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カテゴリ:アマゾン・シピボ族の人々
高床式の家の中たっぷりと広い蚊帳を吊って簡単な布を敷いて板の間に寝ている。 大きな布を広げて作業ができるような、広い縁側のような板の間があり、娘ふたりが泥染の作業をしながら看病をする。 アナスタシアはサンフランシスコ集落の創立者の娘であり、彼女とその家族(テレサを含む)の住居は集落の中心にある。 通りをひとつ超えるだけの距離に居るので食事も鍋ごと運んで来れるし、何かあれば飛んで来る。 息づかいが荒くなったり、突然息を大きく吸い込んで息が止まりそうになったりするため、ひとときも目を離すことができなかった。 24時間体制で、誰かしらが付き添うことになっていた。アナスタシアの息子や嫁や孫たちは不定期に見舞いに来たが、看病を交代することはなかった。テレサは兄と弟もいるが男は全く役に立たないらしく、それどころか酒を飲んで帰って来るなど姉妹の怒りを増長させていた。 テレサは長期にわたり看病が続き、疲れているのを感じながら、このような問題はどこの国でもどんな民族でも同じような問題が起きるものなんだなとしみじみと考えた。ただ、彼らは心から母の回復を祈り全力を尽くし寄り添っていた。 看病により自分の時間がなくなっていくことへの不満や不安も募っていたが、それ以上に母の回復を目指していた。 看病をしている間は、常に何が起きるか分からないため、落ち着かず仕事も全くはかどらないらしい。 今年に入って今まで何ヶ月もの間ずっと寝たきりで、これまでにその度に私のところへも連絡があった。 とても具合が悪く危篤という知らせ、 病院に連れて行ったと連絡、 その前後に電話がある。病院費用が必要で親族カンパするため今月分を前借りさせてくれという相談だ。 テレサ(娘)、ベロニカ(孫)、レオニダ(孫)、それぞれから別々に電話をかけてくる。 全員から別々に状況確認し話を聞いて一致することが分かってから少しずつ振り込んだ。 看病で付きっきりの生活になると、仕事もできないためお金がなくなり、病院費用や薬代が出せなくなる。 2ヶ月前に最終的に足りないと判断し、最低限の援助をした。キリがないことを分かっているから、安易には助けられない。 前借りしても彼らはキチンと後から清算する習慣になっており、借金が積もり積もっていくことはないが、医療に出費が重なると生活は成り立たなくなって行くことが予測できた。 病院では検査と薬代と入院費がかかる。集中治療室に何日もいたこともある。しかし病気が治ることはなかった。 お金をかけているのに病気が治らず、病院は居心地の良い場所じゃない。すぐに帰りたくなる。 病院の医者はあてにならない。シャーマン(祈祷師)をよんで再び自然療法にきりかえようと相談する。 治らないので家で寝たきりが続く。また悪くなる。シャーマンの自然療法も効かない。 病院とシャーマンの自然療法(薬草や祈祷で治癒)も効かず、「誰かが黒魔術をかけているらしい」と真剣に結論付けようとしていた時もあった。 具合が悪い原因として、誰かに呪いをかけられている、と純粋に考えることがあった。 呼吸が苦しそうで、痛い、辛い、と声を出すので、看病している方も見ていられないのだ。 本人は希望しないが、最終的に病院に連れて行く。 病院で点滴をうち、少し回復する。安心して退院する。 しかし しばらくするとまた悪くなる。 永遠にこれを繰り返している。どうすることもできない。 孫、ひ孫まで親族が皆なけなしのお金を集め、一体となってアナスタシアの病状を見守り協力していた。 アナスタシア本人は自分のためにお金がかかっていることを気にしていて、病床にいながらも枕元の袋から取り出して「買ってもらえないか?と私にかすれた声で言った。これ以上親族に出費をさせ迷惑をかけたくないから病院へも行きたくないと言った。 病院は苦しくて汚くて家族の面会も許されず、治ることもない、このまま静かな自分の家で死を待った方がよっぽどいいと言った。 具合が悪いのに病院から離れた自分の家に戻してしまうのは危険ではないかと心配したが、住み慣れた住み慣れた自分の家はやはり安心するようだった。少し調子がよくなると縁側に出ていつものようにハンモックで揺られた。硬い床に寝るよりも心地が良いのだろうか。 それでも親族は悪くなると無理をして病院へ連れて行った。 悪路を1時間かけて行かなければならない。 雨期の前だから車で行けるはずだが辛い道のりだろうに。 病院へ行けたとしても、ただ、お金がかかることが問題だった。 先住民を保護する法律により医療が無料になったはずだったが、全てをカバーできるわけではないことが分かった。 見守るしかなかった。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.03.21 00:56:10
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