2006/03/08(水)22:15
雨の日に
「今から傘を買いに行くんだ」
と彼は言った。
当然返ってくる返事は無い。
なにせ今は雨が降ってる。
「雨が降っているんだ。だから傘を買いに行くんだ。」
と彼は言った。
雨音だけが静かに窓から滑り込む。
「わかったよ。そこまで言うんだったら一人で行ってくるよ。」
彼はドアを思い切り開けて傘を買いに行った―――――。
「というわけで、僕らはこれから彼を探さないといけない。」
佐藤君は皆を集めた。
「彼は傘を買いに行ったために、傘を持っては行かなかったようだ。」
「今頃ずぶ濡れと言うわけか。」
と加藤君は言った。
「早く探さないと。明日大学の試験なのよ彼。」
と伊藤さんは言った。
隣で阿藤さんも頷いた。
「おそらく表参道の少し路地に入った無印にいるはずだ。」
「彼お金無いもんね。」
三藤君が言った。
「だったらコンビニのビニール傘を買いに行くんじゃない?」
と武藤さんが言った。
「無理無理。彼ビニール恐怖症だもの。観るのだけでも嫌なんですって。」
と古藤さんが言った。
「大変ねぇ。」
と工藤さんが言った。
そして、それぞれ自分のお気に入りの傘を持って、ヒマつぶしに出かけた。