2019/07/17(水)23:23
涙と笑いと恐怖の全快祝い(2)
また少し酒を飲んだ。久しぶりに飲んだせいか、いつしかぐっすりと眠ってしまっていた。どれぐらい時間が経ったのか良くわからなかった。ぼんやりとした意識の中、女の子たちの話し声が微かに聞こえていた。
ー今は何時頃なんだろう
ぼんやりとした意識の中で、なんだか胸騒ぎのような変な気分に襲われた。
自分で気がつくより早く、意識の中に入り込んできたその会話が原因だった。
女の子たちは、順番に自分のことについて話をしていた。誰かが質問したり、それに答えたりするのだ。女の子が良くする告白大会みたいなものだと思って、それ程気にせず起きあがろうかと思った。
しかし、何かに押しとどめられたように、動けなくなった。
「私の初体験は、レイプやってん」
その言葉に、カラダが反応した。いや、正確には反応しなくなったのだ。自分の意志でカラダが動かなくなった。
「小学校の高学年の頃・・・・」
ボクは部屋の隅の方で、みんなには背を向けた状態で布団にくるまっていた。カラダは動かなかったのに、涙が流れていた。
その悔しかった思いがボクのカラダの中に忍び込んできたかのようだった。
その子は、同い年でとても強い子だった。そしてボクとは兄弟のように仲良くしてくれていた。
そんな話を聞いてしまったら、起きてま~すなって言えない。
そのまま寝たふりをするしかなかった。
そして、ボクの彼女の番が回ってきた。
「○○くん(MIxのこと)とはどうなん?」
ーそんなこと聞くなよ!
とはいっても、聞きたいような聞きたくないような気持ちだった。
しかし、彼女が何て言うかは、大体の想像は付いていた。
「なんか、ようわからんねん、すごくいい人やと思うんやけどね」
ーもう、それ以上言うな!
目をつぶったまま、色んな光景が浮かんでは消えた。
2人で出かけた場所や、深夜喫茶で朝まで喋ったこと。
出会った頃の彼女は、ショートヘアーでいつも男の子と間違われていたこと。
そんな光景がフラッシュバックする中で、いつしかまどろみ、再び眠りに落ちていった。
夢の中でも、まだその告白が続いていたように思う。次の朝、起こされたとき、ものすごくドキッとしたのを覚えている。
昨夜聞いた話は、誰にも言えない。
何で、ボクひとりが女の子の部屋で寝ていたのか、目覚めた時にもまだ分からなかった。
どうも、酔っぱらってしまってひとりだけ寝込んでしまったようだ。
いくら起こしてもも起きなかったからと教えてくれた。
女の子たちの気持ちをいっぱい聞かされたボクは、なんだか優しい気持ちになっていた。それはどうしてなのか良くわからない、話の続きでみた夢にその答えがありそうな気がするが、その夢も今では全く思い出すことが出来ない。
人は、どうしようもなく色んな事を抱えて生きているんだ。
眩しい光が瞼を無理矢理に押し開けようと立ち向かってくる、少し曇ったボクの心には、そんな陽の光が心地よかった。
今日は、漁師町の民宿に泊まりにいく予定だ。船に乗って島に渡るらしい。新しい1日の始まりが、眩い光と共にボクたちをいつもとは違う世界へと連れて行ってくれそうな予感がした。
つづく、、、