心のトラブル１１０番

鳴り響く電話の音に、ちょっと嫌な予感がした。
案の定、知らせだった。京都の友人が逝去した
という。ここ数年会っていなかったが、元気で
活躍していると思っていた。享年五十二歳。逝
くには早すぎるんだよなあ。
自然食品店のオーナーでありながら、一銭の得
にもならない公害運動とか、無農薬栽培に関す
る裁判とか、環境を守る運動とかに首を突っ込
み、全国を飛び回っていた。
たまに会うと、酒を飲みながら、くだらない話
に花を咲かせた。難しい話題は、二人とも極力
避けていた。でも、お互いの意志は通じていた。
知らせによると、葬式も近親者だけで済ませ、
香典、弔電も一切お断りだとのこと。悲しいけ
ど、あいつらしいや。
今夜は、独りっきりで、酒でも飲みながら、あ
いつの冥福を祈ろう。「疲れただろう、ご苦労
さん。あの世で、ゆっくり休んでくれよな」