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リアトリスの首都アラズナルグ。
数十年前までここが魔都と呼ばれていたと誰が想像出来るだろう。 交通の要所でもあるこの街には一つの大きい建物がある。 街のどこからでも見えるこの建物は白く光り見ているだけでどこか心安らぐ。 リーフ・リーンという名前の城だ。もっとも,あまり名前で呼ばれることはない。 「…噂に聞いていたよりもずっと大きい……」 一人の少女が城を見上げながら素直な感想を漏らす。 もっともらしい恰好をしたもっともらしいシスターだ。形から入ったと言わんばかりである。 「お嬢ちゃん,この街の人じゃないのかい?」 人の良さそうな老父が声をかける。 「ええ。この街よりもっと西方から来たのよ」 「西方というと…ヴァリキリスの方かい」 「まぁ…大体そんなところね。もっとも,正確にはもう違うんだけど…」 最後の方を濁し少女は言った。 老父は疑問に思いながらもさらなる疑問を少女に投げかける。 「シスターさんなのかい?」 「見ればわかるじゃない。こんな恰好した八百屋は多分いないわ」 それはそうである。だが時として人は当たり前の事を聞くものだ。 老父はまた新たに気付いた。見れば見るほど新たな謎が出てくる。不思議な女だ。 「その首からぶら下げているものはなんだい?」 「ああこれ? 珍しいでしょ? 光る水晶よ」 女は水晶を手に取り見せる。言われてみれば淡く黄色に光っているようだ。 水晶だけでも十分珍しく高価なものなのに光っているときたらその価値は計り知れない。 「客寄せに使えるってお父様がくださったのよ」 研究所に持ち込めば天文学てきな金額に,王室に持ち込めば即国宝級のものを女は客寄せ道具と言い切った。 「客寄せって,なにか商売でもするきかい?」 「まさか。教会開いても信者が私一人だと寂しいじゃない? だから客寄せ……ってそうだった。あなたエンプソンって方知らない?」 「エンプソンなら私の事だよ。なるほど,空き家を教会にしたいなんて依頼がきたときは驚いたが,なるほどね」 妙に納得してエンプソンは頷く。 「あら,貴方がそうだったの? これも神と水晶のお導きね♪」 女はもっともらしいことを言って水晶を握りしめた。 女の名前はスフィア。 彼女がエリフィシアと同じ聖女の称号を与えられるのはまだ先の話である。 「どうせなら大きな建物にしたいわよね。あの王城ぐらいかしら」 スフィアは楽しそうに皆に話していたという お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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