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土井中照の日々これ好物(子規・漱石と食べものとモノ)

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2021.08.15
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カテゴリ:正岡子規
 上京した極堂は、駿河台の共立学校に入学し、子規も一時ここに学びました。
 上京した子規は、まず極堂から聞いていた旅館を訪ねます。訪ねてみると極堂の姿はなく、教えられた下宿に行くと三並良がいました。しばらくして極堂も帰ってきて、子規は生まれて初めての菓子パンをついばむのでした。
 
 去年六月十四日、余ははじめて東京新橋停車場につきぬ。人力にて日本橋区浜町久松邸まで行くに銀座の裏を通りしかば、東京はこんなにきたなき処かと思えり。やしきにつきて後、川向いの梅室という旅宿に至り、柳原はいるやと問えば、本郷弓町一丁目一番地鈴木方へおこしになりしという。余は本郷はどこやら知らねど、いい加減にいて見んと真直に行かんとすれば、宿の女笑いながらそちらにあらずというにより、その教えくれし方へ一文字に進みたり。時にまだ朝の九時前なりき。それより川にそうて行けば小伝馬町通りに出ず、ここに鉄道馬車の鉄軌しきありけるに、余は何とも分らずこれをまたいでもよきものやらどうやら分らねば、躊躇しいるうち、傍を見ればある人の横ぎりいければ、こわごわとこれを横ぎりたり。その後はどこ通りしか覚えねど、大方和泉橋を渡り(眼鏡かも知れず)、湯島近辺をぶらつき、巡査に道を問うすべをしらねば、店にて道を問いながらようよう弓町まで来り。一番地というて尋ねしに提灯屋ありければ、ここに鈴木というて尋ねしに、この裏へまわれ、小き家なりという。裏へまわるにどの家やら分らず、鈴木という名札を出したる処なし。遂にそこにある一軒の家に入りて問うて見んと「お頼み」と一声二声呼べば「誰ぞい」といいつつ出で来りしは、思いぬもよらぬ三並氏なれば、互に顔を見合してこれはこれはという許り也。余ははじめこの家より出てくる人は知ら〈ぬ〉顔也。 
 もし知りたる顔ならば柳原ならんと思いしに、事不意に出でたり。三並氏も余の出京のことは露知らねば驚きて、「まず上れ」という。上りて後柳原はと問えば、今外出せりという。その時は最早十二時近かりしならん。色々の話の中に柳原も帰り来り。ここではじめて東京の菓子パンを食いたり。(明治17 東京へ初旅)
 
 私は明治十六年の夏、居士に先ちて上京し居士はその秋出て来た。本郷壺岐坂の鈴木という下宿にしばらく同宿していたが、居士は大学予備門に入ることになって、神田猿楽町の板垣という下宿に転じ、私もその後居士の近所へ移ったから相変らず毎日の如く出逢っていた。
 居士の下宿には後ちに海軍兵学校へ転じた予備門在学中の同郷人秋山真之がいた。秋山と居士と私と三人はよく本郷や神田の落語講談の寄席漁りをしたもので気に喰わぬ芸人が高座に出ると、下足札をガチガチ鳴して盛んに妨害を試み、それが奏功すると大声をあげて喜ぶのは秋山だった。居士も少しばかりは妨害につきあっていた。
 居士の下宿に遊びに来る者は余り多くなかったと記憶する。前年水戸方面から代議士に出た菊池謙二郎あれが折々来たのは覚えている。菊池は白面の書生であって、すでに老熟した文字で書翰を書くのがうまかったことが印象に残っている。
 この頃のことだ、居士が学校から戻って来ると妙な手つきや腰つきをして子規りに飛びまわるから、それは何のまねだと笑ってやったら、これは野球をうける態度だと答えた。野球が学校へ入ったの
はこの時分で、居士がまんざら運動方面に無関心でなかったこともこれで知らるる訳だ。(柳原極堂 子規の青年時代)





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最終更新日  2021.08.15 19:00:05
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