家電洪水その後と里の行
久しぶりのブログアップです。早いもので年が明けたと思ったらもう2月…。今頃ではありますが、まずは新年のご挨拶から。2021年もどうぞよろしくお願いいたします。いやぁ、2020年は世界的に大変な年でしたね。新型コロナ禍に、自然災害、経済的にも政治的にも混乱続きで―私にとっても家族の急逝、コロナ禍、家の洪水、と想定外の出来事続きの年でした。確かに夫は癌を患っていたけれどこんなに早く呆気なく逝ってしまうとは思ってもおらず…。新型コロナウィルスはオーストラリアでもあっという間に社会の中枢に躍り出て、緊急事態宣言の下ライフスタイルを一変させて…。都市封鎖に州封鎖、国境封鎖で、日本への一時帰国どころか、一時など家から5キロ圏外にも出られなくなってしまった…。それはそれで今思い返せば、子どもたちとこんなに長い間ずっと家で一緒に過ごせたことは貴重な体験になったけど、8月には洗濯機のホースが夜中に外れたことが原因で洪水にまで見舞われてしまった(8月の日記「2度目の洪水と亡き夫の夢」に)のでした。当初は水が引けばなんとかなると思っていたけれど、熱湯は家の土台を歪ませてしまうとかで、思った以上に深刻で…。コロナ禍の厳しい規制下で始まった修復工事。それでも10月中には終わるって話だったのが、10月末に規制緩和が始まると今度は業者が突然忙しくなってしまったとかで、工事は延期続きに…。コンクリート剝き出しの床に釘の突き出た部屋や、廊下や空いた床のそこかしこに積み上げられた段ボール箱や家具や、荷物の山を見るたびにうんざりしてしまった。その大半が亡夫の部屋から運び出された物だった。デスクや壁二面に並んでいた本棚に収納されていた書類や本やレコード、CD、彼のアート作品や所持品などなど。元々夫の部屋はカーペットだったので洪水被害に見舞われたとき剥がさなくてはならず、その際に運び出された、言わば遺品の数々で…。この段ボール箱の中身を一つ一つ整理してゆかなきゃならないんだ…と思っただけで気が萎えた。憂鬱だった。全くそんな気にはなれなかった…。正直、夫が亡くなって暫くはその部屋に入ることさえ気が進まなかったのだから。私にとっては、夫の病気が判ってから逝ってしまうまでがあまりに急で呆気なく、まだ消化できていなかった…っていうか、心の整理ができていなかったのだと思う。それに毎日、仕事や子育て、家事や雑事で忙しくて、夫の遺品と向き合うような時間もエネルギーも気持ちの余裕もなかったし…。家電洪水に見舞われる前は、夫の遺品は何年か経って落ち着いたら少しずつ整理してゆこうと思っていたのだった。それが…行き場を失って家中に積み上げられた荷物や段ボール箱の山、夫のデスクや棚、パソコン機器を前にすれば、溜息が…。ああ、そうだ、これもなんとかしなくちゃ…。でも修復工事が終わるまでは動かせないし…。それにしても、いったい工事はいつ終わるんだろか?つーか、いったい終わりは来るんだろうか?とか。唖然としつつ眺めていると、なかなか進まない修復工事に散乱した我が家の風景が自分たち家族の人生を象徴しているような気がしてくる。そのうち、これを全て片付けて家が元の状態に戻る日など永遠に来ないような気がしてくる。もう2度と4人家族には戻れないように…。そんなとき、ふっと心に浮かんでくるのが江戸時代の禅僧、良寛和尚の言葉でした。災難に遭う時節には災難に遭うがよく候。死ぬる時節には死ぬがよく候。是はこれ災難をのがるる妙法にて候。繰り返せば、心の真ん中がじ~んわりと温かくなってくる。固まっていた心にふっと風穴があき、軽く、楽になってゆく。気持ちに余裕が生まれてくるのでした。家族の死、コロナ禍、家の洪水―そうなんだ、今年は私たち家族にとって困難なことが続く年なんだ。だけど―災難に遭う時節には災難に遭うがよく候。なんだか妙にほっとした。励まされているような気さえして。それでも、いいんだ。大丈夫。今はそういうときなんだから。負のカルマの浄化のときなのだから、と。人生、山あり、谷あり。今は大変なことが続くときで、こういうときには、じたばたしない。負のカルマが実ってしまったことを静観すれば、いい。余計な心的苦痛や二次災害を招かないように。もしも更なる困難や災害に見舞われてしまっても、災難は、負のカルマが消えてゆく姿―浄化してしまった方がいいんだよ、と開き直る。もちろん人生に災難も困難も起こって欲しくはないけれど、それくらいの心境でいた方が、生き易い。そんな気持ちにさせてくれる的を得た、実用的なアドバイス。良寛和尚の鋭い洞察と大きな心に、自分の心も温かく、軽くなってゆくのでした。軽く広くなった心で、里の行をしていました。毎朝の家事にとりかかり、いつもの生活を始めながら金剛薩埵の短いマントラを唱えていました。Om Vajra Sattva Hum.唱えながら、自分や家が白光に包まれてゆく様をイメージしていた。子どもたちの笑顔や愛犬のちょこまかと揺れる尻尾を思いつつ。実際、もう4人家族には戻れない。家も元には戻れない。それが「空」であり、無常であり、何もかもは移り行く―だけど、それでも生活は続く。笑顔も続くー結局、工事は延期延期で、最期の修復工事となったカーペットが入ったのは12月23日、イヴ前夜だった。今年はとてもツリーどころじゃないだろ、と思っていたのだけれど、子どもたちの意欲と執着で、例年以上にゴージャスにクリスマスツリーが!毎年この時期は日本に一時帰国していたのだけど、コロナ禍で国境規制はまだまた厳しくそれも叶わず、年末年始もメルボルンで迎えた。去年は夫の病気で、今年はコロナ禍で…。2年も一時帰国できなかったことなど初めてのことだった。両親や妹家族、日本の友人たちに会えないことや社寺に初詣ができないことは残念だったけど、大晦日は子どもたちも一緒に地元のチベット仏教センターで法要をして、少しずつまた家の整理も始めた。なかなか手が付けられなかった夫の遺品とも向き合った。整理しながら心には「断捨離」の言葉が浮かんでいた。不要なものを「断ち」、「捨て」、執着から「離れる」ヨーガの行法。この家に引っ越して既に13年が経っていた。いつの間にか溜まっていた品々や使い手のいなくなってしまった品々をとっておくものと処分するものに分類する。処分するものは更にボランティア団体に寄付できるものと捨てるものとに分類してゆく。初めはそういう作業がしんどかったけど、自分は今「断捨離」の行をしているんだと思いながら実践すれば、セラピーのような意味ある体験になってくる。物と一緒にそこに絡みついていた自分の記憶や気持ちも断ち切ってゆく。つーか、手放してゆく。些細なことも、愛しいことも、しんどかったことも、すべては単なる記憶。儚い夢のような、過去の出来事。その体験に感謝しながら、手放して、整理していた。子どもたちがワイワイ一緒にやってくれたから案外楽しかった。有難かった。子どもたちは意外に執着がなく、どんどん処理してゆくので効率も良かったし。デスクや家具、CDやレコード、本は思い切って処分しました。リサイクルできそうなものはボランティア団体に、無理なものは清掃局に。夫はなんでもとっておくタイプだったようで、1998年とか前世紀の書類やレシート、高校時代のノートや旅行したときの半券や地図まで…。書類やレシートの類は法的基準にそって機械的に処理することができたから楽だったけど、彼の人生が詰まったような品々は捨ててしまっては本人に悪いような気がして、しんどかったです。とりわけ本人が創ったアートや手書きのジャーナル、写真やカード、手紙なんてプライベートな品々は…。結局アートや写真、ファイルやノートにまとめてあった旅行記や一部の仕事なんかはとっておくことにした。整理して、見やすいように本棚の一つに収納した。子どもたちが、父親が恋しくなったときいつでも向き合えるように。そうして1月も半ば―一時はもう2度と元に戻らないかと思った家が、すっきりと片付いた!のでした。それでついでに古くなってガタがきていた家具の一部もこの際思い切って買い替えることにしました。いつの間にか愛犬の爪でシートが派手に引き裂かれていたキッチンチェアとか、我が家に毎日遊びに来るマグパイの爪と嘴でシートの破れたガーデンチェアとか。家は以前よりもむしろ小奇麗に、イメチェンできた!?のでした。家族の死やコロナ禍に追い打ちをかけるように起きた洪水とその後処理は正直、しんどかったデス。何より夫の遺品処理を急かされ、強制された感じで。だけど今は起こって良かったと思っている。これがなかったら亡夫の書斎など何年も手つかずで放棄され、食糧倉庫兼物置になっていただろうし。(^ ^;)私たち家族の気持ちの切り替えもうまくできなかったかもしれない。亡夫の書斎は今ランパス―子どもたちの遊び場になっています。そうして以前ランパスだった部屋は(写真の今回ツリーを飾った部屋デス)家族の書斎兼瞑想室に、すっきりと生まれ変わったのでした。思い返せば、以前のランパスはオープンスペースだったので散らかったレゴや玩具は隠しようもなく…。片付けるように子どもたちに言っても効果はなく…。かといって自分には、毎日毎日イタチごっこのように片づけているような時間もエネルギーもなく…、で。だけど今のランパスなら、どんなに子どもたちが散らかしてもドアを閉めてしまえば、いい。夫だって、自分の部屋を子どもたちが使ってくれた方が嬉しいだろうと思う。私自身も家にあった余分なものを整理して処分したお陰で気持ちの切り替えができたような気がします。家族の新たなチャプターに入る心境が整ったような…。以前よりシェイプアップした家で家族3人と2匹、これからも心をこめて日々の生活を続けてゆこうと思います。2021年―皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。にほんブログ村に参加しています。応援クリックをどうぞよろしくお願いいたします(^^♪にほんブログ村 [マックあつこの著書]『Tamagoー39歳の不妊治療』えっ、不妊症!? ミラー月子はたまご時計に急かされながらベイビーを夢見て先の見えない旅に出た。メルボルンからアラフォー妊活小説『Tamagoー39歳の不妊治療』 Kindle電子書籍『Tamagoー39歳の不妊治療』単行本『インスタント・ニルヴァーナ』もしもあなたの大切な人がカルトの罠に嵌ってしまったら? マインドコントロールの鎖は密かに繋がれてゆく。サスペンス長編3部作『インスタント・ニルヴァーナ 上巻』 Kindle電子書籍『インスタント・ニルヴァーナ 中巻』 Kindle電子書籍『インスタント・ニルヴァーナ 下巻』 Kindle電子書籍[Ako Mak 英語の著書]『Someday, IVF at 39』‘Someday, IVF at 39’ ―poignant, humorous and mysterious― a cross-cultural odyssey for motherhood.『Somedsay, IVF at 39』 英語版Kindle電子書籍[マックあつこのHP]マックあつこのHP Ako Mak HP