社会のあり方を問い返す「自閉症学」のすすめ
4月30日に『<自閉症学>のすすめ』という本が刊行された
(野尻英一ほか編、ミネルヴァ書房。
2015年から早稲田大学で開催されてきた
「学際的自閉症研究会」の成果である)。
「自閉症(正しくは「自閉症スペクトラム障害」=ASD。
多様性と個別性があり幅広さをもつことを含意)学」
(Autism Studiesオーティズム・スタディーズ)とは、
哲学・精神医学・社会学・文学等々
さまざまな学問からのアプローチの「束」を総称して
執筆者たちが作り上げた概念である。
その含意は、「障害の社会モデル」と呼ばれる、
「impair=インペア(機能の障害)」と
「disability=ディサビリティ(能力の障害)」を区別して、
障害を後者の観点から捉えようとする見方から、
自閉症も見ていこうとする点にある。
「別の方式によってアプローチできる人」と考える
裸眼視力が低く(インペア)ても、
眼鏡やコンタクトで一定視力が出れば
社会的生活は可能(ディサビリティの解消)なのであり、
「障害」とは、車椅子の人が移動できないような
バリアフリーの欠如(ディサビリティ)という社会的問題であるとするものである。
つまり、自閉症はその発達特性が理解され、
知覚過敏に対する配慮や、マルチタスク課題からの解放、
作業の見える化等々のディサビリティの解消によって
社会生活が生きやすくなる。
「コミュニケーション能力の欠如した人」と見るのではなく、
「別の方式によってアプローチできる人」と考えることを意味する。
野尻は、
それは「定型発達の当事者研究の始まり」でもあるという(365p)。
すなわち、「非定型発達」とされる「自閉症」が
社会でどう生きづらいか(能力を発揮できない
「ディサビリティ」の状態に置かれているか)を考えるということは、
同時に私たち「定型発達」(=「ノーマル」)者が自明としている日常を、
現象学的に言えばカッコにいれること、
いちいち問い直してみるということを意味するからである。
[RONZA]
〈自閉症学〉のすすめ オーティズム・スタディーズの時代 [ 野尻 英一 ]
こうして自閉症を中心に
社会を捉えると
見方に捉え方ももかなり変化してくるのでしょうね。☄