【不眠症カフェ】 Insomnia Cafe

2014/07/09(水)10:24

ハーフムーン・ストリート

T【旅行】 海外・国内 海外移住(130)

今回の海外旅行 最後にパリに滞在したが 滞在は、十日間と長め そこで、せっかくパリに来たのだからと ロンドンにちょっと、行って見てみたくなった 私は,ロンドンに駐在したことがあるし 駐在するまでは 中東ビジネスに関連して ロンドンには何度も出張したり 中東の行き帰りに何度も立ち寄った ロンドンは私の欧州経験の最初の都市である (英国が欧州に入るかどうかは別として) それまでは、 私の専門がプラント輸出だから 出張や赴任地は プラントの立地である僻地ばかりだったのだが 英国・ロンドンと言えば やはり、憧れの地 一時は隆盛を誇ったプラントビジネスが斜陽になってきた時 この会社は,私を出世させる気は無いんだと悟った時 本社にいるよりも海外駐在に出ようと思った 本部を何期も支えるほどの成績を上げた割りに,出世はしなかったし(笑) 本社にいるだけで,何もしなかった奴が幹部候補生になっているし 駐在地を考えた時 一度は,先進国、それもロンドンに駐在してみたいと思った ロンドンに赴任したとき まず最初に宿泊したホワイトホースホテルの窓の外に暗闇に 雪が降っている風情を眺めてはじめて, 自分がロンドン駐在になるのだという実感が湧いて来た それまでは、 いい歳をして駐在員など時間の無駄 出世コースから外れた軌道 などという複雑な感慨もあったが やはり、駐在とは言え、ロンドンとも成ると, それなりの満足感もあったわけで そんなこんなで、ロンドンには色々想い出があるし ロンドン・パリ間を往復したことも何度もある その往復は、出張もあるが ・・・言いにくいことだが 女性に逢いに行ったこともある(笑) ただし、この場合は,社業を怠けたわけでは無く ロンドンで中東某国のビザ待ちをしていた時に 一週間もあるビザ待ち期間にパリを往復したのだ ま、いずれにしても私は,今回のパリ滞在中に 一泊のロンドン行きを敢行したのだ 今は、ドーバー海峡 英仏海峡の海底を潜るユーロスターが開通しているから 空路より早く 空路より安く 往復できるのである この道中の顛末は,また書くとして とにかく、ドーバーの海底を潜って ロンドン再訪は果たした 私の二都物語である ということで 以下は その今回のロンドン往復ではなく 昔のロンドン駐在時の想い出の過去ログ ---- 過去ログ 【ハーフムーン・ストリート】 (前略) それに私は読書中に傍線を引くタイプである。 「三色ボールペンで読む日本語」というベストセラーも買って、 一時はこれを実行しようとした。 ・ 重要事項にはブルーのボールペンで傍線を ・ もっと重要な箇所には赤、レッドの傍線、 ・ 個人的興味の箇所にはグリーンの傍線・・・。 こういう傍線の引き方をすれば 読書が効率的に深く分析的に行え、 再読の時の効率がまるでちがう・・・という理論。 私は原則的にこれに賛成で実行している。 ただ私の場合グリーンの傍線はめったに引かない。 引くときはフィクション、つまり文学書関係である。 普通の実用書や科学書、歴史書などでは もっぱらその内容である新知識を吸収するという形になって、 私個人の意見・感じ方などはあまり浮かび上がらないから、 グリーンの傍線を引くケースはほぼ文学関係に限られている。 興味ある小説などのなかで、 作者の観察眼やコメントに同感な箇所に引くのだけれど、 ときどき引きまくりの小説もある。        ―――― ◇ ―――― 私は米国人ながら英国生活が長く 英国人と言っても言いいポール・セローという作家の本が好きなのだが、 この人の「ハーフムーン・ストリート」という小説を最近読んで グリーン・ラインが一杯になった。 特に前半部分である。 この小説の概要は次のようなもの : 米国人の若い女性がロンドンの国際政治研究所ではたらく内に (だからインテリ女性)、 あるきっかけから副業として、 いわゆるエスコート・ガール(一種のコールガール)をするようになり、 英国やアラブのお金持ちやインテリのお相手をする。 そのうちにハーフムーン・ストリートという ロンドンのウエスト・エンド(高級地区)にあるある通りにあるフラットを パトロンのひとりからプレゼントされる。 話はまだそれから続くことにはなるのだが・・・。 こう言う固い分野のインテリなのに こういう乱れた?裏の生活を持つ女性 それも、若くて美人 多分、グラマーと言うより ホッソリとしたしなやかな肢体の持ち主 髪の毛は,多分、ブルーネット なんだか、魅力的な女性が思い浮かぶ この小説はこの若くて知的で魅力的で・・・ それでいてとても冒険好きな女性の目を通して 色々なことが語られるわけだが、 この女性の目というのはもちろん作者、ポール・セローの目。 普通の小説ではそれほど主人公の思考が語られることが無いように思うけれど、 このセローは実に鋭いしなやかな分析や観察をして、 この女性に語らせている。 しかもなんていうか、実に私ごのみの思考なんだ。 だからグリーンの傍線が増えることになる。        ―――― ◇ ―――― このハーフムーン・ストリートは 先に言ったようにウエスト・エンドという、 メイフェアとも呼ばれるが まあ日本で言うと銀座のような高級商業地区にある。 ピッカディリー・サーカスというウエスト・エンドの中心から まっすぐにハイド・パークに伸びる大通りがピッカディリー。 そのピッカディリーに対して直角に、 いわば櫛の歯のように平行にいろいろなストリートが延びている。 たとえば有名なボンド・ストリートなどもそんなストリートの一つで、 それこそ世界の一流ブランド、 グッチとかシャネルとかカルティエだとかが軒を連ねている。 それなのにボンド・ストリートの一つ隣のハーフムーン・ストリートとは、 むしろひっそりとした人目につかない気配がある。 一流店などは目につかない。 (とは言え、例えばボンドストリートでも  有名店が建ち並ぶハイストリートでありながらも  やはり英国だからなのか  どこか、地味でしっとりした風情があるように感じる) だからこそ、あの主人公の女性のおしゃれな隠れ家、 フラットなどがあってもおかしくない。        ーーーー ◇ ーーーー 私は以前からこのハーフムーン・ストリートという通りの名前が、 何となくロマンティックな響きがあって 気にかかっていたのだが 実際に、この通りを歩いてみると通りの中程に、 通りの名前そのままのハーフムーン・ホテルというホテルがあった。 その時は,そのまま帰ったのだが, ある時、日本からのお客の宿泊用にこのホテルを初めて予約してみた。 念のために下調べとして訪問してみると決して大きなホテルではない。 むしろこじんまりしている。 しかし内部のインテリアなどにある種の古風な優雅さがあって、 私としては気に入ったと言ってもいい。 こう言うホテルに泊まって ピッカディリーを、少しグリーンパークの方に歩いて 私がよく泊まった古風で大きなパークレーンホテルの裏の まるでガス灯がともっているような雰囲気がある すり減った石畳が光る暗い路地裏 そこに何軒かあるパブで少し飲んで この通りに帰ってくると 夜空にハーフムーンが浮かんでいるかも知れない 日本からそのお客が到着してそのホテルに送り込んで、 そのホテルから出てみると、ちょうど夕刻だった。 このストリートから出るピッカディリー大通りの上空あたりの空が赤く染まって、 西欧の冬の季節独特の、低く沈んで行く紅くて大きい夕陽が、 このストリート全体を照らしていて、 まるで私の人生に何か荘厳なことが起きたような一種特別な気持ちがした。

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