冒険旅行<下>
しばらく呆然として、殆ど言葉も交わさず、ふらふら歩いていった。目的の撮影場所は、見つかるには見つかったが、数本のSLをやり過ごし、ぼんやりしていた。「次のは撮ろな!」そう言って、撮影準備を始める。と言ってもバッグからカメラを取り出すだけなんだけどね。まぁ、気持ちの問題なんだ。2,3回はSL牽引の列車を撮影した。それから、二人はまた歩き出した。別にそう決めたわけでもなく、ただふらふらと歩き出した。少し行くと線路が曲がって、その向こうに渓谷が現れた。すごくきれいな景色だった。その先に鉄橋が見え、山の緑が先ほどまでのぼんやりした意識をしゃきっとしてくれたようだった。「この鉄橋を渡るSLを撮ろうよ」「どっちから撮る方がいいと思う?」これが、悪魔のささやきだった。(>_