どのような障害があっても
働くことに生きがいを見いだしたい人がいる。
希望がかなうように、
障害者の雇用をさらに増やす必要がある。
厚生労働省によると、
40人以上の常用労働者のいる企業で
働く障害者は67万7千人(昨年6月)で、
前年より5・5%増え、21年連続で過去最多を更新した。
企業や公的機関に対し、
従業員の一定割合の障害者雇用を義務付けた
障害者雇用促進法が浸透していることの表れだろう。
達成した企業の割合は46・0%で、
前年より4・1ポイント低下した。
昨年4月に
法定雇用率が2・3%から2・5%に改定された影響がある。
航空運輸や医療、建設など
障害者が働くのが難しいといわれる業種では、
雇うべき人数を一定数減らせる特例がある。
その人数も今年4月に縮減され、
将来は特例自体をなくす方向だ。
法定雇用率は
2026年7月に2・7%へとさらに引き上げられる。
多くの障害者が働き、
それぞれの能力を発揮できるように、
職場環境をハード、ソフトの両面で改善してもらいたい。
障害に応じて段差の解消、介助者の配置、
通勤援助者への助成金支給などに柔軟に取り組むことが肝要だ。
周りの従業員とのコミュニケーションも欠かせない。
こうした工夫を重ねれば、
障害者だけでなく誰もが働きやすい職場につながる。
行政機関には就職先の紹介や職業訓練、
就労定着に向けたケアなど、
きめ細かい支援の充実が求められる。
法定雇用率を巡り、気がかりなこともある。
障害者の雇用を代行業者に任せる企業が増えていることだ。
厚労省が把握しただけでも代行業者は32法人あり、
1200社以上が利用している。
用意された障害者の就業場所152カ所のうち、
110カ所は農園という。
障害者は代行業者が運営する農園で働き、
本来の雇用主である企業から最低賃金以上を受け取る仕組みだ。
厚労省は、
企業が農作物の収益を見込んでいない事例などを挙げ
「障害者が能力を発揮する機会を与えていない」
と指摘する。
障害者が働く場所が企業から離れていると、
労務管理や雇用責任が不明確になるのではないか。
長期雇用やキャリア形成にも懸念がある。
同じ企業の従業員でありながら、
障害者と健常者が働く場所が分離されれば、
障害者に対する従業員全体の理解は深められないだろう。
違和感を禁じ得ない。
厚労省は
障害者雇用がビジネスとなっている実態を詳しく調査し、
必要な対応を取るべきだ。
障害者雇用は企業の社会的責務である。
今や多様性の尊重は企業の成長に不可欠な要素になっている。
法定雇用率を上げることだけを目的にしてはならない。