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あすなろ日記

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オリジナルBL小説「落日」

2013年01月28日
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 BLの苦手な方は読まないでください。

 18禁です。

 苦情は受け付けません。

 何卒お許しくださいませ。m(_ _)m


  手書きハート  手書きハート  手書きハート  手書きハート  手書きハート  手書きハート


 「実は・・・今まで内緒にしてきたんだが、父さんは母さんに

 出会う前に心から愛する人に巡り合った。その人はとても

 美しく誇り高い人だった。でも、父さんはその人にフラれて

 しまってね。嘆き悲しみ、落ち込んでいる時に偶然その人に

 顔がそっくりな母さんに出会ったんだ。奇跡かと思ったよ。

 俺は結婚して幸せになろうと思った。でも、結婚して、

 麻里緒が生まれると、心が揺らいだ。遺伝子のせいかな。

 麻里緒は俺の愛した人と生き写しの顔だった。昔、アルバムを

 見せてもらった事があるんだが、子供の頃の写真によく

 似ている。きっと二十歳に成長したら、当時のあの人と同じ

 顔になるだろう。俺には分かる。俺は愛する人に捨てられて、

 愛するべきものの分身をこの世に生む為に結婚したんだ。

 男の子と女の子を授かって、女の麻美は俺に似て、男の

 麻里緒は誰よりも美しい。きっと、これは運命だと思う。

 麻里緒は神様が俺にくれたプレゼントなんだ。あの人の

 代わりに俺は生涯愛する事のできる血の繋がった息子を

 手に入れた。それなのに、倫理的に批難されて、長い間、

 手放していた。なんて俺は意気地なしなんだ。ごめんな。

 麻里緒。もう、決して、この手を放さないから、俺と二人で

 やり直そう。」

 父さんは僕を見ていなかった。僕をじっと見つめていながら、

 僕に違う人の面影を重ねて、僕に愛を囁いていたのだった。

 父さんだけは僕を愛してくれていると信じて疑わなかったけど、

 父さんの心は違っていた。父さんの心の中には違う人が

 住んでいた。愛を蝕む寄生虫のように黒い影は増殖し、

 愛という名の闇に父さんは喰われていたのだった。

 「愛してる。麻里緒。」

 父さんはゆっくりと顔を近づけて、僕の唇に接吻した。僕は

 逃げなかった。うっすらと口を開け、父さんの舌を受け入れた。

 ねっとりと舌を吸われ、蕩けるように絡められ、蠢く舌に僕は

 犯された。蕩けるような熱い舌に吐息までもが吸い込まれて

 いく。身体が蕩けるほどに僕の意思は奪われ、僕の想いが

 吸い取られていくような気がして、僕は泣いてしまった。

 涙を流しながら、僕は父さんの舌を噛んだ。甘い血の味がした

 と同時に僕の口内から舌が抜き取られ、

 「痛っ。何するんだ。痛いじゃないか。」

 という父さんの声を聴いた。僕の瞳は涙でぼやけて、何も

 見えなかった。父さんが口を押さえて、怒っているような

 気がしたけど、僕には何も見えなかった。

 「父さんは無責任過ぎる。僕は父さんの恋人になりたくない。

 離婚はしないほうがいいよ。」

 責任感の強い相手に珍しく大人びた口調で僕は言った。

 父さんは何か言おうとしたみたいだけど、声にならなくて、

 呆然とした顔をしていた。

 「ごめんなさい。噛んで・・・痛かった?」

 僕が父さんの唇に手を伸ばすと、無言でパシッと手を

 はらわれた。父さんは怒っているようだった。

 「何でだよ。何でなんだ。」

 父さんが呟くように言った。僕は誰かの代わりなんて真っ平だ

 とは言えなかった。きっと言ったとしても分かってもらえない

 ような気がした。僕は

 「ごめんなさい。」

 と、もう一度謝ると、無言で車を降りた。

 「待て!」

 と叫ぶ父さんの声は聞こえないふりをした。そして、僕は

 一人で、あてもなく歩き出した。

                              (続く)







最終更新日  2013年01月29日 19時33分04秒
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2013年01月27日
 
 BLの苦手な方は読まないでください。

 18禁です。

 苦情は受け付けません。

 何卒お許しくださいませ。m(_ _)m


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 病院で僕は3針縫った。全治1週間の軽傷だった。本当に

 母さんの言う通りたいした傷ではなかったのだ。お医者さんは

 手首の血管は少し切っただけで大量に血が出るから、

 動揺するのも分かるけど、別にそんなに心配は要らない。

 1週間後に抜糸したらそれで治療は終わり。数ヶ月後には

 傷跡は消えるって父さんに説明していた。また、どうして

 リストカットしたのかとお医者さんに僕は聞かれた。でも、

 僕はリストカットという言葉を知らなくて返事ができなかった。

 何故、自殺したのかと聞かれなかったのだろうと思いながら

 僕は病院を後にした。そして、車に乗った時、父さんは突然

 泣き崩れるように僕の手を取り、こう言った。

 「麻里緒・・・お願いだ。もうやめてくれ。傷一つない美しい

 身体に傷をつけるなんて。一生傷跡が残ったらどうするんだ。

 リストカットなんて、もうしないと約束してくれ。」

 涙を流す父さんに僕は

 「リストカットって何?僕は今の自分が嫌で、自分をやめた

 かっただけだよ。死んだら生まれ変われるような気がして・・・

 手首を切ったんだ。」

 と言った。すると、父さんはまるで信じられない物でも

 見るような凄く恐い顔をして僕を凝視した後、こう言った。

 「父さんが悪かった。母さんとは離婚する。これからは

 二人で暮らそう。」

 でも、僕は父さんの唐突な決断についていけなかった。

 「何で?何でそうなるの?麻美は?父さんと母さんが

 離婚したら、悲しむよ。」

 「麻美は母さんが引き取って育てればいい。養育費も要るし、

 慰謝料と財産分与で一文無しになるかもしれない。でも、

 俺は、麻里緒がいれば、それでいい。東京に戻ろう。もう

 麻里緒をこんな町には置いておけない。ワンルームマンション

 でもいいから、会社の近くにアパートを借りて、二人で住もう。

 二人で・・・」

 父さんは少し夢を見ているような笑顔を見せた。それで、

 僕は少し心配になった。

 「母さんは離婚するって言うかな。母さんは父さんの事が

 好きみたいだし・・・」

 「真理子は・・・母さんは意地になってるところがあるから、

 すぐには離婚に応じないかもしれない。今までに何度も

 離婚の危機が訪れたが、いつも逆上して怒るだけで・・・

 あいつは俺と別れるとは言わなかった。クールに見えて、

 粘着質な性格は誰に似たんだろう。」

 父さんは遠い目をして言った。

                            (続く)










最終更新日  2013年01月28日 08時37分11秒
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2013年01月25日

 BLの苦手な方は読まないでください。

 18禁です。

 苦情は受け付けません。

 何卒お許しくださいませ。m(_ _)m


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 「キャアー!!」

 絹を引き裂くような悲鳴が聞こえて、僕は目を覚ました。

 「ママ!お兄ちゃんが死んでる!ママ!早く来て!」

 妹の麻美が泣き叫んでいた。僕は虚ろに目を開けて、

 自分で切った手首を見た。すると、傷口から溢れる血は

 止まることなく、タラタラと流れ続け、カーペットを汚していた。

 「麻美?!どうしたの?」

 母さんの声がして、母さんが寝室から出てきた。母さんは

 子供部屋の入口に立った時、凄く驚いた顔をして、こう言った。

 「麻美!見ちゃだめよ!」

 そして、両手で顔を覆うように泣きじゃくる麻美の目と口を

 押さえた。母さんは錯乱状態に陥る寸前の麻美を救う為に

 血で汚れた僕を麻美の視界から消したのだった。

 「おーい!どうしたんだ?」

 階段を上ってくる父さんの声がした。父さんは廊下から

 僕を見るなり、走り寄ってきて、僕を抱きかかえた。

 「麻里緒!しっかりしろ!死ぬな!麻里緒!救急車!

 早く救急車を呼んでくれ!」

 だが、しかし、狼狽する父さんに対して母さんは冷静だった。

 「救急車って・・・よく見たら、救急車を呼ぶほどの傷でも

 ないんじゃない。世間体もあるし、あなた、車で病院に

 連れて行ってくれないかしら。止血すれば、普通の外来でも

 きっと大丈夫よ。」

 「おまえ、それでも母親か!チッ!もういい。俺が連れて行く。」

 父さんはそう言うと、ポケットからハンカチを取り出し、僕の

 手首に巻いた。そして、ぐったりとした僕を抱きかかえて

 車へと連れて行った。

                       (続く)









最終更新日  2013年01月27日 13時43分47秒
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2012年06月09日

 オリジナル小説「落日」第5部でリストカットのシーンが

 ありますが、麻里緒は死にませんので、ご安心ください。

 自殺未遂するほど麻里緒の悲しみは深く、闇に包まれ、

 第1部のはねをもがれた蝶を殺す麻里緒と連鎖して、

 絶望から溢れる希望と願望をラストで描きました。

 第1部~第5部までで起承転結の起承まで描きました。

 第6部~第10部では、やさぐれた麻里緒を描きます。

 やっとブログ初の長編小説も半分まできました。
 
 ここまでこれたのは皆様のおかげです。

 「落日」を読んでくださった皆様に感謝いたします。

 






最終更新日  2012年06月10日 00時34分32秒
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 BLの苦手な方は読まないでください。

 第5部最終話です。

 18禁です。

 苦情は受け付けません。

 何卒お許しくださいませ。m(_ _)m



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 僕は母さんが意地悪な魔法使いに見えた。僕を惨めにする

 呪文を浴びせる魔女だと思った。母さんは本気で僕が

 父さんをたぶらかした悪い子だと思っているようだった。

 血の繋がった実の父親に抱かれたいと思う子供が何処にいる

 というのだろう。僕は父さんに純粋に愛して欲しかっただけ

 なのに、たとえ愛の形が歪んでいたとしても、ただ愛されたい

 と願う気持ちからキスを受け入れただけなのに・・・泥棒猫

 だなんて酷過ぎる。でも、僕は母さんを見て、嫉妬した。

 今さっき僕の中に湧いた感情はまぎれもなく嫉妬だった。

 夫婦なのだから、身体を繋ぐのは当たり前の行為なのに、

 僕は心の何処かで父さんは母さんとしていないと思って

 いたかった。父さんの身も心も独占したいと思うなんて、

 矛盾している。僕は本当に悪い子なのかもしれない。

 「ごめんなさい。母さん。ごめんなさい。」

 僕は涙を流して謝った。

 「反省してるなら、もういいわ。私も昨日は嫌だって言うのに

 無理やりされて疲れてるのよ。あの人は本当に困った人だわ。

 あら、もうこんな時間?!麻里緒、早く制服に着替えて

 学校に行きなさい。」

 母さんはわざとらしく目覚まし時計を見て、僕を部屋から

 追い出す口実を作った。僕は

 「はい。」

 と返事をして寝室から出た。母さんの勝ち誇った顔がしばらく

 脳裏から離れないと思った。あの顔はまるで愛人から夫を

 奪い返した女の顔だった。母さんは母親である前に女だった

 のだ。女として嫉妬し、今まで僕に辛く当たっていたのだった。

 僕は悲しかった。母親から愛されていないだけじゃなくて、

 憎まれていたなんて・・・僕は母さんと父さんを取り合う気は

 なかった。もう愛されなくてもいいと思った。首を絞められた

 後も父さんは母さんに謝っていた。父さんは僕を追いかけて

 来なかった。その時点で気付くべきだったのだ。父さんは僕を

 大切に思っていないと・・・僕の身体を弄んだ先生と同じだと

 思った。先生と父さんは性格が似ている。僕はどことなく

 父さんに似た喋り方をする先生が好きになった。先生と一緒に

 いると、まるで父さんと一緒にいる時のように楽しかった。

 僕は先生に頭を撫でられるのも好きだったし、手を繋いで

 歩くのも好きだった。やっと、もう一度、僕を可愛がってくれる

 人を見つけたと思っていたのに、先生はきっと僕の心の醜さを

 知っていたのだろう。僕の前から姿を消してしまった。

 僕は先生を失い、父親を失い、母親に首を絞められ、

 先輩達に弄ばれ、好きでもない加藤君に抱かれ、唯一、

 心の拠り所となる伊藤君は無力だった。伊藤君は何も

 知らな過ぎる。僕は聖母マリアなんかじゃない。ましてや、

 天使でもない。人は何故、己の見たいと思う姿に人を重ねて

 見るのだろう。僕はもう何もかも嫌になった。死にたい。

 そんな事が頭に浮かんだ。僕は子供部屋の机の引き出しから

 カッターナイフを取り出して、スーッと手首を切った。

 血が溢れ、ポタポタと床に落ちて、カーペットを汚していった。

 赤い血は僕の心を安らかにしてくれた。血に汚れて、僕は

 美しく生まれ変わる蛹のように痛みも苦しみも感じなく

 なっていった。生まれ変わったら、空を舞う蝶になろう。

 誰にも羽を?がれないように人に懐かない蝶になろう

 と思った。誰にも捕まらず、空高く飛ぶ美しい蝶を夢見て、

 僕はゆっくりと目を閉じた。



                               (完)













最終更新日  2012年06月09日 23時17分17秒
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2012年06月08日

 BLの苦手な方は読まないでください。

 18禁です。

 苦情は受け付けません。

 何卒お許しくださいませ。m(_ _)m



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 翌朝、僕が目を覚ますと、伊藤君がオーブントースターで

 食パンを焼いていた。パン1枚と牛乳だけの朝食だったけど、

 僕にはイエス・キリストの最後の晩餐のような楽しい食事だった。

 「麻里緒のお母さんは厳しいだけで、本当は麻里緒の事を

 思って、良い成績を取るように言ってるんじゃないのかな。

 学校に行く前、制服に着替えに家に戻った時に、お母さんに

 外泊した事を謝った方が良いよ。朝ならお父さんも居るだろ?

 あの優しいお父さんなら麻里緒を庇ってくれると思うから、

 早く帰ったほうが良いよ。」

 と伊藤君は言った。時刻は7時15分だった。伊藤君はわざと

 早起きして、僕に朝食を作ってくれたのだった。父さんは

 毎朝6時50分に出勤する。何も知らない伊藤君に僕は

 何も言えなかった。

 「うん。そうだね。そうするよ。」

 僕はニコッと微笑んだ。母さんに酷く叱られるのを覚悟で

 僕は家に帰ると、父さんが台所にいた。

 「麻里緒!帰って来てくれたんだね!」

 父さんは僕を見るなり、駆け寄ってきて、僕を抱きしめた。

 「どこに行ってたんだ?心配したぞ。」

 「伊藤君家。」

 「そうか。ま、いいさ。父さん、朝食を作ったんだ。食べるか?」

 ダイニングテーブルにはハムエッグとトーストが用意されて

 いて、妹の麻美が黙って一人で椅子に座って食べていた。

 「麻美。お兄ちゃんが帰って来たよ。」

 父さんが優しい口調で麻美に言った。

 「おかえりなさい。」

 麻美の表情は暗かった。不思議なほど何も聞かずに、

 そっけない態度だった。

 「さっ、麻里緒も食べなさい。あ、ちょっと冷めちゃったかな。」

 父さんは無理して明るく振舞っているように見えた。

 「悪いけど、僕、伊藤君の家で食べてきたんだ。母さんは?」

 「母さんは気分が悪いって寝てるんだ。それで、今日、

 父さんは有給をとって会社を休んで、朝ご飯を作ったんだ。」

 僕の知る限り、家族が病気で父さんが会社を休んだのは

 初めてだった。母さんは昨日の事がよほどショックだったのか

 寝込んでしまったらしい。

 「僕、着替えてくる。」

 僕はそう言って、階段を上がった。

 子供部屋に入る前に母さんが気になって、どうせ謝るなら

 早い方が良いと思って、僕は寝室の扉をあけた。すると、

 寝室の床には脱ぎ散らかした服が落ちていて、ベッドの

 布団の中から母さんが顔を出して、こう言った。

 「なんだ。帰ってきたの?」

 ベッドから起き上がった母さんはパジャマを着ていなかった。

 キャミソール1枚の下着姿で、乱れた髪を物憂げに掻き上げて

 僕をじっと見た。母さんの首筋から胸元にかけて幾つもの

 キスマークがついていた。露わになった胸元が女体の

 生々しさを僕に見せつけていた。父さんは僕に愛してると

 言った口で母さんの肉体に口づけしたのかと思うと、僕は

 やるせなかった。思わず目を背けて、部屋を出ようとすると、

 「昨日の事を謝りに来たのかと思ったのに、何しに来たの?

 麻里緒は家を飛び出して外泊した事も反省してないの?

 それとも、逆に私に謝って欲しいわけ?私はあんたなんかに

 謝らないわよ。泥棒猫のくせに!どういう子だろうね!」

 と母さんは怒鳴った。

                             (続く)















最終更新日  2012年06月08日 23時04分37秒
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2012年06月04日

 BLの苦手な方は読まないでください。

 18禁です。

 苦情は受け付けません。

 何卒お許しくださいませ。m(_ _)m



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 「友達がいなくて悲しいって思った事ならあるよ。小学校

 高学年の時にね。クラスが3年間違っていたせいもあるけど、

 あの時は何で僕の傍にいてくれなかったの?」

 僕は過去をむし返すように聞いた。

 「俺も苛められてたから。もちろん麻里緒ほどじゃないけど、

 ホモ友って言われて、上靴を隠されたり、文房具を盗まれたり

 したんだ。消しゴムを失くして可哀相だから先生の消しゴムを

 あげるって先生が消しゴムをくれてからは貧乏人ってあだ名に

 変わったよ。3年生の時に麻里緒を庇って、いろんな奴と喧嘩

 しただろ?それで、4年生の最初も喧嘩ばっかりしてたから、

 学校の先生も親も心配して、同じクラスで友達を作りなさい

 って言うから、麻里緒とは正反対のタイプの友達を作ったよ。

 俺は自分の身を守る為に麻里緒を見捨てたんだ。卑怯だと

 思うよ。中学に入って、加藤と友達になった時も俺はこれで

 坂田から麻里緒を守れるって思ったんだ。浅はかだったよ。

 麻里緒が常磐先輩にまわされたり、売春を強要されたりする

 なんて思ってもみなかった。俺のせいだ。俺が全部悪いんだ。

 あの夏の日も・・・」

 伊藤君は酷く後悔していた。

 「僕は公園に伊藤君が来なかったことを恨んでないよ。

 人間誰でも約束を忘れることってあるしね。」

 「違うんだ。本当は・・・あの日、お父さんが急に来て。あ、

 お父さんは養育費を持って来いってお母さんに呼び出されて

 来たんだけど、俺は何も知らなくて・・・再婚してお金に余裕が

 なくなったから、養育費を渡せないって。この5万円で最後に

 してくれって。月に1回息子と会う権利も要らないって言うから、

 お母さんが怒って・・・包丁を台所から持ち出して、殺してやる

 って騒いだんだ。お父さんが手傷を負って、慌てて逃げた後も

 お母さんは呪ってやるとかずっと気が狂ったみたいになってて、

 俺は恐くて、動けなかった。麻里緒に今日は遊べないって

 連絡しなくちゃとは思ったけど、理由を言えないと思って・・・

 結局、ずっと家にいたんだ。夜、パトカーが家の近くを

 うろついていた時も警察がお母さんを捕まえに来たのかと

 心配してた。後から電話で、お父さんはかすり傷だったから

 病院には行ったけど、警察には行かなかったって聞いて、

 ホッとしたけど、お父さんはもう二度と俺とも会わないし、

 滞納してた分の養育費も払わないって言われて、ショック

 だったよ。俺は、あの夏の日、お父さんに捨てられたんだ。

 今まで誰にも言えなくて・・・でも、それは自分のプライドを

 保つ為で・・・俺の麻里緒にしてきた事を考えると、自分の

 身勝手さに吐き気がするよ。」

 伊藤君は泣いていた。僕は伊藤君の涙を初めてみた気がした。

 僕は伊藤君がなんだか幼く見えて、気が付いたら、伊藤君の

 唇に僕の唇を重ねてた。

 「伊藤君は悪くないよ。伊藤君のせいじゃない。」

 伊藤君を抱きしめて、僕は言った。

 「アベ・マリア。女の子だったら、麻里亜って名前にしようと

 麻里緒のお母さんは思ってたって、昔、麻里緒から聞いた

 事があるけど、麻里緒は聖母マリア様みたいだ。」

 伊藤君は僕の胸に顔をうずめて言った。昔、母さんは僕に

 言っていた。生まれてくる子が女の子だったら、麻里亜と

 名付けて、全ての過去を許そうと思っていたと・・・でも、

 男の子の僕が生まれて、名前も考えるのが面倒だったから

 麻里緒にしたんだって母さんは言ってた。

 「麻里緒は総ての罪を許してくれるマリア様だ。もっと早くに

 懺悔すれば良かった。」

 伊藤君はそう言って、僕の唇に接吻した。伊藤君のキスは

 舌は入って来なかった。僕達は何度もキスを重ねて、互いに

 抱き合って寝た。まるで僕はセックスを知らない子供のように

 服を着たまま抱きしめ合い、欲情の代わりに幸せを感じた。

 伊藤君の腕の中で僕は肉親に抱かれて眠る赤子のように

 安らかに眠りについた。


                             (続く)













最終更新日  2012年06月05日 19時16分21秒
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2012年06月02日
 
 BLの苦手な方は読まないでください。

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 お風呂からあがると、僕は伊藤君のTシャツを借りた。

 大人用のMサイズのTシャツはいつまでも子供服を

 着ている僕にはブカブカで大きかった。寝室に行くと、

 布団が一枚敷いてあった。

 「お母さんの布団はシーツを今日洗ったから、使えないんだ。

 俺と一緒でいいよな?」

 と伊藤君が聞いた。伊藤君の家は貧乏でシーツの替えが

 なかった。洗濯したシーツが乾くまで布団が使えないって

 可哀相だなと僕は思った。僕は伊藤君の布団に入って、

 一緒に寝た。6畳2間のアパートにお母さんと二人暮らしの

 伊藤君は中学生になっても、やっぱりお母さんと一緒の

 部屋で寝ていたのだった。寝室と居間しかないから仕方ない

 のだけれど、幼稚園の頃からずっと一人で寝ている僕には

 異世界のような感じがした。

 「抱いていいよ。」

 僕は隣で寝ている伊藤君に言った。驚くほど自然に出てきた

 言葉だった。

 「麻里緒・・・」

 伊藤君は少し考えた顔をして、僕に言った。

 「俺は抱かないよ。俺は麻里緒のことが好きだけど、

 そういうことはしたくないんだ。」

 「僕が女じゃないから嫌なの?」

 「性別は関係ないよ。俺は麻里緒と友達のままでいたいんだ。」

 「セックスしても友達のままでいればいいじゃん。加藤君には

 内緒にしとこうよ。それとも常磐先輩が恐い?」

 僕はずるそうな顔をして、伊藤君の足に僕の足を絡めた。

 「加藤は友達だから内緒にはできないよ。でも、常磐先輩が

 恐くて手が出せないとかそんなんじゃないんだ。みんな早く

 童貞を捨てたがるけど、俺は違うんだ。体がまだ大人になって

 ないからだって加藤は言うけど、俺だって夢精くらいするし、

 いつもその夢には麻里緒が出てくる。正直に言うと、麻里緒と

 したいと思った事はあるよ。だけど、俺は麻里緒の友達だから、

 しちゃいけないと思うんだ。」

 「どうして?」

 「俺が麻里緒としちゃったら、麻里緒には本当の友達が

 いなくなってしまうだろ?それって悲しい事だと思わないか?」

 僕は伊藤君の言ってる事が分からなかった。僕は今まで愛を

 得る代償として身体を差し出してきた。僕に優しくしてくれる

 総ての人間が僕の身体を求めてくると思っていたのに、

 伊藤君は違っていた。


                           (続く)











最終更新日  2012年06月03日 11時40分06秒
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2012年05月31日

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 僕は走って走って、走りながら涙を流した。僕はもう家には

 帰れないと思った。駅前の繁華街に行こうかとも思ったけど、

 お金を持っていない事に気が付いた。でも、お金を取りに帰る

 勇気は僕にはなかった。公園で野宿するか友達の家に行くか

 考えて、加藤君ではなく伊藤君の家に行こうと思った。

 伊藤君なら看護士のお母さんが夜勤の日は一人でいるはず

 だった。僕は伊藤君に一晩泊めてもらおうと思った。走って

 来た道を引き返して、伊藤君のアパートの前まで行くと、

 今度は家を飛び出した理由をなんて言おうかと迷った。僕は

 父さんの事は伊藤君に知られたくなかった。テストの成績が

 悪くて、母さんに怒られたってだけで泊めてくれるか心配に

 なった。やっぱり公園で野宿しようと思ったその時、伊藤君の

 家の窓が開いた。伊藤君は僕を見て、声をかけてくれた。

 「麻里緒!こんな夜遅くにどうしたんだ?」

 「母さんと喧嘩しちゃった。」

 「?!」

 伊藤君は僕のついた嘘に凄く驚いたみたいだった。

 「・・・。うちに来いよ。」

 伊藤君はそれ以上何も聞かずに家に入れてくれた。

 「お母さんは夜勤でいないんだ。」

 家にあがると、伊藤君が言った。

 「あ、そうなんだ。」

 僕は知らなかったふりをした。

 「何か食べる?」

 伊藤君が冷蔵庫から麦茶を出してコップに注ぎながら聞いた。

 「ありがとう。僕、母さんに夕飯抜きって言われて、何にも

 食べてないんだ。」

 僕は努めて明るい口調で言った。

 「・・・。カップラーメン食べる?」

 伊藤君はまた何か聞きたそうな顔をしたけど、何も聞かずに

 カップラーメンを作ってくれた。時計は11時をまわっていた。

 「明日は学校に行くよな?」

 「あ、うん。もちろんだよ。」

 「なら、いいけど。」

 伊藤君は心配そうに僕を見ていた。

 「食べ終わったら、風呂に入れよ。」

 伊藤君はそう言った後も僕をじっと見ていた。


                         (続く)










最終更新日  2012年06月01日 19時27分54秒
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2012年05月26日
 
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 「何をしてるの?!」

 部屋の入口に母さんが立っていた。父さんは慌てて僕を

 突き離して、こう言った。

 「違うんだ。」

 「何が違うの!もう二度と麻里緒にキスしないって

 約束したのに!昔の約束をよくも破ったわね!」

 「ご、誤解だよ。麻里緒が泣いていたから、慰めていただけで、

 キスしてない。」

 父さんが誤魔化そうとして、ひきつった笑顔を浮かべた。

 「な、麻里緒。そうだよな。」

 父さんの顔は恐怖に慄いて醜く歪んでいた。

 『母さんには内緒だよ』幼い頃に繰り返された行為が

 醜い欲情によるものだと僕はようやく気付いた。

 「真理子の見間違えだよ。」

 父さんは母さんにそう言いながら近づいた。父さんが母さんを

 名前で呼ぶ時は必ず喧嘩になる前触れだった。パシッと頬を

 叩く音がした。母さんの振り上げた手が震えているのを僕は

 見逃さなかった。しかし、平手打ちされた父さんは俯いて、

 黙り込んでしまった。ギリシャ神話の石像のような精鍛な

 顔立ちの父親が酷く醜い小男に見えた時、僕は何もかも

 失くしても構わないと思った。

 「僕がキスしたんだよ。」

 一瞬、空気が張りつめて、信じられないものでも見るような

 目で母さんが僕を見た。

 「今、何て言った?」

 「僕が父さんにキスしたって言ったんだよ。」

 怒りで我を忘れた母さんが恐ろしい顔をして走り寄り、

 僕の首に手をかけた。母さんは僕の首を絞めながら喚いた。

 「この泥棒猫!あんたは泥棒猫にそっくりよ!あんたなんか

 産むんじゃなかった。あんたなんか生まれてこなければ

 よかったのよ!」

 美しい顔を歪ませて、醜い心の闇をぶちまけた母さんは

 本気で僕を殺すのかと思うほどの力で僕の首を絞めた。

 「やめろ!真理子!やめるんだ。」

 父さんが母さんを無理矢理僕から引き剥がした。ゲホゲホと

 むせながら僕は父さんが押さえつけている母さんを横目で

 見ると、母さんは気が狂ったように僕に手を伸ばしていた。

 もう一度、僕の首を絞めようとする母さんに父さんは

 「真理子。すまない。俺が悪かった。すまない。」

 と、いつまでも謝り続けた。それは幼稚園の頃にお風呂で

 見た光景と似ていた。僕は刹那的な感情に流されたことを

 後悔した。そして、逃げるように家を飛び出した。


                              (続く)











最終更新日  2012年05月27日 00時35分41秒
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