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カテゴリ:倍音の力
音や楽器のパワーやエネルギーを試しているうちに、チェロに魅せられた時期があり、せっかちで、思い立ったら留まることを知らない私の性格から、とうとう手に入れてしまった。7年前のことである。
それ以前に、はじめてラジオで、ジャクリーヌ・デュプレの演奏するエルガーの「チェロ・コンチェルト」を聞いて身動きが出来ない状態に音に惹きつけられたことがあった。 復刻版が、ほとんど出ており、5枚ばかり持っているが、ドボルザークの「チェロ コンチェルト」といい、小品集といい、どれをとっても、いつ聞いても飽きない。 感情の起伏が激しく、鬼気迫る音、無限の音色の豊かさ、倍音の使い方の見事さに圧倒されて、2年ばかり夢中になっていた。 その間、カザルス、ロストロポーヴィチ、ヨー・ヨー・マ、藤原真理などチェロの名手と呼ばれる演奏を聞いていた。それぞれ個性的で良いが、倍音による表現力の豊かさにおいては、デュプレの右に出る奏者はまだ知らない。 デュプレは、6歳だったかの少女時代に、自分の生涯は難病の宿命で短いことを、内なる心の声を聞いて知っており、一度っきりの演奏に命を燃やしていたようだ。 多発性硬化症で、42歳の凝縮された生命の重さは、計り知れない。 真剣さが生命の燃焼、倍音として表現されたように思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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