロンの大好きな日向の窓辺に立って首を長くして外を見ている。そこへマロンが走っていった。

　マロンは嘴が強くて突かれると無茶苦茶痛い。対するシフォンは小松菜すら柔らかくつつくんだ。大体、奴さんは大柄だし喧嘩なれしている。旦那のなっちゃんだって、妹のタルトだって半泣きするほどだ。逃げるんだ。逃げるんだ、シフォオオオオオン！！！

　でも、シフォンは逃げない。

　ぱっと振り返り目を見開き背筋を伸ばしてマロンを見下ろす。威風堂々立派に立つ。お互いの嘴の距離は１センチもない。するとなぜか瞬時にマロンは怯んで半身を引く。そしてびくびくと脇に控えようとする。そこを見逃さない。向きを変えるかどうかで止まったところをシフォンが突く。驚いたマロンはカーテンの陰に隠れてしまった。

　やるねえ。
　鮮やかなものだ。

　マロンを隅っこから回収する間、戦い終わったシフォンはぽくぽくと日向に当たって目を細めたり開けたりしていたけれどやっぱり自分の巣箱がいいのか一人で戻って行った。巣箱の準備を待ちながら隣の妹のタルトのこぼれ餌を食べてみたりといつも通りで、些かの動揺すら見せない。


　だけどマロンは何に怯えたのだろうか？