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あい・らぶ・いんそん

再会8

再会8

数日後、ジェミンが出社すると

「ミスター・チョン、社長がお呼びです」

と秘書が声をかけた。

「あぁ・・わかった」

毎日の仕事は多忙を極めていたが、ジェミンは充実した日々を送っていた。

「何かご用ですか?」

社長室に行くとパクは笑って迎えた。

「いやぁ・・毎日お疲れさまだな。スジョンさんは不平を言っていないか?
毎日忙しいからな・・」

「いいえ、大丈夫ですよ。それで何か?」

「あぁ、実はイギリスの投資会社から打診があった。今度の上場に関して
資金を出しても良いと言ってきた。そこでだ、是非君と一緒にイギリスに
行って慎重に話を見極めたいんだよ。」

「イギリスですか?」

「急な話で申し訳ないが、明後日から一週間ほどのスケジュールになる」

ジェミンの心に、言葉にはならない重いものが入り込んでくるのを感じて
いた。しかし、仕事では断ることもできない。

「わかりました。ご一緒しましょう。」



「忘れ物はないわよね」

「ええっと・・・ひとつあったな」

「まぁ、なにかしら?」

「おまえだよ」

出張を明日に控えて、スジョンがスーツケースを何度も開けては閉めて
確認をしている姿を、ジェミンはベッドに横たわって眺めていた。

「もう・・・」

とスジョンは、笑ってすねたように言った。

「そんなことばかり言って、本当になにか忘れても知らないわよ」

「悪かった・・・でも、初めて離ればなれになるな。今まで一日もおまえ
と離れたことがなかった。寂しいか?」

スジョンがベッドに腰掛けながら言った。

「ええ・・・でも仕方がないわ」

ジェミンが懐かしそうに言った。

「スーツケースを見ると胸が痛むよ・・」

「何故?」

「おまえがスーツケースをもって、あの部屋から出ていったときのこと
を思い出す。」

スジョンも懐かしそうに笑った。

「あのときは私も悲しかったわ・・・やっと幸せになれそうな気がした
のよ。覚えている?あの朝、あなたが作ってくれたグラ・・?」

「グラーシュか?」

「そう・・・グラーシュ」

ジェミンはスジョンを抱き寄せながら言った。

「あんなにまずいもの、おまえはずいぶん食べたな・・・」

「嬉しかったのよ。お料理もしたことがないあなたが、本を見ながら
私のために作ってくれたんですもの・・・。」

「それじゃあ、イギリスから帰ってきたら又作ってあげようか?」

「いいえ、もういいわ。」

二人は笑った。

今このときが幸せだからこそ、想い出が懐かしくよみがえってくるの
だった。

「あのときあなたは言ったわ。私なんかのどこが好きって聞いたら、私
なんか・・・って卑下するなって。俺まで安物になるからって。」

「あぁ・・そんなことも言ったかな」

ジェミンも懐かしそうに答えた。

「でもね・・・今でも時々同じ事を思うの。こんなに愛されて・・・私な
んかのどこが良かったのかしらって・・。」

するとジェミンが、スジョンの耳元でささやいた。

「教えてあげようか・・」

いたずらっぽく笑って、やがて真剣な眼差しでスジョンを見つめて言った。

「おまえのすべてだ・・」

そして、ジェミンはスジョンを強く抱きしめた。

会えない時間を迎える淋しさを同じように感じながら、二人の時間が過
ぎていった。

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