キミトノオモイデニ、サヨナラ

2008/04/03(木)07:34

紅蓮のアイリス 第一話【変わる世界】 2.異変

誰の声もしない。誰の足音もしない。さらには、なにも音が聞こえない。生命の動く音が聞こえない。たとえ一時的人がいなくなろうとも野良猫やカラスはいるはずだ。しかし今はその動物達の音さえも聞こえない。なにが起きてるんだ。 鈍い音を感じた大通りにでた。そこでみたのは、今までに見たことのない風景だった。それは誰も、なにも動いていない。何一つ動いてなかった。見渡すかぎり人はいたが、だれも動いていない。みな止まっている。あるものは携帯で通話しながら、あるものはコンビニから出てきたばかりのところで。あるものたちはジャージ姿で列になって走っているところで。人だけではない。空を見るとカラスが羽ばたいた所やスズメは電線にとまる寸前で。ありとあらゆるものが動いてなかった。 しかし何処までも止まっているわけでなかった。ふと少し遠くを見るといろいろな人が、動物が動いている。こちらには気づかずに、何事もないかのごとく平然と動き回っている。 「なんなんだ、コレは・・・?」 一言率直な感想を述べた。これ以外思いつかなかった。思いつきそうになかった。とりあえず向こう側、人たちが動いてるほうへ行こうとした。動いてるのと止まっているのとの境界線辺りに行くとなにかが、異変が見えてきた。2つ、大きく分けると二つ。 片方は畏怖するものであった。 一つ目は境界線にはなにか壁が見える。透明だからか、遠くからは見えなかったが、近づいてみると見えてきた。ガラスともアクリル樹脂系のものとも違う透明な壁が。壁にはなにか複雑な模様が描かれていた。なにかが円状にひたすら描かれている。なにも考えて描いてあるまるでわからないが。だが模様のように見えたが文字も彫ってある。まるで読めないが。それに数式も書かれている。しかし式が理解できない。配列や式もパターンも理解できない並びである。全ては理解を超えるものだった。 (・・・なんだコレ。コレで区切られてるのか?しかしわけのわからない壁だな。思いっきり殴ってみたが音がしない。そして痛くない。全く判らない。それに文字も模様も、数式も。・・・この文字どこかで見た気がするが、見てないような・・・どこでみたかな) うんぬん考えてもわからなかった。 もう一つの異変にうんぬん考えているうちに近づかれていた。 「ピシャーラァァなんだ?こいつは。もう討伐隊が着たのか?」甲高い声からこういわれた。 「いや、違うだろ。こいつからは力が感じられない」こちらは低いだった。 「・・!?」 「みろ、反応がおかしい。驚くわけがないだろ」 「それもそうだな。ならなんだこいつは?ファァー」 二つのものがこちらに来ていた。その二つは人に似ていた。だが人とは違った。 低い声のほうは身長は2mと人に見えるが肩と肘の当たりから大きく骨が出ていた。そして爪も異常に長くどす黒い。 甲高い声のほうも身長は2mちょい近くだが、背中からは羽が生えたような突起物が出ていた。そして額に口があり、手にも肩にも口がついている。その口から大量の涎らしきものが流れ出ている。そして口からはシャーシャーと鳴いている。 (なんなんだ、こいつらは。人・・じゃないよな。こんな人間がいるわけ無い。いてたまるかよ!じゃあなんなんだよ、こいつ等は) 「・・・ただの人間か。ただ少し力があるために取り残されたのだろう。取り残されなければ楽に消滅できたのだろうに。苦しかろう。一瞬で葬ってやる」 「シャーラララァアア。いや消すより持ち帰ったほうがいいんじゃないのか?」 「なぜだ?主の為か?」 「あぁ。いい実験道具だと思わないか。リャアーッ この空間で動ける人間なんて早々いないんだ。実験価値はあるさ」 「・・・確かに。捕獲する。貴様、無抵抗なら楽に連れ帰ってやる。だが少しでも抵抗した場合地獄を味わえ」 冷淡につらつらといわれた。 (・・!なんなんだこいつ等はッ。葬るとか消滅とか。持ち帰る?主?実験?意味がわかんねぇ。どうすればいいんだ。 逃げる!) その場から急いで走り出した。どこかへ逃げようと思って。しかし心のどこかで逃げてもムダだという感じがしていた。その思いは当たっていた。 「無駄な事を。逃げても逃げ場などはない。周囲には《壁》をしいてあるというのに。いくら逃げてもそこでぶつかる。それに・・・」 「逃げれるわけねぇだろ!!シャッァー!」 逃げてるとき聞こえていた。ムダだと知らされていても走って逃げていた。しかしムダだと判った。一瞬のうちに距離をつめられていた。 「・・・抵抗した為にお前は地獄をみるんだ。・・・うらむなら自分を恨め」 (・・!! 死ぬ、死ぬのか?俺は。イヤだ!死にたくない!!) 「畏怖した所でどうしようもないぜ。シャァシャッシャ」 手に刀剣類、しかし柄等は一切なく刃しかないのを持って喉元に当てられていた。 (死にたくない!! ック死にたくない!!) 「あばよ。リャーッ」 腕を引き思いっきり喉目掛けて突かれた (クッなんでもいいから助けてくれ!) そう思って何かを持っている感覚のある右腕を思いっきり薙ぎ払った。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る