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カテゴリ:8コママンガ漱石
下宿を尋ぬ。Priory Road Miss Milde方に十二日に移ることに決す。(11月10日 漱石日記) いよいよPriory Roadに移ることに決す。朝University Collegeに至り、lectureを聞く。Dr.Foster(11月12日 漱石日記) 1900年11月12日、漱石はプライオリー・ロードとクリーブ・キャン・フィールドが交差する位置にあるマイルド家に移りました。プライオリー・ロードはロンドンの西にある住宅地で、漱石は赤レンガの小ぢんまりとした佇まいが気に入り、ここに決めたのでした。 しかし、漱石はミルデ家の暗い雰囲気に馴染めませんでした。 狩野亨吉・大塚保治・菅虎雄・山川信次郎に宛てた翌年2月の手紙には、このように書いています。 倫敦に留まるとすれば、第一、学校、第二、宿をきめねばならぬ。学校の方はIniversity CollegeのProf.Kerに手紙をやって、講義傍聴の許諾を得たから先ずよいとして、宿の方は困った。第一安直でなければならぬ。第二、可成閑静な処が欲い。それから公使館へ行って、日本人の名簿を引くり返して、留学生のおったらしい処を尋ねることにした。ところが倫敦は広い。汽車、馬車、交通の機関は備わっているが、田舎者のぽっと出には悲しいかな、これを利用することが出来ぬ。仕方ないから地図にたよって膝栗毛で出掛ると、一二軒尋ねる内に日が暮れてしまう。しかもその尋ねた家が代が替っていたり、部屋が塞がっておったり、あるいは減法高かったりして皆だめだ。それからこの度は新聞の広告を見て探し出した。広告の貸間は素敵にあるもんだよ。これを見通すさえ三時間位はかかる。いわんやこれを尋ねるにおいてをやだ。この困難を経過して、ようやく二週間の後、東京の小石川という様なところへ、一先ず落付た。するとこの家がいやな家でね。 そして、契約違反や週2ポンドの下宿代が高いことが重なり、この家を出ようということになったようです。『永日小品』の「過去の匂い」には「過去の下宿の匂が、狭い廊下の真中で、自分の嗅覚を、稲妻の閃(ひらめ)くごとく、刺激した。その匂のうちには、黒い髪と黒い眼と、クルーゲルのような顔と、アグニスに似た息子と、息子の影のようなアグニスと、彼らの間にわだかまる秘密を、一度にいっせいに含んでいた。自分はこの匂を嗅いだ時、彼らの情意、動作、言語、顔色を、あざやかに暗い地獄の裏に認めた。自分は二階へ上がってK君に逢うに堪えなかった」と、ミルデ家の雰囲気は「暗い地獄の裏」であると書いています。 -------------------- 現在、僕は8コママンガのブログを3つあげています。よろしければこちらもご覧ください。 土井中家の訳ありワンコ https://akiradoinaka.blog.jp 愛媛の雑学 https://annonsha.com/ehime_doinaka 土井中照の電子書籍は安穏社から発行され、アマゾンで購入できます。 https://annonsha.com お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2025.01.15 18:26:38
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