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土井中照の日々これ好物(子規・漱石と食べものとモノ)

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2021.03.19
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カテゴリ:夏目漱石
   此頃は女にもあり薬喰  漱石(明治28)
   薬喰夫より餅に取りかゝる  漱石(明治28)
   落付や疝気も一夜薬喰  漱石(明治28)
 
「薬喰」は冬の季語で、体に力をつけるため、獣の肉を食べることをいいます。昔は体が穢れるといって肉類を食べなかったため、滋養になる肉類を薬と称して食べる際の言い訳にしたのでした。
 肉食が広まるのは文化・文政(1804〜29)の頃で、江戸には「ももんじ屋」と呼ばれる獣店(けものだな)が増えてきました。「ももんじ」とは化け物のことで、店の前には「山くじら」と書かれた看板を出しました。肉食は「薬喰」と呼ばれ、病人の養生や健康回復、滋養のための肉食でしたが、一度口にした肉の味が忘れられなくなった人もいました。
 
 漱石は、魚よりも肉の方が好きで、若い頃から牛肉を食べていました。『満韓ところどころ』には「我々はポテンシャル・エナージーを養うんだといって、むやみに牛肉を喰って端艇(ボート)を漕いだ」とあり、『永日小品』の「変化」には中村是公と一緒にしていた江東義塾の教師アルバイトの際に「下には学僕(がくぼく)と幹事を混ぜて十人ばかり寄宿していた。そうして吹き曝しの食堂で、下駄を穿いたまま、飯を食った。食料は一箇月に二円であったが、その代りはなはだ不味いものであった。それでも、隔日に牛肉の汁を一度ずつ食わした。もちろん肉の膏が少し浮いて、肉の香かが箸に絡まって来るくらいなところであった。それで塾生は幹事が狡猾で、旨いものを食わせなくっていかんとしきりに不平をこぼしていた」と書かれています。
 龍口了信は『予備門の頃』で「牛肉店は、予備門から二町ばかりの所に松本という店が出来た。これが牛肉店の初めである。珍しいから、時には行ったが、高いのでそう度々は行くことは出来ない。鳥屋はシャモ屋といって、牛肉店が出来ない前からあったが、これも高いから書生はあまり行かなかった」と言っていますが、漱石は予備門合格の祝いとして牛肉パーティを行なっています。
 関荘一郎の「『道草』のモデルと語る記」にはこの時のことが「「明日家へ友達二三人を連れて行くから、牛肉を何斤と葱を何束、飯はお植で一つ、香の物はどんぶりで幾個、それだけの者を整えて午後の三時をきっかけに一家を明け渡せ。下女も婆やも誰も残っていることを許さない」養父母に対して金之助はそうした申し渡しをしたのであった。かつ子は金ちゃんは塩原の殿様だからなどと、その通りの品物を煮れば食べられる許にちゃんと整えて、その時間に老人と一所に(婆やも女中もつれて)浅草へ出かけて行った。帰ってみると食べ殻がそこらしゅう散かしてある。汁の滴、飯粒のこぼれ、相撲でもとったものか、畳の上は狼籍をきはめていた。おまけに天井へ吊しておいたかき餅を全部平げ、戸棚からは菓子などを引っ張り出して食いちらし、そうしてもう本人どもは引きあげたあとであった」と書かれています。
 
 また、「ももんじ屋」と言われるのは、肉が何の肉かわからないという意味もあり、『三四郎』には熊本の学生たちが、肉の正体を突き止めるために、壁に肉を投げつけるシーンが出てきます。馬肉を牛肉と称して売ることは、明治時代には横行していたようですが、現在では馬肉の方が高価になってきました。
 
 三四郎は熊本で赤酒ばかり飲んでいた。赤酒というのは、所でできる下等な酒である。熊本の学生はみんな赤酒を飲む。それが当然と心得ている。たまたま飲食店へ上がれば牛肉屋である。その牛肉屋の牛(ぎゅう)が馬肉かもしれないという嫌疑がある。学生は皿に盛った肉を手づかみにして、座敷の壁へたたきつける。落ちれば牛肉で、ひっつけば馬肉だという。まるで呪(まじない)みたような事をしていた。その三四郎にとって、こういう紳士的な学生親睦会は珍しい。喜んでナイフとフォークを動かしていた。そのあいだにはビールをさかんに飲んだ。(三四郎 6)





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最終更新日  2021.03.21 17:44:12
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