2021/05/14(金)10:52
サイゴンの想い出 #1 サイゴンへの出発と到着
【復刻記事】
サイゴンの想い出 #1 サイゴンへの出発と到着サイゴンの想い出 #1サイゴンへの出発と到着ベトナム・カテゴリーの過去ログをもう一度、・・・何度でも(笑)復刻してみようまずは「サイゴンへの出発」である ーーー 復刻記事 ーーー私が商社に入社して二年目、戦時下の南ベトナムのサイゴンへの赴任が決まった当時、サイゴンは、日本の新聞では「砲弾が雨アラレと降る!」と報道されていた場所であるしかし、私は駐在が決まってうれしかった海外ならどこでもいいから、行きたかったその当時はまだ成田空港が建設されていない時代である羽田空港からエールフランスのプロペラ機でサイゴンへ出発した羽田へは、同じ課の全員が見送りに来た座席に着くやいなや、鼻にかかったフランス人スチュワーデスのフランス語によるアナウンスが頭上のスピーカーから流れてきた国内線にはそれまでも数度、搭乗したことがあったが国際線は初めてであるその国内線でさえもその時代のスチュワーデスは花形でお嬢様学校や有名女子大卒の美人ぞろいだったところが、このエールフランスの国際線のスチュワーデスはもっと上なのである日本人スチュワーデスも、とてもバタくさい激務に追われてガールフレンドもいなかった私には刺激が強すぎる「美人環境」である話題が飛ぶが、よく「飛行機に乗ると不安で眠れない」と言う人がいる私には、その心理がわからない立派な科学者までが「あんなに重たい金属製のものが空中に浮かぶ・飛ぶと言うことが考えられない」・・・とまで暴言を吐く この人達の思考能力というものは救い難いではないか?「揚力」があるでしょうが、揚力が!!」「学校で習った揚力というものがっ!」 私はいつも、この種の人たちをこのように、内心、密かに罵倒しているのである申し訳ない前夜の徹夜の業務引き継ぎがこたえて、離陸するなりすぐに深い睡魔におそわれた気がついた時にはもうマニラ空港である着陸するとすぐに熱帯特有のスコールが襲来した大粒の雨が窓を激しく打って南国の太陽に焼けた滑走路の色がみるみる雨にぬれて黒く変わって行く日本では見たことのない風景である機はマニラ空港をすぐに離陸、次にはタイのバンコック空港に着いたバンコックでは給油があって、私たちは、機のタラップを降りて滑走路を空港のトランジットラウンジに向かって歩いた機外に出て驚いたそれまでに経験したことが無い、息が詰まるほどの湿気と温度なのだすぐに体中の毛穴から汗が噴き出てきた当時のバンコック空港は旧空港で、空調もなかった空港全体、今まで知らなかった熱帯特有の重い湿った臭いがしたかび臭くもあった空港の売店で名物のタイ・シルクのネクタイを買って機内にもどった いよいよサイゴン上空にさしかかった サイゴンの上空は一面に鉛色の雲におおわれていて街はときおり雲の切れ目からチラと見えるだけであるそのうちに機は雲の下にまで降下したスコールに濡れて鮮やかな、赤い屋根や緑の街路樹が窓一杯に広がってどんどん近づいてきた機はそのままユラユラ揺れながら降下を続けてついにサイゴン空港の滑走路にタッチダウンした出迎えには日本系の代理店のベトナム女性が来てくれていたテキパキとして怜悧そうであるスコールはすでにやんでいたが、空港から宿舎への途上、すべてのものが濡れていた赤っぽい粘土の道路も泥だらけでぬかるんでいる両側の建物の壁も雨に濡れて湿って変色していたその建物や道路脇に人間が並んで猿のように群れているその人間達が半裸でこちらを見ている南洋とはいえ、上半身裸である これには軽いショックを受けた「う~~む! 遙るけくも、来たものかな~」と心の中で思った