2019/07/24(水)12:34
記事 対韓輸出規制でわかった、「ニッポンの製造業」が世界最強であるワケ
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対韓輸出規制でわかった、「ニッポンの製造業」が世界最強であるワケ
7/24(水) 8:00配信 現代ビジネス
「ニッポン」入ってる!
自動車業界に限らず、各種部品・素材分野などでの日本の強さは実証済みだ。
例えば、現在世間を騒がしている、いわゆる対韓輸出規制(正しくは管理)の3品目のうち、
1 フッ化ポリイミドは、ディスプレイ用樹脂材料に使われる。
2 また、レジストは基盤などの表面の緑色の部分で、表面を覆うことで絶縁膜を作る保護剤である。
3 さらに、フッ化水素は、半導体のシリコン基板の洗浄に使われる物体である(「エッチングガス」とも呼ばれている)。
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これらの品目の日本の世界シェアは、
1 フッ化ポリイミドとレジストが約9割、
2 フッ化水素が約7割と報道されている。
グーグルやフェイスブックも真っ青になる占有率だ。
日本の強さはもちろんスマホ分野だけでは無い。
半導体製造装置・検査装置の市場の大部分は日本と米国の企業が押さえている。
また、ファナックに代表される
「工作機械」分野でも日本が圧倒的で、
競合は概ねドイツなどの欧州勢に限られる
(但し粗悪な製品においては、中国・韓国なども参入している)。
インテルの「インテル入っている」というテレビコマーシャルが一世を風靡したが、世界の製造業では「ニッポン入っている」状態で、インテルのCPUがパソコン市場を支配したように、
日本の部品・素材が世界市場を牛耳っているといっても過言では無い。
シャープ、パナソニック、東芝等など、無数の日本メーカーが凋落したので、日本の製造業がダメになったと勘違いしている人々が多いが、
日本でダメになったメーカーは、実は「組み立て屋」ばかりなのである。
プラモデルは誰でも組み立てられる
筆者は手先が不器用な方だが、それでも説明書さえあればプラモデルを組み立てることができる。また、IKEAやニトリから送られてくるパーツを、悪戦苦闘しながら家具に変身させることも可能だ。 しかし、プラモデルの部品や家具のパーツを製造することなど筆者には不可能である。
世界の製造業も実は同じなのである。
空き地に日本製の工作機械を設置して、安い人件費の現地スタッフを集めれば、どのように工業化が遅れた国でも(電気・水道・ガス、道路などのインフラがある前提だが……)あっという間に大規模な生産基地(組み立て工場)になる。 日本の製造業が空洞化したといわれるのも、そのような「組み立て工場」が人件費などの基本コストが安い国々へ流出したからである。
日本の大手メーカーも、規模こそ大きいものの、内実は「組み立て屋」だから、海外のコストの安い組み立て屋連合に敗北したのも当然といえる。
しかし、パソコンやスマホの製造では世界の後塵を拝した米国勢が、CPUなどの基
幹部品や、OSなどのソフトウェアで覇権を握って高収益を上げている。 日本も、製造業の基幹をなす「製造装置」と「素材」で世界の覇権を握っている。
会社四季報を見れば、それらの「製造装置」と「素材」のメーカーが高い成長を実現し、大きな収益を上げていることが分かる。 これまで製造業大国であると豪語していた韓国や中国は、日米の製造したパーツの組み立て屋でしかなかったということだ。 したがって、ZTEやファーウェイに対する米国(および同盟国)企業の取引停止が、甚大な被害を引き起こしたのも当然だ。 現在、世界の工業製品に「日米入っている」ことが明らかになってきている。
デジタルは誰がやっても同じだ
ビジネスがグローバル化した背景には、「デジタル化」がある。 デジタル情報なら、インターネットなどの通信網で世界中に送信できるし、どんなに遠くに送ってもコストが同じだ。しかも、品質の劣化も(理論的には)無い。 だから、既存のアナログな製造業より、デジタルを基本としたIT・通信産業が発展途上国において発展した。
しかし、本当の「高度技術」はアナログ分野にあるのである。 コンピュータソフトなら、インドで使用しても、南アフリカで使用しても同じように動く(少なくとも理論上は……)。ところが、アナログな製造業では、気温や湿度が変われば微調整が必要だ。 発展途上国で製造するようなコモディティ化した家電であれば、そのような微細なところまで気にする必要が無いだろうが、現在の部品・素材産業は驚くほどの精度に達している。 例えば、半導体がクリーンルームと呼ばれる塵ひとつない清潔な環境で製造されることはよく知られているが、実は半導体清掃装置そのものが作動するときに摩擦などによって生じる金属粉が大きな問題だ。今の半導体は、細菌よりも小さな埃でも問題になるからだ。 だから、金属紛をできるだけ出さないで自己吸引するシステムが必要なのだが、そのような技術はアナログである。 また、メッキというと古臭い感じがするが、「被膜」は最先端のアナログ技術だ。例えば、自動車のボディには軽量化のためプラスチック部品が多用されているが、そのようにはまったく見えない。金属メッキ(被膜)が施されて、金属のように見えるのだ。 現在の被膜の厚さは、もはや「分子」水準であり、物理学・化学の高度な技術研究が欠かせない。 筆者もこの分野には投資家として多大な興味を持っており、『元素118の新知識』(桜井弘著、講談社ブルーバックス)を読んでみたが、レアアースを含む元素が現在の最先端ビジネスに深く絡んでいることに改めて驚かされた。
アナログは、バグが無い限りプログラム通り作動するデジタルと違って、「やってみないとわからない世界」である。いくら理屈が正しくても、その通りにならなければ、何回もやり直す必要があるのだ。 言ってみれば「トライ&エラー」の世界なのだが、「やってみなければわからない」のだからその努力がいつむくわれるのかもわからない。目先の利益ばかりを追求する国々でデジタルがもてはやされ、アナログが顧みられないのはそのせいだ。 しかし、他国がやらないからこそ、日本が優位になるのであり、成果が上がって他国が焦って追いつこうとしたときには、はるか先を行っているというわけだ。 日本の見た目の派手さで争わない「中身の質で勝負する」姿勢が、強い競争力を生む。
自動車のエンジンは究極のアナログ技術である
そのアナログ技術の典型が、エンジンである。「燃焼」というのは複雑な現象で、方程式で簡単に解けるような代物ではないし、排気ガスのコントロールなどもかなり高度なアナログだ。 エンジン技術において、日本の「アナログノウハウ」の積み重ねは目覚ましく、欧米をかなり引き離しているのはもちろんのこと、韓国や中国に至っては10~20年は遅れているといわれる。 しかも、デジタル技術と違って、アナログ技術は盗んでも再現するのが簡単では無い。 だから、ディーゼルエンジン推進政策が大惨事に終わった欧州や、エンジン技術では日本に絶対勝てない共産主義中国をはじめとする国々が、必死に電気自動車を推進しようとするのは当然だ。 しかし、それがうまくいかず、これからもガソリンエンジン(HVも含めて)の地位が揺らがないであろうことは、当サイト2018年8月27日の記事「騙されるな、空前の電気自動車(EV)ブームは空振りに終わる」で述べたとおりである。 もちろん、トヨタをはじめとする自動車メーカーも「組み立て屋」には違いないが、自動車はおおよそ3万点もの部品を使用する極めて複雑な製品であるだけでは無く、人命にかかわる商品である。 実際、ソニーが長年「自動車は人命に関わる商品なので、娯楽を中心とする当社が扱うべきでは無い」としてきた(現在は車載カメラなどで参入している)程である。 事実、リコール費用は自動車会社の大きな負担であり、それを避けるためにも品質の高さが重要な要素なのだ。 現在、デジタルの世界でもプログラムが複雑になり、事前に問題点を把握でき無いため、発売してから消費者にチェックさせるという、馬鹿げた手法がまかりとおっているが、いくら電動化が進んでも、人命にかかわる自動車でそのようなことをしたら、企業そのものが社会から抹殺される。 いい加減な気持ちで自動運転分野に参入したIT企業は、ウーバーの自動運転実験中の死亡事故に対する世間の反応を見て肝を冷やしたはずである。
IoTも大事なのはアナログ
IoTに関しても、IT企業ばかりがもてはやされるが、本当に大事なのはアナログなセンサー技術である。この分野でも日本はトップクラスだ。 センサーというのは、温度や光などの状態に応じて変化するという物質の性質を生かしているが、この物質の性質もアナログなのだ。 さらに、そもそも論で言えば人間の脳は、膨大なデジタル情報を処理しきれないから、アナログで進化した。 人間の脳がいわゆるAIよりもすぐれているのは「ファジー=大雑把」だからである。細かなデジタル情報を「イメージング」した上で「体系化」=「アナログ化」したからこそ、人間の脳は高度な機能を持つのだ。 つまり、原始的なデジタルを高度化・複雑化したものがアナログということである。世間のデジタルが先端技術であるというイメージは幻影だ。デジタルは、しょせんコピペで誰もが真似できるものにしか過ぎない。 本当の高度技術であるアナログの覇権国家である日本の自動車産業(製造業)が世界最強であるのも当然であり、これからもその優位性は揺るがないであろう。