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あい・らぶ・いんそん

葛藤5

葛藤5

翌日、スジョンがまだベッドの中でまどろんでいると、

携帯が鳴った。

ジェミンからだった。

「良いかスジョン、良く聞け。俺が帰るまで絶対に外出はするな。
いいな。」

「どうしたの?」

ジェミンはスジョンに不安を与えたくなかった。そして、スジョン

はジェミンがすでに何かを感じていることを知った。

「頼むから俺の言うとおりにしてくれ。また、連絡をする。」

心配でたまらずいらだつ心を押さえて、ゆっくりと話をしているの

がわかった。

「わかったわ」

電話を切ると、日常の中に戻ってきたような気がした。

優しいジェミンの声で心がすくわれる。

(夢であってほしい・・・)

窓辺に差し込む陽ざしが、少しだけスジョンの心を穏やかにしていった。

いつもジェミンが座る椅子に腰掛け、静かに目を閉じた。



「もしもし・・スジョンさんね」

スジョンの携帯に、ソフィアから電話がかかってきたのは夜の9時過

ぎだった。

何故スジョンの携帯番号を知っていたのか、スジョンは不思議でなら

なかった。

「あなたのことはあの人から全部聞いているわ」

「なにかご用ですか?」

「良いことを教えてあげる・・・会いましょう」

「いいえ・・そのつもりはありません」

「あなたの彼の会社がどうなっても良いのかしら・・・。」

スジョンが心配していたことだった。

「どういうことですか・?」

「あの人の企みを教えてあげるわ・・・今ならきっと間に合うはずよ。」

スジョンは迷っていた。

「私はどちらでもかまわない。ただ、昨日のことあなたに謝りたいか

ら・・・。」

それでもスジョンは黙っていた。

「イギリスにいる彼に、すぐに連絡をしないとあの会社は乗っ取られるわ・・」

「なんですって・・」

「詳しい話を教えてあげる・・。出てきて・・今、あなたのアパート

の前にいるわ」

そして電話が切れた。

『俺はジェミンの会社を思い通りにできる・・』

イヌクの言葉がよみがえった。

自分のためにみんなを不幸にできない・・・スジョンは不安でたまら

ず、出かける決心をした。

「何処にも出かけるな・・」

ジェミンの声を思い出しながらも、行かなければならないと思った。



ソフィアはアパートの前でスジョンを待った。

ソフィアはサムに嘘をつき、スジョンの事を聞き出していた。

イヌクと知り合って1年半の間、いつもイヌクが求めていた女がスジョン

だったと気がつき、ソフィアはスジョンに憎しみさえ抱き始めていた。

あの女がいなくなれば・・・。やっと手に入れた豊かな生活と、愛され

ていないとわかっていても、イヌクのそばで過ごすわずかな時間がソフ

ィアにとって生まれて初めて味わう幸せの時間だった。

もう二度とあの場末に戻りたくない・・・ソフィアは必死だった。



暫くするとスジョンが出てきた。

「こんばんは」

ソフィアが嬉しそうに笑った。

「話を聞かせてください」

「ええ、良いわ。」

そのとき目の前に止まっていた車からいきなり一人の男が現れて、スジ

ョンの口をふさぎ車に押し込んだ。

あっという間のでき事だった。

スジョンが落とした携帯電話を慌ててバッグにしまい込み、走り去る車

を嬉しそうに見送った。



ソフィアはその足でイヌクの部屋を訪れていた。

何とかイヌクの機嫌をとりたかったのだ。

「何しに来た。呼んでないぞ・・」

いつも通りの冷たいイヌクだった。この冷たいイヌクが、スジョンに対

してだけみせた愛しさが屈辱的でもあった。

「謝りに来たの・・もう二度と、あなたの邪魔はしないわ・・。」

イヌクは知らぬふりをして酒を飲んでいた。

イヌクにまとわりつくソフィアを疎ましく、思わずソフィアの手を払い

のけると、その勢いで倒れ込んだ。

テーブルに置いたバッグが落ち、中に入っていたスジョンの携帯がイヌク

の足下に滑り出た。慌てて隠そうとしたときに、スジョンの携帯が鳴った。

イヌクはいつもと違うソフィアの着信音に、何気なく足下に落ちた携帯

を見ると、それはなんとジェミンからの電話だった。

イヌクの形相が変わった。

「おまえ・・・スジョンに何をした!」

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