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呪いの言葉

呪いの言葉


2007年04月19日

昨年次弟夫婦に男児が誕生した。
私は母からそれを聞いた。
私は、「あら、そう。おめでとうございます。」くらいのことを言っただけだったと思う。

私の次男が保育所に通っているころに、母は、私の次男が知的障害のある自閉症であることが実家のご近所に知れると「私達が肩身が狭い」「弟(長男)は嫁とその実家に肩身が狭い」「次弟は結婚相手が見つからないかもしれない」から次男は実家につれてくるなと電話で言ってきた。
それ以来次男も長男も実家に連れていったことはない。
私も極力行かないようにしてきた。
親戚、縁者には、次男のこと、離婚のことを一切言うなというので言っていない。

そんなだから私から次弟夫婦に連絡を取ることもないので、妊娠したことも知らなかった。
今も、誕生した男児の名前も知らない。
息子達にいとこがいることを知らせていない。
一生会うことがないのだから知らせなくともいいだろうと思っている。

次弟夫婦に男児が誕生してまもなく母が私を呼び止めた。
私はバスに乗って駅まで行くところだったのだが、母が運転する自動車に乗せてくれるという。
私は、こういうときは要注意ということを経験的に知っているのだが、断る理由は見つからないので乗せてもらうしかなかった。
私を助手席に乗せて、自動車を運転しながら、母の呪いの言葉が始まった。

「あんた、大平さんが女の子を産んだんやってなぁ。」

私:「大平さん?(私の知り合いにはその姓の人はいない。)」

「太平さんやんか、あんた知らんの、大阪市の助役をしてた、大平さんやんか。」

私:ああ、弁護士の。

「そうやん、あんた知らんの。あの人、女の子を産まはってんてぇ。ダウン症やてぇ。やっぱりなぁ。業の深い女やなぁ。だいたいなんであんな女を大阪市の助役にしたんやろうなぁ。やっぱりなぁ、業の深い女やから障害のある子を産むんやなぁ。」


母は、自閉症の次男を産んだ娘を助手席に座らせて、これが言いたかったのだ。
たぶん少数派に分類される女性だと思われる。

母の運転する自動車が駅に着くまでの間、業の深い女という言葉を母はオウムのように何度も繰り返していた。
確かに母の第一子長女として生まれ、母の毒を吸い込む生活をしなければならない私は業の深い女なのだと思う。
母の子として何十年も過ごしているので、それなりに抗体が出来ているが、気力が萎えているときに母の毒を吸い込むのはいまだに堪える。

母が、次男の幼児のころに私に電話をしてきて「その子死んだらいいのになぁ。死んだら親助けやのになぁ。」と言ったころはさすがに気が狂いそうだったけれど、今はそういわれて良かったと思っている。

私が障害児を産んでよかったと思っている。
もし、私がなんの不都合もない子を産んでいて、その子が成人して子どもを産んで、その子がもし障害のある子だったり、生育途中で障害が生じた時には、私が「その子、死んだらいいのになぁ。死んだら親助けやのになぁ。」と言ってしまったかもしれないから。
なにせ、そういう遺伝子をもらっているわけだから、先に言われない限り、私も母と同じことをしていたのではないかと思う。

母の呪いの言葉を聞きながら、呪いの言葉が母本人の体のなかにじわりじわりと蓄積していることを感じる。
母がどんなに苛立っても、どうしても手に入らないものがあるのだ。

どういうわけか、私がそれをもっていることを、私は母に言わないでおこう。


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